このところ、仕事の関係で百貨店の記事ばかり読んでいる。
正直なところちょっと食傷気味なのだ。「ファッション」「おもてなし」ほとんどこれしかない。
まあ、それが百貨店の基本、原点かもしれないから仕方がないことは分かっている。

よく、10数年前に10兆円あった百貨店全体の売上高が今は6兆円だといわれる。
売上高が4割減少していることになる。

ファーストリテイリング全体の売上高が1兆6800億円(2015年8月期)だから、その3倍強程度しかないということになる。

若者や小さい子供がいる若いパパママ世代が百貨店に行かなくなったといわれる。
理由は様々あるだろう。

1、商品価格が高い
2、レジャー性、アミューズメント性がない
3、駐車場があまり充実していない(とくに都心店は)
4、彼ら世代に人気のあるブランドがあまりそろっていない

というところだろうか。

まあ、そういう顧客層を百貨店がほしいと思っているのかどうかはわからない。
しかし、人間は絶対に確実に死ぬ。
今、百貨店をごひいきにしている富裕な年配層は長くても30年後にはほとんど死に絶える。
30年後には今の20代は50代に、30代は60代になっている。
今の10代ですら40代だ。

そうなったときに彼らが「ワシらも年を取ったから百貨店で買い物しようか」となるだろうか。
筆者はならないと思う。
今、親しみがない商業施設には、年を取ってからも行くことはない。
もちろん、彼らも幾分か世慣れてくるだろうから、贈答品は有名百貨店で買うくらいのことはするかもしれないが、その程度の使い方で終わりではないか。

今の若い世代、子連れ世代は郊外型ショッピングセンターや家電量販店へ行く。
昨今はショッピングセンターは都心にもできているから、郊外型と限定できなくなりつつある。
ただ、大型ショッピングセンターや家電量販店も店舗過剰になっており、優劣は出始めているが。

商品の値段が安いとか駐車場が広いとかいう理由がある。
それ以外に、レジャー性・アミューズメント性があるという点が強いのではないかと思う。
特に子連れ世代には。

子供が色気づくのは何歳ぐらいからだろうか?
個人差はあるが女児は早くて男児は遅いという印象がある。
女児だと早い子は小学校中学年か高学年からファッションが好きだったりする。
そのころにファッションに興味がある男児はかなり少数だろう。

男児がファッションに興味を持ち始めるのは早くて中学校2,3年くらいではないか。

となると、その年代になるまでの子供を連れて、両親は百貨店に行きづらいということになる。
品ぞろえがファッションに偏り過ぎていて子供達には退屈すぎるからだ。

筆者も小学校3年くらいまでは、母親の買い物に付き合わされていた。
ジャスコとかイズミヤの洋服売り場が多かったが、たまには百貨店もあった。
量販店だろうが百貨店だろうが、男児にとって洋服売り場というのは退屈極まりない。
よくダダをこねていたし、それが無駄だとわかるとひたすらどこかに座り込んでいた。

4年生くらいになると、時間を決めて待ち合わせて、本屋とかおもちゃ屋で時間をつぶすようになった。
洋服売り場に比べると退屈度が格段に緩和される。

ショッピングセンターにはゲームセンターがあったり、子供が遊べるスペースがある。
大型書店も入店している。
玩具売り場もある。
ペット売り場がある場合もあるから、そこで犬や猫や熱帯魚を見ていたほうが、洋服を見ているよりは随分と楽しい。

百貨店には洋服しかない。それ以外だと地下の食品と、呉服、美術、一部インテリアくらいで、子供が楽しめる売り場は皆無だ。

大型家電量販店はゲームセンターなどはないが、玩具売り場がある。
また各種家電をいろいろと触って試せる。
百貨店よりは子供にとって退屈しにくい場所である。

となると、子連れ世代は大型ショッピングセンターか大型家電量販店に行く回数が増えるのは当然だろう。
子連れで百貨店で長時間過ごすことはかなり難しい。

おまけに可処分所得は減ってるから、髙いブランドがそろっている百貨店で、頻繁には服を買えない。

ショッピングセンターならそれが可能だ。
大型家電量販店でも百貨店よりはファミリーで長時間すごせるだろう。

若者世代、子連れ世代が百貨店にあまり行かなくなるのは当然の結果といえる。

そういえば幼いころの記憶だと百貨店にも玩具売り場、家電売り場があった。
屋上には遊園地もどきや子供たちが遊べるスペースがあった。

筆者より年配の人たちだと「子供のころは百貨店の屋上遊園地で遊んでから、その下のレストラン街で昼食を食べさせてもらうのが楽しみだった」と語る人は多い。

ちょうど今の子連れ世代が大型ショッピングセンターで過ごすやり方と同じだったといえる。
だから、子連れ世代があの時代は百貨店に通っていたのである。

以前、誰かの記事で、「百貨店は効率を求めて洋服に特化してきた。その結果が今である」と書かれていたが、その通りなのではないか。
効率性・利益性を追求した結果、百貨店は洋服専門店になったのではないか。

高度経済成長期やバブル期のように、洋服がほしくてほしくてたまらないという人は今どれほどいるだろう?
ほとんどいないのではないか。
また、当時のようにブランド物と安物の見た目が歴然としていたなら、無理をしてでも高いブランド物を買う人も一定数いただろうが、今のようにブランド物と安物の見た目がほとんど同じになれば、安物で良いと考える人が増えても不思議ではない。

そして子連れ世代が利用しにくいということになれば、百貨店を利用するのは年配の富裕な女性客のみということになる。利用客数が少なくなるのだから売上高が減少するのは当然である。

今後も百貨店がなくなることはないだろう。
都心の有名店は確実に何店舗か残るだろう。

しかし、閉鎖される百貨店は確実に増える。
どこか特定の百貨店の売上高が増えることはあっても、百貨店全体の売上高がかつての10兆円規模に回復することは、今の売り場構成を続けている限り絶対にない。

このままファッション特化を続けて、すごく少ない富裕なファッション好きという顧客層を奪い合うのか、それとも違う方向性を探るのか、経営判断が問われるということになるだろう。
ただ、保守的な人が多い百貨店社員で、違う方向性を探れる人は限りなく少ないだろう。


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2016-05-25