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南充浩 オフィシャルブログ

ファッションショーの開催目的は売るため

2016年4月28日 デザイナー 0

 先日、ファッションショーを見にでかけた。
実はもともとあまりファッションショーには興味がないのだが、かつては仕事上でパラパラと見ていた。

その昔は大阪でもデザイナーズブランドやそれに類するブランドを集めたコレクションショーが行われていた。
「大阪コレクション」というやつだ。
筆者が知るのはその中期以降から終了までだが、そのころになると、東京でデビューする前段階の新進ブランドのデビューという位置づけが濃かったように感じる。

結局は10年以上前に終了してしまった。
現在、日本で半年先のコレクションショーが定期的に開催されているのは東京だけである。

しかし、東京コレクションもその在り方が問われたりして、安泰というわけではない。

今回は、ぼんやりとファッションショーを見ていて、ふと、以前に大先輩がご指摘されたことを思い出していた。

どの層に向けてのイベントなのか?どのようなビジネス効果を求めてのイベントなのか?

ということを。

ファッションショーを開催する意義はさまざまあるが、最大の目的は「服を売るため」である。

これは服飾史などの本を開けば掲載されていることの復習なのだが、コレクションショーを開催するのは、バイヤーやメディア、上得意顧客に向けてのプロモーションのためだとある。
ブランドによる卸売りが主流だった当時は、それを仕入れてくれる小売店のバイヤー、報道してくれるメディア、毎年何百万円分も商品を購入してくれる上得意顧客に向けてのプロモーションであり、お披露目である。

平たく言えば「半年先のシーズンにはこんな服を提案しますよ。だから仕入れてね。報道してね。何百万円も受注してね」というのが最大の目的である。

存続できなかった大阪はもとより、東京コレクションもその在り方が問われるようになったのは、「売る」ことに結びつかなくなったからではないか。

その理由も様々あるだろう。

・衣料品不振、デザイナーズブランド不振で仕入れ枠が減った
・仕入れ型小売店の減少
・大手小売店のSPA化

などが考えられる。

そうするとコレクションショーは必然的に「単に見せるもの」になってしまう。
その割には開催に莫大な費用がかかる。
モデル・演出家へのギャラ、舞台装置、サンプル製作費、音響、照明費などなどが必要となる。
売れない場合はそれらはほぼ持ち出しとなる。

ならそれを緩和するために観客を有料制にするという手段がある。
有料制にした場合、通常のコレクションショーでは多くの集客は難しい。
なぜなら、極端な言い方をすれば、コレクションショーは多くの人にとって「面白くない」からだ。

音楽が流れてモデルが粛々と歩く。

これを「面白い」と感じる人は業界人の中でも限られているだろう。
筆者は1ブランドのショーが20分以上続くと、眠りに陥る。
ものすごい催眠効果がある。

じゃあそこにエンターテイメント性を持たせようということで、モデルに著名タレントを起用したり、ライブやトークショーを開催するようになったのが、神戸コレクションであり東京ガールズコレクションだといえる。
おまけに登場する洋服は、今、店頭で並んでいる物ばかりだから「売れることにつながり易い」(理論的には)となる。

実際に売れたかどうかは別だ。
東京ガールズコレクションにライトオンが出品して爆発的に売れたなんてことは聴いたことがないし、その当時のライトオンの決算は減収減益である。

まあ、ただ有料チケットは売れやすい。
正統なコレクションショーよりはずっとたくさん、しかも高額で売れやすい。
だから1万何千人も毎回集客できるのである。

最後期の大阪コレクションの観客は、団体関係者、一部のメディア、専門学校生がほとんどだった。
バイヤーは上に書いたような理由で減少していたから「売れる」ショーではなくなっていた。

現在でも特定の企業や組合団体がファッションショーを開催することがあるが、これは会員や組合員へのサービスであり、定期的に年に2回開催されるようなものではない。
イベントの性格が異なる。

国内のコレクションショーをもっと盛り上げたいという人がいるなら、「売れる」仕掛けを作らねばならないだろう。単に「見せる」だけのショーなら初回から何回かは盛り上がるだろうが、収益が上がらないので、結局運営者も出展者も金銭的に疲弊してしまう。疲弊した結果存続できなくなる。

東京の場合はメルセデスベンツというスポンサーが付いているので、好きにすれば良いと思うが(東京コレクション出展ブランドも周りが想像するほどには売れていない)、先日見たような地方で開催されるコレクションショーは「売れる」ということはさらに重要である。

現在なら、デザイナーズブランドと言えども直営店か直営ネット通販を所有していることが多い。
両方を所有しているブランドもある。

そしてスマホ全盛のご時勢である。
例えば、その直営ネット通販に結び付けるような仕掛けは考えられないものだろうか。

その部分を考えないと、コレクションショーというイベント自体はさらに衰退するだろう。

直販が大部分を占めるバーバリーはコレクションショーの出品物を半年先から、店頭に今並んでいる物に変える。理由はそちらの方が売れるからだ。

実に利益に敏感な欧米ブランドらしい決断である。
国内ブランドはそのあたりをどう考えているのだろうか?




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