ユニクロを展開するファーストリテイリングの8月期連結の下方修正が発表された。

良くも悪くも注目される同社だから、さっそくそれについてのさまざまな意見が見られた。

東洋経済オンラインの記事は、商品を基軸にまとめられている。

ユニクロの失速は「暖冬」だけが原因ではない
前回発表から3カ月で業績予想を下方修正

http://toyokeizai.net/articles/-/99927

ちなみに今回の下方修正は、

売上高1兆8000億円(当初見込みよりも1000億円減)
営業利益1800億円(同200億円減)
税引き前利益1800億円(同200億円減)

という内容である。
同社の下方修正はかなり珍しいからそれだけでインパクトを与えるが、この数字を見る限りでは、同社の優位は変わらないと感じる。
赤字続きの大手総合アパレル各社の下方修正とはその度合いが全く異なる。
同レベルに論じられるものではない。

同社が今後も急激に売上高を落とすことや赤字転落することは考えにくく、全世界売上高5兆円構想を実現するのは難しいかもしれないが、大手アパレル各社のような体たらくになることは当分ないだろう。
その観点から、東洋経済オンラインの記事について考えてみたい。

国内ユニクロの既存店売上高をみると、昨年は9、10月こそ前年を上回ったが、売上規模の大きい11月は8.9%減と落ち込んだ。冬物販売の動きが鈍かったため、値引き販売を増やした結果、粗利率も9~11月で前年同期に比べ0.8ポイント悪化した。

とある。

ちなみに2015年12月度の売上速報によると、

既存店売上高は前年同期比11・9%減
既存店客数は同14・6%減
既存店客単価は同3・1%増

となっており、とくに客数減が目につく。

東洋経済オンラインの記事は、その理由を「商品価格上昇」に求めている。

とくにやり玉に挙がっているのはウルトラライトダウンだ。
これはたしかにその通りで筆者も個人的には同意する。
付け加えるならウルトラライトダウン以外のダウンジャケット類もユニクロの価格優位性は失われたと感じる。

2012年2月にこのブログでダウンジャケット比較を行ったが、この当時のウルトラライトダウンジャケットの定価は5990円だった。今は6990円~7990円にまで上昇している。
ウルトラライトダウンジャケットの価格優位性は失われており、無印良品と同等価格になっている。
4年前に両者のダウンを分解したところ、中に入っているダウンボールはユニクロの方が無印良品よりも高品質だった。それでいて定価は1000円安かったので、ユニクロの商品の方がコストパフォーマンスに優れていた。

しかし、今は価格は同等で、中のダウンボールの品質に多少の差はあっても平地で日常生活を送るにおいては、それほどの厳密な機能性の差は体感できないから、ユニクロを絶対に買わなければならないという理由は薄れる。
しかもこの数年はウルトラライトダウンジャケットを売りに売りまくっているから、多くの消費者はそろそろ違うブランドの商品が欲しくなっている部分もある。

また通常のダウンジャケット類は、定価14990円とか12990円だったが、これも価格優位性がない。
ライトオンが丸八布団とコラボしたダウンジャケットは17800円と13800円だからほぼ同等である。
商品のデザイン性は色柄バリエーションも含めてライトオンの方が上だと感じる。

また両者は12月半ばから値引きを敢行したが、ユニクロは9990円~7990円に、ライトオンの丸八は9900円均一になっており、値引き後の価格も同等である。

すでにユニクロのダウンジャケット類をこの数年で複数枚所有している消費者が、今またユニクロのダウンジャケット類を買わなくてはならない理由がない。

この価格優位性について個人的な感想を述べると、ユニクロの商品に価格優位性がなくなったのではなく、価格優位性のある商品とない商品の差が顕著に出てきたと感じる。

ダウンジャケット類は明らかにユニクロに価格優位性はない。
一方、ラムウールセーター類は相変わらず価格優位性に優れている。
無地の丸首・V首のラムウールセーターはウール100%で2490円の定価である。
これが週末値引きや商品値下げで1290~1990円になる。
この品質でこの価格は明らかに業界でもトップである。

筆者はセレクトショップのオリジナル品をほとんど評価していないが、なまじっかな7000~9000円クラスのセレクトショップオリジナルの無地ウールセーターとほぼ同等かそれ以上の品質だと見ている。

2015年、筆者が買った洋服の多くはユニクロの値引き品だが、そのほとんどがセーター類とカジュアルパンツ類である。
この2品は今でも他ブランドに比べて価格優位性が高くコストパフォーマンスに優れていると感じる。

反対にダウン類はさほどでもない。
またウールアウター類も価格優位性はほとんどない。

例えばウールのPコート、ダッフルコート、チェスターフィールドコートは定価が12990~14990円に値上がりした。

しかし、その価格を支払うのであれば、他のブランドでも似たような商品は買える。
使用されているウール素材はユニクロの方が良い場合もあるが、素材品質にこだわらず、色柄・デザイン・シルエットを重視する人なら他ブランドを買った方が良い場合も多い。

