アパレル不振と言われて久しいが、これは供給過剰にも一因があるが、消費者にとって買う動機がないこともその一因があるのではないか。

以前にも書いたが、不振の理由をいくつか挙げてみる。

1、ブランド過多、供給量過剰
2、消費者の可処分所得の減少
3、トレンド変化が緩やか
4、低価格品の見た目の良さが向上した
5、ブランド間・ショップ間の同質化

これくらいだろうか。

2000年代前半までならそれでも人気芸能人との契約とか人気ファッション雑誌とのタイアップで、消費者は「買う動機」を得てきたが、それもほとんど購買動機にはならなくなった。
なぜなら、人気芸能人は金次第でいろんなブランドと契約するというのが消費者に浸透しきってしまったからだ。
今年Aブランドと契約していても契約が終われば来年はBブランドと契約する。
しかもその芸能人はプライベートではそのAブランドもBブランドも着用しておらず、昔からCブランドを愛用している。

こういうことが浸透しきってしまえば、芸能人ファンが契約ブランドを買う動機がなくなる。
本当にファンなら彼がプライベートで愛用しているCブランドを買う。

ファッション雑誌も同じだ。
純広告は最早、何のメッセージ性もないし、ブランドロゴとシュっとしたモデルの写真だけでは何も伝わらない。
ブランドロゴだけ見せられてもそれで購買意欲を煽られるような消費者など現代社会には皆無だろう。

さて、アスレジャーという一つのトレンドがある。
スポーツテイストの洋服を日常着にも取り入れるというスポーツミックスだといえる。
この着こなしの好き嫌いは置いておく。
当初、アスレジャーという言葉を見たとき、「新しい戦隊物かな」と思った。
現在、「動物戦隊ジュウオウジャー」が放映中だが、その手の「アスレンジャー」と読み間違えたのである。

それはさておき。

マックスリーさんがアメリカのアスレジャー市場を「簡単には廃れないのではないか」と分析しておられる。

「アスレジャー」が簡単に廃れないと思う理由
http://www.apalog.com/maxre/archive/215

アスレジャーが、ただのファッショントレンドであれば、これほど、ファッション業界に影響を与えなかったのだと思いますが、エキサイテイングな体験と健康的な肉体を手に入れるベネフィットを兼ね備えたトレンドは、簡単には廃れないのではないでしょうか。

とのことである。

要するに、スポーツ、エクササイズの体験をするから、そのファッションは廃れにくいのではないかということである。

まあ、これはなるほどといえる。

ところでファッションをすることで得られるベネフィットとは何だろうか?
人によってさまざまあるだろうが、多くの男女にとって「異性にモテる」ということは大きなベネフィットの一つではないかと思う。

その昔は、最新のファッション、ブランドファッションを身にまとうことで「モテた」と言われている。
筆者は生まれてこの方、モテたことがないので伝聞にすぎないのだが。

女性でも男性でも「モテるコーディネイト」が雑誌にも盛んに掲載されていた。2005年ごろまでは。
2010年代に突入してからそういう特集は女性誌も男性誌もほとんど見なくなった。

今、強烈に「異性にモテたい」と考えている男女はそれほど多くないのではないか。
モテたところで2股、3股、5股をするのは男女ともにとてつもなくめんどくさい。
そのめんどくささが良いという人もたまにお見かけするが、そういう感覚は多数派ではなく少数派ではないか。
筆者だってそんなめんどくさいことは御免である。それをするくらいなら金持ちになって毎日風俗店に通った方がずっとマシである。

アパレル企業の年配層に話を伺うと「若いころは強烈にモテたくてファッションに凝った」という人が多い。
専門学校生も含めて今の若者にそんな人はあまりお見かけしない。
せいぜいが「純粋にファッションが好きで」というくらいである。
女性だと仲間内の女性にほめられたいという動機も多いそうである。

筆者が毎月、いくつか服を買うのは、取材のためという理由と好奇心、それから自己満足のためである。モテたいという動機は皆無だ。
だから高額品が投げ売りされていたら嬉しくて買うし、できるだけ定価では買いたくない。
ここ5年間で定価で買った洋服はゼロに近い。

自分自身の満足や同性の友達からの共感を得るためのファッションとなると、やはり購買動機は変わってくる。
何も高額品でなくても良いという考えにもなる。

異性を惹きつけるようなテイストの商品、高額品は売れにくくなる。

それに代わって、着心地の良さやら着回しの良さやらコストパフォーマンス重視になる。
例えば、口説こうとしている女性に対して「1万円のジーンズが1900円に値下げされていたから買った」とはなかなか言いにくいのではないか。

しかし、同性・異性の友達になら、それを言うことは共感を得やすい。
大阪のおばちゃんたちは常にそんな話ばかりをしている。そういう感じではないか。

そういえば、20代の息子を持つ50代の業界の先輩方はこんなことをときどき言っておられる。
「俺が20代の頃はモテることばかり考えていたが、息子たちはそうではない。そんなことにあまり興味を示さない」と。

若い人たちはそういう嗜好だから、今後も変わることはないだろう。
また将来の若い世代がそういう嗜好になることもないだろう。

そうなると、今までの感覚の商品はますます売れないだろうし、そういう商品づくりでは売れないままではないか。
「モテる」目的の衣服はニッチ市場としては存続し続けるだろうが、マスに浮上することは永遠にないだろう。

もっとファッションを売りたいなら、それを着ることで得られる「体験」と「ベネフィット」は何かということを考える必要があるのではないだろうか。

動物戦隊ジュウオウジャー 主題歌【限定盤 玩具付き】
高取ヒデアキ(Project.R)
日本コロムビア
2016-03-02