The FLAGのイシューを久しぶりに。

「なぜ若者がファッション業界を目指さなくなったのか?」に対するカウンター連載が行われているが、
そもそも「なぜ若者はファッション業界を目指す必要があるのか?」である。

魅力がないと映るなら別に目指さねばならない理由はこれっぽっちもない。

「なぜ若者がファッション業界を目指さなくなったのか?」という理由を考えてみよう。
はっきり言って目指す魅力がないからである。

ファッション業界、繊維業界の企業数は多いが、一部の大手企業、上場企業を除いて労働環境は劣悪である。
賃金が他業界に比べて低く福利厚生が薄い。
そんな業界を目指す若者が多いはずがない。

もし筆者の息子たちがファッション業界、繊維業界を目指したいと言ったなら全力で阻止する。

そんな劣悪な環境の企業で働く必要性はまるでないからだ。

この問題はここ2,3年で急にクローズアップされているが、その萌芽はすでに10年前からあった。
2005年ごろ、あるインポートアパレルの部長がこんなことをおっしゃった。
「インポート業界には最近、若手が就職しなくなりました。大学生はまずインポート業界を目指しません」と。
その理由を考えてみると、

1、インポートファッションというジャンルがそれほど憧れられなくなった
2、ファッション業界の待遇が他業界に比べて良くない

ことが挙げられる。

そして、この理由は今のインポートではないアパレル業界にもそのまま当てはまる。

こんな状況で「若者はファッション業界を目指すべきだ」と主張できる人の認識を疑う。

そもそも、ファッション専門学校に通う生徒数は減少の一途を辿っている。
現在、日本全国でファッション専門学校に通う総生徒数は13000人程度だといわれている。
これは某ファッション専門学校の理事長が挙げた数字なので極めて正確性が高いと思われる。

少子化が理由に挙げられるが、それだけではないだろう。
例えば今年の大学受験では競争率が4倍以上の学校があった。
かたや競争率4倍の大学があるのだから、ファッション専門学校の生徒数の減少は少子化だけが理由ではないということは自明である。
ファッション業界に魅力を感じている生徒、生徒の保護者がきわめて少ないということである。

少子化とは言いながら各年代の総人口は最低でも100万~120万人である。
ということは、毎年18歳人口はそれくらいあるということである。
ファッション専門学校は3年制が多いから、18歳~20歳人口で考える。
18歳~20歳人口は300万~360万人である。
そのうちの13000人がファッション専門学校に通っているということになる。
たった0・3%ほどの割合である。

これがファッション業界に対する生徒、生徒の保護者の評価ということができるだろう。

先日、ストライプインターナショナル(旧クロスカンパニー)が初任給の引き上げを発表した。
何もしないよりは少しはマシだが、これとても若者を取り込むには不十分な施策である。

若者がファッション業界を目指さないのは初任給が低いからではない。
そのあとの昇給がきわめて望み薄だからだ。

初任給に25万円をもらったとしても10年後も15年後もあまり給与が変わらないのなら、そんな企業は何ら魅力的ではない。
逆に初任給が少々低くても10年後、20年後に年収500万円、600万円が約束されていれば、そちらの方が魅力的な企業といえる。

ストライプが真に若者を取り込みたいなら初任給アップよりも昇給を確実にさせる方が効果的だろう。

一部の大手企業、上場企業を除いて極めて昇給が望み薄だし、昇給システムがはっきりしない会社が多い。
これもアパレル業界が忌避される原因の一つだろう。

どのような成果を挙げればどれだけ昇給されるのか良くわからない。
もちろん就業規則にもそんなことは書いていない。
そもそも昇給があるのかどうかも怪しい会社も多い。

これでは、人生設計は立てにくいから若者とその保護者が「アパレルはやめておこう」と考えるのは極めて当然である。

有給休暇、退職金、年金、これらの福利厚生も同様である。
一部を除いては極めて薄い。
給料が低くても休みやすいとか、退職金や年金が厚いならまだ魅力はある。
これも薄いならわざわざそんな過酷な業界、会社に入ろうと思う人の方が稀である。
そんなマゾヒストの人口は少なくて当然だろう。

このあたりを改善しないとアパレル業界を目指す若者なんて増えるはずもない。
そもそも業界の多くの年配層が若者を多く獲得したいのかどうかも怪しい。

まあ、そんな状況は今後もほとんど変わらないだろうから、そのまま緩やかに業界はしぼんで行くのではないかと考えられる。