分野・業界ごとにマダラ模様だとは思うが、世間的には押しなべて見れば今の景気は比較的安定しているように感じる。
バブル期みたいな好況感は永遠に訪れることはないが、97年の拓銀・山一ショックやら2008年のリーマン・ショックほどの急激な不景気感もない。
分野や業界によっては「好調です」と答えるところもあるだろう。

しかし、繊維・アパレル業界はかなりの不景気感が漂っている。

昨年発表されたワールドやTSIなどの大手アパレルの苦境もあって、その影響が川上にも川下にも表れつつあるように感じられる。

また今月末には某大手アパレルが資金ショートに陥り、どのように回避するのか、はたまたそのままショートしてしまうのかわからない状況にあるといわれている。

中規模・小規模の成長株と目されていた遊心クリエイションの会社清算、WOmBの民事再生法申請もあり、不況なのは大手だけではないことが証明されたといえる。

これらのアパレルやSPAが破綻するということは、当然ながらそこと取引のあるOEM・ODM企業も苦境に陥るし、そこが使っている縫製工場・染色加工場・生地メーカーも影響を受ける。

そんな中、知り合いのOEM業者から「創業以来の厳しい状態にある」といわれたし、また別の知り合いのOEM業者からは「経営状態がかなりヤバい状態にある」という知らせもきた。

某地域のプリント加工場も今年前半に3軒くらいは倒れそうだという知らせもあった。

そういえば、「デンバー」の店名で親しまれていた関西圏を拠点にしていたジーンズカジュアルチェーン店も今月末で全店閉鎖になる。

本当に業界の上から下まで危機的状況にあると感じる。

97年の拓銀・山一ショック時はたしかに一気に不況感が押し寄せた。
この前後で、ダイエー、マイカル、そごうが倒産した。
当然業界も不況感一色だったが、反面、ワールドやTSI(当時はサンエーインターナショナルと東京スタイル)、オンワード樫山、ファイブフォックスあたりは堅調・好調だったし、ユニクロブームも始まった。

リーマン・ショック時も不況感はもちろんあったが、ちょうどファストファッションブームも起きたし、それに類した成長ブランドもあった。

そういう意味ではこれらの時点ではまだ明るさがあった。
解決法らしきものも見えていた。それは幻覚だったのかもしれないけど。

もちろん、現在でも成長企業はあるが、これがかなり数少ない。
某社なんて大手アパレルからの退職者を高額で大量に受け入れたり、引き抜いたりしていると聞く。

しかし好調だと聞くのはここくらいであとは押しなべて不況感が漂っている。

97年時点ではユニクロブームがあったから低価格化が解決策とみなされた。
2008年当時はファストファッションブームだったのえ、低価格化とトレンド化が解決策とみなされた。

今、そういう分かりやすい解決策・打開策は見当たらない。

なぜなら低価格化は限界まで達してしまったし、トレンド化もかなりの部分まで対応している。
ユニクロも飽和状態に達している。

遊心クリエイションもWOmBもそういうブランドだったが、それすらも事業が破綻している。
大手アパレル各社もこの10年間はひたすら低価格化とトレンド化を強化してきた結果が現在に至っている。

メディアではお気楽に「高額品でもバカ売れするアレ」なんていう能天気な記事を掲載しているが、賢明な人ならそれは鵜呑みにはできない。
8万円の服とか10万円の服なんてそう簡単には売れないし、それを購買できる人間の数はそれほど多くない。

97年とか2000年くらいなら金のない女性が援助交際という名の売春をしてまで高額ブランドを買ったといわれているが、現在はそんな身の丈に合わない背伸びはカッコイイこととは思われていない。

結局は、少ない購買層を巡って高額ブランド同士での激烈な顧客争奪戦が行われることになり、そんなところにポっと出たような新参ブランドが分け入って容易に勝てるはずもない。
その世界で生き残れるブランドはほんの一握りであり、もしかすると購買人口の多い中価格帯や低価格帯での商売よりも厳しいのではないかと思ってしまう。

そういう状況だから多くの業界関係者がまったく希望が見いだせないのではないかと感じる。筆者も含めて。

低価格化は限界、高額化が難しいことは容易に想像できる。
トレンド対応もやり尽くした。
だから解決策なし。

これが今の状況ではないか。

だから、今年か来年あたりに大手アパレルが何社か破綻して、その連鎖でOEM/ODM企業、川上企業、川下企業もけっこうな割合で破綻しそうな気がする。
今年か来年あたりに業界の構図が変わるほどのガラガラポンが起きるのではないかと感じられてならない。
杞憂に終わることを祈るばかりである。