記事掲載時から業界人の間で話題となっているのがユナイテッドアローズである。

ユナイテッドアローズの連結決算は2期連続での営業・経常減益である。
ユニクロの減益が随分とマスコミでは話題だが(PV数稼ぎという側面もあるだろう)、減益続きの深刻さでいうならユナイテッドアローズの方が上ではないかと思う。
結局のところユナイテッドアローズではPV数が稼げないからこぞってユニクロを書くということだろう。

それはさておき。

なぜ今回の決算が話題なのかというと、繊研プラスの記事にこんな謎の一文が書かれているからである。

http://www.senken.co.jp/news/management/united-arrow160511/

ユナイテッドアローズは、収益性の向上に改めて取り組む。商品力強化に加え、原価率引き下げを引き続き徹底する。

とある。
話題となっているのが「商品力強化に加え、原価率引き下げを引き続き徹底する」という部分である。

原価率を引き下げるということは使用素材や縫製仕様をグレードダウンさせるということである。
使用素材や縫製仕様をそのままにするなら工賃を引き下げるしか手はない。

どちらにせよ原価率引き下げというのは商品にとってはマイナス面しかない。

ファストファッションは工員を泣かせているという論調があるが、国内の大手セレクトショップも工員を十分に泣かせており、ユナイテッドアローズではないが某SPA系セレクトショップは岩手県のTシャツ縫製工場に1枚あたり200円の縫製工賃を提示したといわれている。
ちなみにイトーヨーカドーの提示した工賃も200円であり、大手スーパーと同じ縫製工賃を提示したということになる。
それでいて生産数量は多くとも5分の1から10分の1程度しかないから、国内の大手セレクトショップやSPAブランドだって十分に工員を泣かせている。
同じ工賃なら生産数量の多い大手スーパーの方がまだ良心的といえる。

ここまで極端ではないだろうが、こういう提示をユナイテッドアローズもやりますよということだろうか。

この一文がなぜ話題になるのかというと、原価率の引き下げとは商品クオリティを低下させる要素しかない。
それでいて他方で「商品力強化」を掲げている。

商品力強化が意味することは通常以下のような事柄になる。

1、売れ筋商品を見出す(あるいは企画する)精度を高める
2、商品の品質(物性、デザイン性の両面で)を高める

1、の場合なら原価率を下げつつ、売れ筋商品を見出す・企画する精度を高めることは両立可能である。
しかし、2、の場合ならその両立は不可能である。

原価率を下げることはすなわち商品の物性面での品質も低下させることになるからだ。

ユナイテッドアローズ側が1と2のどちらを想定してこの言葉を発したのかはわからない。
また繊研新聞側がどちらを想定してこの文言を書いたのかもわからない。
繊研新聞の記者はこの文言を書いていて引っかからなかったのだろうか。
ユナイテッドアローズ側はこの発言をするときに「あれ?」と思わなかったのだろうか。

業界人が話題とするのはそういう理由である。
どのようにそれを両立させるのか。もし両立させる妙手があるなら、各社がそれを取り入れたいからだ。
過去何十年間も実現できなかった業界の理想形である。
繊維・アパレル業界に限らずすべての工業製品が理想とする究極の形態ともいえる。

原価率を下げることが会社を救うのか?
http://www.apalog.com/fashion_soroban/archive/38

「商品力強化に加え、原価率の引き下げを徹底する。」という文言です。私の自身の過去の経験から考えると、正直「こんなことは可能なのか?」と思いますし、これを実現できたら、そのノウハウだけで飯食えるなとも思います。

工業製品に携わるすべての人が共有できる意見がこれだろう。

この文言をもっとも悪意的に解釈するなら、「使用素材と縫製仕様を極限までグレードダウンさせて、工賃を叩けるだけ叩く、そして業界全体から売れ筋となりそうな商品を素早く見つけ出してそれをできるだけ早くコピー生産して店頭に並べます」ということになる。

おそらくそういう意図での発言ではないだろうと善意に解釈するのだが、深層はわからない。
もしかしたら何の気なしにとりあえず改善点を並べてみましたというだけのことかもしれない。
もしそうなら、おそらく改善はできないだろう。矛盾する二つの要素を両方ともに解消することはできないからだ。
それに対する方策をいまだにユナイテッドアローズ側は思いついていないということになる。

要約すると「打つ手なし」ともいえる。

筆者はユナイテッドアローズとなんの利害関係もないので、矛盾する二つの要素をどのように解決するのか、観察を楽しみたいと思う。