縫製工場であるファッションいずみのブログでこんな話題が書かれていて、個人的にちょっと昔のことを思い出した。

右肩下がりの業界で生き残るには
http://fashion-izumi.jp/blog/archives/1065

国内の繊維製造・加工業者の自社製品開発についての話題なのだが、後半の部分が個人的には目玉だと思うのでご紹介したい。

縫製の技術は1級品です、その工場がファクトリーブランドで洋服を作って展示会開いたけど売れなかったと聞きました。

ゼロではなかったけど少なくて商売にならなかった。品質は間違いないのに売れない。

どうしてなんだ?!ボクも展示会見に行きました、売れそうな感じはしたけど売れない何故だ!?でした。

その後、幾度と無く失敗を繰り返してその経験を踏まえてデザイナーと契約したりパターンを研究したりして満を持して作った服を売り込みに行ったがやはりダメだった話を聞かせていただいた。

バイヤーさんが言うには、「品質は何の問題も無いのだけれどその服じゃ売れないのよ」

そう言われて、このままじゃ帰れないと思った親方が言った言葉が、

「あなたが望む服を作りましょうか」だった。

それを聞いたバイヤーさんは「本当に?本当に作ってくれるの?」半信半疑ながら内心うれしそうだったらしい。

それで、「どんな服がお望みですか?」そこから出来上がったのが、かの有名な「お母様のお受験服」だそうです。

とのことである。

何が目玉なのかというと、製造・加工業者はデザインやアレンジがいまいち上手くないことが多い。
製造・加工業者はデザインやアレンジメントが本職ではないから下手くそで当然なのだが、自社製品を作るとなると、下手くそなら売れるはずもない。
「ワシらはデザインが専門じゃないから」と弁解されたところで、「じゃあ、専門家と契約するか、専門家になるべく努力するかのどちらかを選んでくださいよ」という話である。
小売店はボランティア活動ではない。

製造・加工業者は作ることにかけてはプロである。
この文中の縫製業者以外の製品でも品質には何の問題もない物が多い。
でもそのデザインやアレンジでは売れない。
そういう商品も多いことは間違いない。
特にデザイナーを使わず、自分らでデザインした商品は多くの場合失敗する。

以前、生地産地の展示会を手伝っていたころの話である。
生地産地の展示会も製品サンプルを展示することが当たり前になっている。
良くも悪くも、もう生地だけを吊って展示しているだけでは何も伝わらないから、成約にも結び付かなくなっている。

もちろん、受け手側の能力の低下もある。
しかし、いくら声高に「お前ら受け手側の能力が低下している」と叫んだところで、すぐさま改善されるわけもない。受け手側の能力に合わせた見せ方は絶対に必要なのだ。

産地企業の中には展示サンプルがそのまま受注してもらえることを期待しているところも大いにある。
気持ちはわかるがそんな事例は耳にした範囲ではほとんどない。

産地展示会で写真のようなストールを展示したことがあった。
個人的な意見でいえば、このデザインは悪くないと思った。
ちなみに専門家がデザインしたわけではない。産地の人のオリジナルデザインである。

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当時、懇意にしていた東京のセレクトショップ関係者に会場で見てもらった。
そのとき、その人が言った言葉が上の百貨店バイヤーとほとんど同じだった。

「悪くはないがこのままでは売れない」

だった。

そこで具体的に「あなたならどう改良するか?」と尋ねてみた。

すると「私見だが」と前置きして、青と紫と黒で構成されている千鳥格子をベーシックな白と黒に変更する。
画像ではわかりにくいと思うが、グレーに走っている縦のラインは、実はシルバーラメである。
シルバーラメと黒の縦縞という性格を生かすなら、千鳥格子も白と黒に戻すべきだというのである。
どうしてもアクセントカラーがほしければ、どこかに一部だけ赤色を差し込んでみてはどうか?というのがその人の意見だった。

その人の本職もデザインではないが、長年、セレクトショップやSPAブランドとの取り組みを続けており、売れる売れないの一定の判断基準を確立していた。
なるほど、そのプランに改良したほうが売れそうな気がする。

こういう細かい部分のセンスが多くの製造・加工業者が自主開発した製品には欠けていると思う。
上の百貨店のバイヤーもそういう部分を指摘したのではないかと思う。

だから専門家との契約は必要なのだが、丸投げにしすぎても逆にとんでもない商品ができあがる。
共通認識を確立しないままで丸投げをすると、依頼主の意図がわからないから、自分の好きなデザインをしてしまう。もちろん、依頼主が一番悪い。共通認識を確立させるという作業を怠ったわけだから、怠慢といわれるべきである。

そして依頼主の意図とはまったく異なる商品が出来上がってしまうわけである。

これはこれで、製造・加工業者の陥りがちな陥穽である。

このあたりの連携を密にして共通認識を確立できれば、「売れる」自主企画商品はもっと作れるのではないかと思っている。が、これはかなり理想論であることもわかっている。
そういう部分を改善できる製造・加工業者が1社でも2社でも増えてくれることを願うしかない。