創業家の手から離れたイトキン

 さて、1月末で資金ショートに陥る危機だったといわれていたイトキンがインテグラル社に買収された。

興味の対象はインテグラル社がどのような方策を打ち出すのか、そして創業家の辻村家はどうなるのかというところだろうか。

まず、辻村家は経営から手を引く。

繊研新聞社のウェブニュースではすでに新会長が就任することが伝えられていた。
となると、辻村家の現会長は退任するということである。

繊研新聞はそこまで書いていないが、普通の知識がある人間が読めばそう判断する。
会長2人体制なんていうのはあり得ない。

問題は社長以下の辻村家が残るかどうかだったが、インテグラル社は大株主から株式の大半を譲り受けたことがすでに伝えられている。
非上場の同族企業であるイトキンの大株主は辻村家しかないわけだから、辻村家から株式の大半を譲り受けたことは明白であった。
どの新聞もなぜか書いていないが。(笑)

本日の日経ビジネスオンラインでさらに真相が書かれており、辻村家の経営からの撤退も明言されている。
ここまで突っ込んだ記事を書いた媒体はない。評価に値する。

イトキン買収のファンド、真相を語る
「あと1年遅ければ債務超過だった」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/021100248/

新社長にはイトキンの前田和久副社長が就任することも書かれてある。

そして、記事末尾にはこうある。

ファンドが再生支援に入ることで、創業家は経営からすべて手を引くことになります。

とのことである。

まあ、正しい判断だろう。
むしろ、もっと早くに同族経営から脱していれば債務超過目前のような窮地に陥らなかったのではないかとも思う。

同族経営から離れられなかったのが、創業者・辻村金吾氏の限界点だったのではないかと個人的には見ている。

そして方策だが、まずは7ブランド廃止で400店舗の閉鎖である。
7ブランドの廃止はすでに報道されていたが、400店舗の閉鎖という具体的数字は初めてである。

収益力を高めるため、国内約1400の店舗は千店程度まで絞り込む。昨年1月末で約4800人いた従業員についても早期退職を募っていて、4千人規模になる見通しだ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160211-00000003-asahi-bus_all

昨年のワールドと合わせて900店舗の閉鎖である。
それ以前にもTSIも大量のブランド廃止を発表しているから、少なく見積もっても3社で1200店程度は閉鎖することになると考えられる。

すごいなあ、と思うのは、その1200店舗がなくなっても従業員以外は誰も困らないというところだ。

だれかいますか?
ワールドのあのブランド店がなくなってすごく困っている人。
イトキンのあのブランド店がなくなってすごく困る人。
TSIのあのブランド店がなくなってすごく困る人。

その店で働いていた従業員以外はだれも困らない。
あ、そのブランドの製造を担当していた製造関係者も困るが、一般消費者はだれも困らない。

だからなくなっても当然だと思う。

むしろ、これまでの洋服の供給過多が改めて浮き彫りになったのではないか。
1200店舗がなくなっても誰も困らない。
これが今の国内市場である。

洋服が売れないのも、値崩れを起こしているのも、その原因の一端は供給過剰にある。
しかし、社会主義経済ではないから国やら役所が各社の製造数量を決めるわけにはいかない。
自由競争に任せた結果供給過剰に陥るのは仕方がない。
供給過剰でどう勝ち残るかを考えるべきであって、「オシャレに興味がない人が増えた」なんて責めても始まらない。興味を持たれるような方策を採ってこなかった方が悪い。

元来が供給過多だから大手アパレルの大量閉店は、供給量を戻すための正常行為だともいえる。

脳内が高度経済成長期やバブル期で時間停止している経営者や幹部連中が君臨するアパレルは今後もさらに淘汰が進み、供給量は限りなく正常値に近づいて行くのではないか。




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1 コメント

  1. daaa26

    私もアパレルに関わる者として、アパレル産業の将来に寄与したいという観点から、「その1200店舗がなくなっても従業員以外は誰も困らない」という所に違和感を持ったので、その点を補足したい。
    違和感の原因は、①顧客レベルでの利便性について定義していない点と、②トークのテクニックである「断定」を記述において使用している点の二つである。おそらく、その『困らない」とした理由は、ある店舗が閉鎖されても「ネットや別の店舗等でも買える」、あるいは「代替ブランドが存在する」と、筆者は考えているのだろう。しかし、それは失業率と求人倍率の関係と全く同じ論理で、必ずしも代替性が保証されないのだが、本文の論調としてあえて断定的に表現したくなる心理は私にも理解できる。
    ただし、本文はあくまでも、筆者のイトキン含むアパレル全体が今後どうなるのかについての所感(≠意見/≠見解/≠結論)に留まるものである。筆者は大局的な観点からアパレルを評論する立場の方であるため、この点は読者の皆様(サプライヤーや、顧客の方々)におかれましては、どうかご容赦願いたいと思う。

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