結局、Pコート5990円、ダッフル・チェスターコートが7990~9990円に値下げされたが、消費者の多くがユニクロに求めているのはこの価格帯ではないかと感じる。

東洋経済オンラインは、価格以外にもファッション性にもその原因を求めている。

ここ数年は、かつてのような、わかりやすい大型ヒット商品が出ていない。ヒートテックのアイテム数を過去最多にまで増やし、機能強化を訴求しようとしたが、顧客の心をつかみきれないでいる。「世の中的にファッション性の高い衣料を求める傾向が強まっており、ベーシック衣料が中心のユニクロには逆風になっている」との声もある。

同じファーストリテイリング傘下のジーユーは、ユニクロとは対照的に、当初計画を大幅に上回る増収増益を達成。ワイドパンツやニットボトムスが好調で、既存店売上高は2ケタ増となった。ファッション性を重視するアダストリアなど、競合他社にも好調な企業が目立つ。

とある。

これも一面は真理だが、ジーユーとユニクロの売上高の差、アダストリアとの売上高の差をまったく考慮していないともいえる。
2015年8月期の売上高はジーユーが1400億円、国内ユニクロが7800億円である。
この差を無視して「トレンドに敏感なジーユーは成功したが、ユニクロは失敗した」と決めつけるのは早計だろう。

もともとジーユーとユニクロはその棲み分けを計画的にやってきたのだから。

ただ、国内ユニクロについては、やはり消費者に飽和感はあると感じる。
9割以上の消費者がユニクロの何らかの製品を所有しているといわれている。
2015年にユニクロ商品をよく買った筆者ですら飽和感がある。
特に目を引くような商品(価格面かデザイン面で)以外はユニクロの商品は要らない。

そういう意味ではルメール&ユニクロは一つの起爆剤だったといえる。

生産数量は通常のユニクロ製品に遠く及ばないだろうが、ルメールは発売と同時に完売した商品が何型もある。
今も店頭に残っている製品があるが、残っているのはほとんどがSサイズかXLサイズで、もっとも需要が多いMサイズ、Lサイズは完売している。

ユニクロが強化すべきはこういう「ルメール」のような取り組みではないかと思う。
ベーシック品に下手にデザイン性を加えすぎるよりは、ルメール的なコラボや新ブランドの投入の方が店頭は活性化するだろう。

しかし、ユニクロの悪癖は「欠品させない」である。
ベーシック商品ならそれでも良いが、ルメールのような商品にもそれをやろうとする。

ルメールの完売品のいくつかをわざわざ再投入している。
バカジャナカロウカ。

再投入があるとわかっているなら誰も定価では買わない。
待っていれば必ず期間限定値引きや、販売価格そのものの値引きがある。
しかも「欠品しない」のだから、急いで定価で買うのはバカのすることである。

かつて+Jが数シーズンで失速したのも同じ原因だと見ている。
+Jの最終シーズンは商品が店頭に余っていた。結局、最終値下げでシャツが990円にまで値下がりしている。

そうなってから筆者はいくつかの商品を買った。
ファッション要素が強い商品を「欠品させない」とこうなるのは当たり前である。
逆に言えば、ファッション衣料は「欠品させてナンボ」という要素が大きい。

今回の下方修正で、業界にはユニクロの凋落を望む声が溢れているが、それはちょっと希望的観測が過ぎるだろう。(笑)

しかし、ユニクロ、とくに国内ユニクロ事業は今後高い伸び率を示すことは難しいのではないか。
今後は横ばいから微減で推移するのではないかと見ている。
理由は多くの消費者がユニクロ製品に飽和感を抱いているのではないかと思うからだ。

記事では「ヒートテック以来の大ヒットがない」と書かれているが、毎年毎年5枚も6枚もヒートテックをまとめ買いし続ける人なんて存在しない。
すでにヒートテックを発売して数年以上が経過しており、愛用者はそれぞれヒートテックを10枚くらい持っているだろう。そこに毎年5枚ずつ買い足していくような消費行動をとる消費者はほとんどいない。

せいぜい、破れた物の買い替えか新色を1,2枚買い足す程度だろう。
バカみたいにヒートテックの在庫を抱え過ぎても保管場所にも困る。

となると、今後ヒートテックが爆発的に売れることは考えにくい。
ウルトラライトダウンもしかりだ。

飽和感を打ち破るためには「ルメール」的なファッション要素の強いブランドを投入し続けるしかないと考えるが、「欠品させない」体質がその発展を阻害するのではないか。かつて+Jが失速したように。

さて、そのあたりをどう処理するのだろうか。
「欠品させない」主義は柳井正会長の根幹みたいなものだから、これを捨て去ることはできないだろう。
人間は誰しも限界がある。筆者は「欠品させない」を捨て去れないのが柳井正会長の限界ではないかと常々見ている。