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南充浩 オフィシャルブログ

100枚中10枚が定価で売れれば赤字にはならない

2016年2月19日 お買い得品 0

 まだ売り場には一部セール品が残っているが、ほぼ冬のセールは終わりに近づいたといえる。

1月20日くらいから各ブランドとも一斉に投げ売りを開始したが、在庫を残すよりは投げ打った方が良いと思う。
しかし、あまりに投げ売りをすると定価設定に説得力が無くなるから諸刃の剣といえる。

2月1日から2月7日まで無印良品が「セール価格からレジにてさらに20%オフセール」を行っていた。
そこで筆者はアメリカンコットンスキニージーンズを購入した。
無印良品のジーンズを買うのも、スキニージーンズを買うのも初めてである。
筆者は腿が太いのでこれまで、スリムストレートとかテイパードジーンズを買っていたのだが、思い切ってスキニーに挑戦してみた。

定価3980円が半額になり、さらにレジで20%オフなので1592円(税込)である。

IMG_0878

これくらいの金額なら失敗しても良い。

若者ブランドにありがちなめちゃくちゃ細いシルエットではない。
太もももそれなりにゆとりがあり、前のファスナーがかなり下の方まで下げられるようになっており、オッサンにも優しい作りになっている。

ふくらはぎは通常のスリムストレートよりタイトなシルエットになっている。
もちろんストレッチデニム生地を使用している。

それと昨日、ユニクロで耳当てを買った。
最寄駅まで自転車で10分くらいかかり、2014年12月ごろから耳が霜焼けになるようになった。
栄養状態が悪化したのだろうか。
幸い今冬は暖冬傾向なので霜焼けが小さい。
しかし、筆者の肉体は年々衰えて行くばかりなので、どこかで手を打たねばならない。

そこで折り畳み式の耳当てを買おうと思いついた。
というより、たまたまユニクロに入ったら投げ売りされているのを以前に目にしていた。

定価1500円が190円(税抜)にまで投げ売られている。

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先週は体調不良もあって買いに行けなかったので、昨日買った次第である。
後頭部から装着するタイプの耳当てである。
これで耳の霜焼けともおさらばさ。

それにしても原価はいくらなのだろうか。

さて、原価ということでいえば、クロスカンパニーの洋服は原価がいくらなのだろうか?と話題になった。

というのも1月の下旬に、「定価から80%オフ、レジでさらにそこから20%オフセール」を大々的に開催していたからだ。

10000円の商品は2000円になり、そこから2割引きだから1600円になる。
5000円の商品なら800円である。

これが原価なのか原価を割っているのか。
それが話題になった。

ある製造関係者が、「おそらく原価を割っているのではないか」と知らせてきたが、原価割れセールをこんなに大々的に開催して、会社は赤字にならないのかと質問を返した。

するとその製造関係者はこう答えた。
以下はその要約である。

原価率を20%だと仮定する。
あくまでも仮定だ。

店頭販売価格1万円の商品を100枚作ったとする。
原価は2000円で、製造総額は200000円となる。

もし、この商品が定価で10枚売れて、残り90枚が80%オフからさらに20%オフセールで売り切れたとする。

定価で売れたのは10枚だから総額は10万円
残り90枚は1600円で売れたので総額は14万4000円

となる。

10万円と14万4000円を足すと24万4000円であり、これがこの商品の売上高ということになる。
製造総額は20万円なので、4万4000円の粗利益ということになる。

だから10枚が定価で売れれば損はしない。
そういう計算になる。

ということである。

なるほど。
もちろん実際はもっと様々な経費が加算されるし、こんな単純な計算にはならないだろう。
それでも根本の原理はこういうことだそうだ。

この考え方で行くならたしかに会社に赤字は発生しない。
しかし、利益は恐ろしく薄い。
いわゆる薄利である。

薄利を持って、ある程度の利益額を稼ごうとすると、必然的に多売する必要がある。
いわゆる薄利多売である。
昔のダイエーをはじめとする量販店の考え方と同じである。

ということは、多店舗化を推し進めなくてはならない。
インターネット販売という手段もあるが、現時点ではそれだけでは大きな売上高にはなりえない。

だから現に多店舗化を推し進めており、新規出店も途切れることがない。

また固定費も抑えなくてはならない。
多店舗運営するときの最大の固定費は人件費である。
さらにいえば、製造原価も低く抑えなくてはならない。

だからアパレルの人件費は総じて安いし、製造原価を1%でも下げたがる。
そういうことになる。

それを改善するためにはどうすれば良いかという話になるが、一気に消費者心理を変えることは不可能である。
経済全体を活性化すれば可処分所得は増え、ある程度支出は増えるだろうが、いくら大企業とはいえ、たかがアパレル1社に我が国全体の景気を押し上げるほどの影響力はない。

ならば、各社が少しでも定価に近い値段で売れるように努力するしかない。
その場合は商品のデザインや製造に関することだけでなく、販促や広報やディスプレイなどにも最大限の工夫が求められる。

そうやって各社が少しずつでも高く売る努力をする必要がある。
それしかないのではないか。

とはいっても、景気が完全に良くなるまでにはタイムラグが生じるから、低価格品の需要も即座に減るわけではなく、むしろ値上げしたブランドが増えれば増えるほど、購買能力のない人が増えるから低価格品への需要も増える。

だからまた新たな安売り業者は絶対に生まれるし、絶対になくならない。
安売り業者を絶対悪のように見る業界人がたまにいるが、経済のシステムをまったく理解していない現実無視の理想主義者といえるだろう。

現実無視の理想論が成功したためしは、古今東西、存在しない。

服を着るならこんなふうに (1)
縞野やえ
KADOKAWA/角川書店
2015-12-10




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