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南充浩 オフィシャルブログ

需要が少なくてターゲット設定が不明確な商品は売れない

2016年4月21日 考察 0

 需要が少ないもの、ターゲット設定が不明確なものはやっぱり売れないと改めて思う。

福山雅治さん主演のテレビドラマ「ラヴソング」の視聴率が壊滅的に悪い。
初回10・6%で2回目は9・1%である。

筆者は最近はあまりテレビを見ないが、毎シーズン1本か2本のドラマを見る。
興味を惹くドラマがない場合は1本も見ないシーズンがある。
今シーズンは興味を惹くドラマがないのでもともと1本も見ないつもりだった。

もうすぐ46歳になるオッサンにとって「ラヴソング」というスイーツ過ぎるタイトルのドラマは当初から見るつもりもなかった。

このドラマの失敗の原因を考えてみる。

まず、ラブストーリーというジャンルに需要が少ないということが挙げられる。
この10年間で高視聴率を稼いだドラマにラブストーリー物がいくつあったか。
ほとんど存在していない。

直近のヒット作を考えてみても同様だ。
今年1月~3月シーズンのヒット作は「スペシャリスト」だが、これは刑事物だ。
昨年秋シーズンのヒット作は「下町ロケット」だが、これはビジネス物だ。

視聴率40%に達した大ヒット作「半沢直樹」もビジネス物だし、少し前になるが視聴率30%を越えた「家政婦のミタ」は家族物だった。

シリーズ化されているヒット作「ドクターX」は医者物だし、「海猿」はレスキュー物だ。

だからラブストーリーを企画した時点で視聴率は期待できないということになる。
ラブストーリーを企画しておいて「高視聴率を稼ごう」と考えたのならあまりにも浅はかだといえる。

次にこのドラマはターゲット設定が不明確すぎる。
誰に向けて作られているのかわからない。
福山雅治ファンのためのプロモーションビデオだろうか?

44歳(福山さん本人は47歳)の元ミュージシャンで臨床心理士という福山雅治さん演じる主人公の設定が荒唐無稽すぎて現実味がない。
14歳で自動車を運転していた花形満くらいの荒唐無稽ぶりである。

そのオッサンと20代の吃音女性のラブストーリーなのだが、筆者のようなオッサン世代にとっては興味の対象外である。
自分らオッサンが20代女性と恋愛関係になるなんてことは非現実的すぎる。
タイトルのスイーツさと相まってオッサン世代は絶対に見ない。

次に若い女性層だが、オッサンとのラブストーリーなんて興味がないだろう。
いわゆるコメディタッチで描けば喜劇として見ようという人もいるだろうが、真面目なストーリー物は見たいとは思わないだろう。
また実際に40代後半のオッサンと恋愛したいと思う人もいない。
福山雅治さんの容姿はマシな方だが、筆者も含めた現実の40代後半のオッサンの容姿はかなり汚い。脂ギッシュだし腹は出てるし頭は禿げかけている。そろそろ華麗なる加齢臭も漂わせ始めている。

若い男性はどうか?
ドラマの設定とテーマに興味を持てないだろう。
オバサン世代も同様に興味を持たないだろう。

老人世代も同様だ。

どの層も見ないという選択肢しか考えられない。

フジテレビはかつての大ヒット恋愛ドラマ「東京ラブストーリー」や「ロングバケーション」の成功体験が忘れられないだけではないか。
しかし「東京ラブストーリー」は91年、「ロングバケーション」は96年放映だ。
20~25年も前のヒット作である。

オッサン世代からすると昨日のことのようだろうが、4半世紀も前の成功体験なんて現代に通用しないのは当たり前だ。

ラブストーリーがヒットジャンルではなくなったというのは、各世代にとって恋愛はエンターテイメントではなくなったということだろう。
筆者のようなオッサン世代にとってはリスキーすぎる。
既婚者だとバレたときには大変なことなる。下手をすると職まで失うかもしれない。
独身のオッサンだと年齢的にも遊び半分で手を出すことは難しい。相手は当然、結婚を期待しているだろうから。

若い世代だって、責任という文字がちらつくから遊び半分は難しい。

それに一部の富裕層を除いて、可処分所得は減っているから恋愛に金を使うことは厳しい。
趣味を削るか恋愛を削るかである。
多くの男性は恋愛を削るという選択をするのではないか。

今回の企画は4半世紀も前の成功体験が忘れられないテレビ局が、「人気の高い福山雅治さんを主演させれば視聴率が稼げるでしょ」と安易に考えただけとしか思えない。

この失敗の図式はテレビ番組だけではなく、アパレル業界でも頻繁に見受けられる。

・かつての成功体験が忘れられない
・人気ブランドを並べておけば簡単に売れるだろうという甘い期待
・需要の少ない分野だということを分析できていないマーケティングの失敗
・ターゲット設定が明確でないので全層の消費者が購買しない

この4つが兼ね備わった失敗事例はアパレル業界でも掃いて捨てるほどある。

需要の少ない分野に取り組んで啓蒙活動を行うという事業もあるが、手っ取り早く成功したいならそういう分野ではなく、需要の多い分野に取り組むべきであり、それはアパレルもテレビドラマも同じである。

「ラヴソング」の失敗には学ぶべき点が多い。

探偵ガリレオ (文春文庫)
東野 圭吾
文藝春秋
2002-02-10


ガリレオの苦悩 (文春文庫)
東野 圭吾
文藝春秋
2011-10-07


容疑者Xの献身 (文春文庫)
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2008-08-05


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