繊維関係の製造・加工業者は年々減っている。
これに対して「製造・加工業を守れ」という声がある。
とくにイシキタカイ系とかモノヅクリ系を気取っている人にそういう声が多いように感じる。

筆者も仕事上、そういう製造・加工業の経営陣や幹部と面識があり、さまざまなコメントを聞く機会がある。

一口に「製造・加工業」と言ってもその思惑はさまざまだ。

1、現在、経営は苦しいが何とか事業を存続したい、または止められない事情(借金など)がある。

2、経営は苦しいが、借金はなく経済的に余力があるから近いうちに廃業したい

3、経営が苦しいし、やる気もないがとりあえず助成金と補助金で食いつなぐ。なくなったら倒産させる。

まあ、大きく分けてこの3つだろうか。

個人的には1番以外の業者はさっさと事業を畳めば良いと思っている。
止めたい事業者をわざわざ国や行政、業界が支援する必要もない。

日本の製造業がなくなっても良いのか?という論調を聞くことがあるが、やる気がない業者ならなくなっても良いと思う。
現在、国内に大型生地工場や大型縫製工場、大型染色加工場が多数残っている先進国があるのだろうか?
アメリカもイタリアも一部残っているくらいだと聞く。

ということは、日本がそうなっても仕方がないし何の不思議でもないということではないか。

物の値段は安い方が売れやすい。
これはどんなに安売り嫌いが否定しても事実である。

昨今、飲料水の自動販売機が不振だと報道されている。
理由はスーパーとコンビニに押されているからだそうだ。

自動販売機は350ミリリットルの缶ジュースが130円、500ミリリットルのペットボトルがだいたい150円か160円くらいである。
しかし、食品スーパーだと350ミリなら100円以下、500ミリのペットボトルでも100円内外で買える。
最近は都心にも食品スーパーが増えたから、格別に急ぎの用事がなければそこで買うという人が増えてもおかしくはない。

一方、コンビニは自販機と同じ定価販売だが、昨今はポイントが貯まる。
実質的な割引販売と同じである。

同じ銘柄の飲料水なら食品スーパーかコンビニで買った方がお得なのである。
かくして自動販売機は衰退している。当然だろう。

だから大阪市内には格安自動販売機が出現し始めている。
100円は当たり前、80円、50円、30円のジュース類が販売されている。
筆者はもう何年も大阪市内で定価でジュース類を買ったことがない。

ジュース類は飲んでしまえば消えるから、毎日でも買う必要がある。
しかし、衣料品は一度買ってしまえば、特殊な条件で破損する以外は少なくとも3年くらいは持つ。

となると、毎月とか毎年新しい洋服を買う必要がない。
それでも買ってもらおうとするなら、一番手っ取り早い手段は値下げである。
よほど特殊な販促やらブランド作りをしない限り、衣料品は基本的に値下がりするのが当然というのが現在の状況であり、今後、日本にバブル景気が再来してもこの傾向は変わらないだろうと見ている。

となると、製造加工業者の工賃が上がらず、従事する人の賃金が上がらないのはこれもまた当然と言える。

賃金が上がらない業界に若い人が飛び込むことなんてよほど稀なケースであり、労働力不足になるのも何の不思議もない。

で、工員が老齢化して廃業か倒産を選ぶというのもまた自然な流れである。

製造加工業をすべて救うことなんて不可能だし、助成金やら補助金も無駄遣いになる。

やる気があって事業を続けたいと強く望む業者を支援するにとどめる、というのがもっとも効率的で現実的なやり方ではないか。

だから資産があって廃業できた業者は良かったと祝いたいし、資産があっていつ廃業しても困らないという状態で、しかもやる気がない業者はさっさと廃業して楽になれば良いと思う。

残った国内業者を如何にブラッシュアップするかが最重要課題ではないかと思う。