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南充浩 オフィシャルブログ

ファッション雑誌掲載とタレントとの契約は必ずしも効力を発揮しなくなった

2016年1月18日 考察 0

 衣料品ブランドの販促について考えさせられることがあった。

まったく無力化しているわけではなく、それなりに効力がある場合もあるのだが、ファッション雑誌への掲載・広告出稿とタレントとの契約は格段に影響力が小さくなっている。

ファッション雑誌への掲載・広告出稿と人気タレントとの契約という手法は2000年代半ばでピークアウトした手法だと感じる。

70年代・80年代にこの手法がどれくらい有効だったのかは、筆者が学生だったのでわからないが、90年代はこの手法がもっとも有効だった。
2016年現在も多少の効力は残っており、ときどきこれが当たるブランドもある。
しかし、90年代から2000年半ばまではこの手法を採れば8割くらいのブランドがなんらかの効果を得ていた。

現在だとこの手法で効果を得られるブランドは2~3割ではないかと思う。
決して今でもバカにはできない手法だが、必ず効果のある手法ではなくなったといえる。

【 実践 】雑誌の編集方法から学ぶ、売れる販促・プロモーション術 <前編>
https://armador.co.jp/blog/promotion2/

まずファッション誌に掲載するという選択肢は、予算があったとしても即刻選択肢から外します。理由としては、営業担当者が持ってきた好きでもないブランドが編集担当者にぞんざいに扱われ、フォーマット通りのタイアップページしか出来上がってこないことを知っているから。

あ、すいません!いきなり核心ついてしまいましたか?じゃ濁します。そういうところが中にはあるから(笑)。

雑誌に何百万もかけて掲載するなら、美容師さんのように一着売ったら何%バックという感じで店舗スタッフの方に還元した方がよっぽど売上が上がると思います。つか上がります。

じゃ、どうするかというと自社のシーズンカタログ、ニュースレター、メルマガ、SNS、通販ページのランディングページといった自社が持つメディアを使っていきます。

と書かれており、一部の例外を除いて大部分はここで指摘されている通りである。

これが2016年現在の販促のセオリーではないか。

先日、久しぶりに某大手アパレルの人と話す機会があった。
そのアパレルはショッピングセンターへのテナント出店用の低価格ブランドを展開しているのだが、そのブランド名を存じ上げなかった。
しかしよく聴いてみると売上高が80億円内外あるそうである。

いくら量販店内のテナントとはいえ、80億円というとそれなりの規模であり、1月末で全店閉鎖になるイーブスや、先日民事再生法を申請したWOMBよりもよほど大規模である。

それでもブランドの知名度が低いということは、販促、広報活動が効果的ではないということになる。

さらにいろいろと尋ねてみると、かつては佐々木希さんや優香さんをキャラクター起用したこともあるとのことだが、それすらも筆者の記憶にはまったく残っていない。
ついでにいうとそういうタレントは2,3年おきにいろいろなブランドと契約するので、どのブランドと契約していたかなんてすべて把握するのはよほどタレント自体に興味を持っている人以外は不可能である。

そして筆者はタレントにこれっぽっちも興味を持っていない。

すでにタレントとの契約にそれほど効果がないということはこの80億円規模のブランドが証明しているではないか。
もちろん例外もあるが、最早「人気タレントと契約していれば確実」という時代ではなくなっている。

ドラマへの衣装提供は効力を発揮する場合があるといわれているが、これとても90年代後半から2000年代半ばまでの比ではない。
効力を発揮する場合もあるが、まるで無反応な場合も多い。

雑誌、タレントとの契約、ドラマへの衣装提供、この3つにこだわる広報、プレスは現在も数多く残っているが、2000年代半ばまでの成功体験に固執しているだけだといえる。

また別のメンズブランドは2010年以降、超人気俳優を起用して3カ月連続で6ページごとのタイアップ記事をファッション雑誌に掲載したが、あえなくブランドは休止である。
その人気俳優は松本潤さんとか小栗旬さんとか松田翔太さんクラスの人気俳優であるが、結果的にはまったく効力がなかったといえる。

オムニチャネル化が叫ばれている現在では、先のブログが指摘する通り、雑誌への掲載はもっとも後回しにしてSNSを活用してECを強化することが最重要課題ではないかと思う。

しかし、以前にも書いたように、すでに大手ECモールと直営サイトがひしめき合っている状況下において、「単に出店」すれば良いというものではない。
それでは確実に埋没してしまう。

昨年、ワールドの新社長に就任した上山健二氏はインタビューでこう答えている。

https://www.wwdjapan.com/focus/interview/president/2015-05-07/6913

上山:カギを握るのはウェブだ。出店だけがお客さまへのアプローチではない。もっとウェブでバズを起こして、お客さまに商品やブランドを訴求する方法があるはず。リアル店舗を否定するわけではないが、まず出店ありきという発想は変えないといけない。ワールドが持つ魅力的なブランドや多様な店舗網とウェブを効果的に連動させたO2Oを構築する。eコマースにも注力する。当社のデジタルプラットフォーム本部は「WWW.300(ワールドワイドウェブ300) 」という目標を掲げた。現在、eコマースの売上高は130億円内外。これを中期的に300 億円規模に育てる。

とのことである。
目標設定としては過不足ない。
しかし、どうやって売上高を2倍以上に高めるつもりだろうか?
またぞろ、ファッション雑誌、タレント契約という過去の遺物の手法に頼るつもりだろうか?
それがまったく効果がなくなったことはワールド自身が一番感じていると思うのだが。

続けて

当社のeコマースは今 のところ自社ブランドを巨大モールのようにそろえる「ワールド オンライン ストア」で行っている。だが、ブランドのコアなファンのお客さまの心に響くようにするために、ブランドごとに個性的なeコマースサイトを作 る必要がある。店舗の内装を磨くように、各ブランドのサイトを光らせたい。

とも述べておられるが、内装を光らせるだけではウェブの場合、集客力は上昇しない。

例えば、雑誌的コーディネイトを数多く掲載している携帯通販の夢展望が赤字を続けている。
陳列手法から言えばピーク時から変わっていないし、ピーク時から年月が経過した分、洗練されているはずであるが、厳しい業績が続いている。

単に「陳列手法」だけでは効果がないという実例ではないか。

SNSで注目を集めるためには、「広告」「宣伝」的な書き込みよりも、「読み物」的な書き込みを強化する必要がある。
「読み物」的書き込みを強化すれば、当然好き嫌いが生じ、ファンも獲得できるがアンチも相当数生んでしまう。

全方位を狙った優等生的書き込みを続けているワールドを含めた大手アパレル各社がそこに踏み込むことができるだろうか。
筆者はできないと見ている。
なぜできないかというと上層部と現場スタッフがアンチを生じさせることを過度に恐れているからだ。

ユニクロのように全世代に売ることを目指しているならそういう姿勢でも良いが、大手アパレル各社は最早そんな悠長なことを言っていられる状況ではない。
どうせ数十億円規模の各ブランドを強化するほかないのだから、ブランドが顧客を絞り込まねばならない。
そのためには万人に過不足のない書き込みよりも、アンチが生じようとも、ターゲット層に響く書き込みをする必要がある。

その覚悟が持てないうちは、EC強化なんて絶対に実現できないだろうし、ファッション雑誌・タレント契約に固執している間はブランドの業績は絶対に上向くことはない。


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