ユニクロアンドルメールは今春夏商品で終わるのだが、発展的解消だと発表されていた。
発展的解消というのは文字通りなら何かさらに大きな取り組みになると考えられるが、建前論的に使うなら単なる喧嘩別れでも使われる。芸能人のグループが解散するときは喧嘩別れでもこのフレーズが使用される。

そんなわけで最初は単なる契約終了なのではないかと勝手に想像していたが、今回は文字通りに発展的解消だったといえる。

ユニクロ・パリ、新ADにルメール氏
http://www.senken.co.jp/news/corporation/unqro-paris-lemaire-160609/

ユニクロはパリのR&D(リサーチ&デベロップメント)センターのアーティスティックディレクターにクリストフ・ルメール氏が就任したと発表した。就任を機にルメール氏が、パリのR&Dセンター発の新ラインとして手掛ける「ユニクロ・U」を今秋から全世界で発売する。

繊研新聞のこの記事がもっとも簡潔でもっともわかりやすい。

まさかルメール氏がユニクロのメンバーになるというのは意外だった。
そして彼が監修した新ライン「ユニクロ・U」が今秋物から発売される。

ルメール氏とはよほど相性が良かったのだろう。

これまでユニクロはジル・サンダー、アンダーカバーとデザイナーズコラボを行ってきた。
ジル・サンダーとは3年間も続いたが、それでもユニクロのメンバーになることはなかった。

腕とか技量とかさまざまな要因があるだろうが、こういうメンバーに加える加えないというのは、ひとえに人間同士の相性という部分がかなりの割合を占める。
一般的に腕が良くても相性が悪ければメンバーに迎えることはあまりない。

それにしてもこれはけっこうな大ニュースだと思う。

これに対して様々な意見がある。
例えば、ユニクロは内部のデザイナーや企画を育成できなかったのではないか? とか
どうせ通り一遍のベーシックアイテムに味付けをして終わるだろう とか

である。

これはその通りかもしれないが、今回のニュースの核心はそこではないと筆者は思う。

内部のデザイナーや企画が育成できなかったとしてもリストラの嵐が吹いている業界からは、続々とユニクロに入社する企画マンがいる。
企画マンだけではない。それ以外の部門でも大手アパレル出身者は多い。
以前に売り場で取材した人はワールド出身だった。
今後もユニクロは企画マンの補充には苦労しないだろう。

通り一遍のベーシックアイテムに味付けした程度でも問題ないのではないか。
そこまで「こだわった物」を求める消費者がどれだけ存在するのか。
そういうニッチ層への訴求をユニクロもルメールも考えてはいないだろう。
対象外の相手の言うことなど聞く必要はないのである。

個人的にはこれで、ますます小規模な不採算デザイナーズブランドは存続が難しくなったと感じる。

これまで「ユニクロは日用消耗品、ブランドはファッション」と言ってきたが、その「日用消耗品」が世界的デザイナーの知名度まで備えることになるからだ。
そしてなまじな不採算デザイナーズブランドよりも、ユニクロの通常ラインのほうが、これまでから使用素材・縫製仕様ともに品質が上だったのである。
しかし、自称「ファッション性の高さ」とか自称「高感度」とかで、なんとか彼らは自身の存在意義を保ってきたのである。筆者はあくまでも彼らの自称に過ぎないとみているけれど。

そこに「エルメス」という最高峰ブランドで活躍したデザイナーが加入するのである。
当然ながら消費者はそういう目で見る。
実際は味付け程度だったとしても「ファッション性の高さ」とか「高感度」が加わったと多くの人は感じる。
もしかしたら実際に発売される商品はそういう高感度な表情をしているかもしれない。
これで「ファッション性の高さ」とか「高感度」という逃げ道は完全にふさがれたといえる。

ユニクロと同じグローバル低価格SPAのH&Mは期間限定的にデザイナーズコラボを行っている。

規模は全くちがうが、イトーヨーカドーもデザイナーズコラボを開始した。
「セットプルミエ」での第1弾はゴルチエで、最近発表になった第2弾は高田賢三である。
イトーヨーカドーの「欠品させない」スタイルでデザイナーズアイテムを販売することはその効果を完全には発揮できない。最終的にゴルチエも投げ売りされており、これではブランドイメージを高めるどころかブランドイメージを損なうと思うのだが、それでも5年、10年と続けることができれば消費者にも少しずつ浸透するだろう。
そうなればイトーヨーカドーの衣料品のイメージは少しは好転する。
その前に「欠品させない」主義を撤廃すべきだと思うが。

ZARAはコラボをしていないが、ここはいわゆるコレクションブランドの完コピなので、毎シーズン、デザイナーとコラボしているともいえる。(笑)それは、まあ、一方的なコラボなのだが。

こう見てくると、今後ますます大規模な低価格ブランドとデザイナーズブランドやブランドとのコラボは増えると考えられる。

しまむらはデザイナーズとはコラボしていないが、ハリスツイードという素材ブランドとコラボしている。
ユニクロは今春、イギリスのリバティとコラボを行った。リバティプリントで有名なあのリバティだ。
さっそくリバティプリントのシャツを発売したが、定価3990円があっという間に1990円にまで値下げされており、その値下げ速度はルメールよりも速い。
一体何のためのコラボなのかと首を傾げたくなるが、ユニクロは今後、こういう素材ブランドとのコラボも行いますよという対外的なアピールにはなっただろう。

ユニクロはともかくとして、しまむら、イトーヨーカドーまでもが著名ブランドとコラボをしているご時世である。

コラボとダブルネームと別注品しかセールスポイントがないセレクトショップなんてどうするのかと思う。
要するに相手のふんどしで相撲を取っているだけであって、通常版だと売り切れる自信がないから、別注品とかダブルネームを要請するわけである。
「〇〇ブランドのグレーのコートはうちにしかありませんよ」というのがありきたりなセレクトショップの唯一のセールスポイントになっている。
売れたとしてもそれは〇〇ブランドの力がほとんどで、「〇〇ブランドのグレーのコート」」があるなら、そのセレクトショップではなく他社店舗でも消費者は構わない。

別注品しか能のないセレクトショップはそれだけ売る力に乏しいということを露呈しているだけであろう。

不採算なデザイナーズブランドや別注品しかセールスポイントがないセレクトショップは個人的には存在意義がなくなると思うし、生き残りが極度に難しくなることは容易に想像できる。