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南充浩 オフィシャルブログ

WOmBが民事再生法を申請

2016年1月13日 倒産 0

 昨日、カジュアルセレクトの「WOmB」が民事再生法を申請したニュースが流れた。
負債総額は約10億円。
報道では「メンズカジュアルセレクト」とされているが、実際は、セレクト品と自社オリジナル品を販売するタイプのチェーン店であり、レディースも扱っている。

近年、急速に伸びてきたブランドなので正直驚いた。
一昨年あたりから商況が厳しいとは耳にしていたが。

詳細は、信用交換所の記事に詳しいので以下に引用する。

10歳代後半~20歳代をターゲットとしたカジュアルウエアを扱い、「WOmB」(ウーム)ほかの店名で西日本中心に多店舗展開するほか、インターネット通販で一般消費者に販売、ピークとなる26/8期には年商19億1396万円を計上していた。
しかし、収益面は既往より採算維持程度と低調な推移を強いられていたところ、同期は店舗経費増や在庫評価損などもあり数千万円台の赤字となり債務超過に転落、金融機関に対しリスケを要請していた。翌27/8期には不採算となっていた15店舗を閉鎖したことなどから売上は10億5504万円にまで急減、借入負担もあり多忙な資金繰りを余儀なくされる中、遂に今回の事態となった模様。

とある。

昨日の時点では、店舗数は数店舗しかなかったが、正直にいうと「こんなに店舗数少なかったか?」と疑問を覚えたがこの記事を読んで納得した。
昨年に不採算店を15店舗も閉鎖していたのである。

不採算店を閉鎖するのは経営の王道といえるが、一気に閉鎖して、店舗数が半減以下になったのなら企業経営は厳しくなる。
なぜなら、収入も半分以下になってしまうからだ。
赤字、黒字の前に収入そのものがなくなってしまったら話にならない。

民事再生ということは、これから支援先を探すことになるが、見つからなかった場合は破産整理されることになる。はたして支援先は見つかるのだろうか。

この会社は、SPA型カジュアルチェーンのウィゴーと親密なので、ウィゴーが支援に乗り出すのではないかと見ている人もおり、もし支援先が現れるとしたら、それが一番現実的ではないかと筆者も見ている。

それにしても急成長中の会社があっけなく経営破綻したことには驚かされた。

同時に、知人から「某ジーンズカジュアルチェーン店も1月末での廃業を決定した」という知らせがあった。

ここはまったく面識はないが、名前くらいは以前から耳にしたことがある。
創業から50年強の老舗だがついに廃業ということになる。
民事再生法申請やら倒産よりは廃業の方がずっとマシだが、これ以上続けても見込みがないと経営者が判断したということだろう。

あ、ついでに書いておくとこのジーンズチェーン店は楽天市場に出店していたが、年末で閉鎖している。
たんにネット通販をやっただけでは何の効果もないことが立証されたといえるだろう。

それにしてもアパレル業界はさらに厳しさを増している。

カジュアル分野がもっとも厳しいと感じるのだが、それ以外の分野も同様に厳しい。
レディースインポートでも相当に苦しいブランドもあると耳にするし、ワールドやイトキンなどの大手総合アパレルの不振もそれを物語っている。

ファーストリテイリングの決算下方修正とはまったく次元が異なる厳しさである。

アパレル業界は参入障壁が低い。
小売店だと特別な免許が必要なわけではない。
資金さえあれば誰でも開業できる。
継続できるかどうかは別問題として。

バブル崩壊直後くらいまでは、メーカーとして新規参入することは難しかった。
資金もさることながら、製造ルートを探すことが難しかったからだ。
しかし、90年代後半からOEM・ODM請負企業が急速に増えたことから、資金さえあればド素人でもオリジナルブランド品を作ることができるようになり、さらに参入障壁が下がった。

継続できるかどうかは別として、誰でもがSPA(製造小売り)業態を立ち上げられるようになった。

これがさらに過剰供給をもたらす。
ユニクロだけのことではない。

アパレルや小売店がつぶれるたびに細胞分裂のように、そこにいた旧スタッフたちがどんどんとブランドやSPAを立ち上げる。
彼らも食わねばならない。
異業種へ転職できる人・できた人は別として、それ以外の者はこの業界で食うほかない。
ならば自衛策として、オリジナルブランドを立ち上げるか、小売りも同時に手掛けるSPA業態を立ち上げるほかない。

かくしてさらに過剰供給は進み、当然のことだが、価格競争を引き起こす。

これは日本人の意識が低いからとか、消費者のモラルが壊れたからとかそんな問題ではなく、自然の摂理である。
昨年11月か12月に「暖冬によってダイコンが超豊作になり値崩れを起こしている」という報道があったが、それと同じである。豊作になれば値崩れを起こす。
衣料品も同じである。
ブランドやショップが増えすぎて供給量が過剰になると、その多くは価格競争に走る。
「安い」ということがもっとも効果的な販促の一つだからだ。

それに巻き込まれたくなければ、そうではない「価値」を作り上げるほかない。

それにしても、もうすぐ遊心クリエイションの解散に伴い、アソコを除く各店舗が完全閉鎖となる。
WOmBが再生するにしても過剰在庫の処分が必要となる。
そして某ジーンズチェーン店の廃業である。

在庫品が山のように存在する。

これらがすべて在庫処分屋に流れることとなる。
在庫処分屋は商売のタネには困らない。

この衣料品業界で、今後、もっとも需要があり、商売として成立するのは在庫処分屋ではないかとも思う。

ブランドやショップを立ち上げるよりも在庫処分屋を立ち上げた方が食うには困らないのではないだろうか。
個人的には衣料品業界でもっとも手堅い商売は、在庫処分屋を立ち上げることではないかと最近思い始めてきた。




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