新たな販路としてネット通販を挙げる企業、ブランドは多い。
実際、新規ブランドを立ち上げたいとして昨年から何人か筆者に相談に来ているが、販路は直営のネット通販サイトを考えていると答えている。

リアル店舗を出店するよりも低コストで立ち上げられるネット通販は、新規事業者にも参入しやすい。

しかし、問題はネット通販を立ち上げたそのあとである。
どうやって集客するかである。ネット通販サイトを立ち上げただけでは集客はできない。

昨年何度かお会いした新規事業者がいるが、すでに通販サイトも立ち上げておられ、筆者に会う以前から事業を進めてこられていた。
自社の通販サイトの売上高をお訪ねしたところ、「ほとんどない」とのことで、集客の難しさを改めて思い知らされた。

業界では「オムニチャネル」を呪文のように年配層が繰り返しているが、通販サイトは立ち上げただけでは集客できないのである。今は通販サイトを立ち上げることが重要なのではなく、そこに如何にして集客するかが最重要課題となっている。
立ち上げるだけなら誰でもできる。

年配層には「立ち上げたら一安心」と考えている人が少なからずおられると感じるが、立ち上げただけではそんな無名のショップサイトにはだれも立ち寄らない。

新年こんな記事が掲載された。

楽天の危機…停滞鮮明で成長「演出」に必死、ヤフーの猛攻でトップ陥落
http://biz-journal.jp/2016/01/post_13136.html

 楽天の中核事業、インターネット通販の楽天市場がヤフーに追撃されて停滞色を強めつつある。楽天市場の窮状が鮮明になったのが、楽天の2015年第3四半期(7~9月期)決算だった。証券関係者を驚かせたのは、公表された楽天市場の流通総額のデータ集計方法が従来より変更されたからだ。

 15年から国内グループ流通総額と表示を変更。国内EC総額のほかに、Edy・楽天ポイントカード・クレジットカードの取扱高、楽天トラベルの予約流通総額が加わった。

しかし、楽天市場を中核とする国内EC流通総額は伸び悩んでいる。15年第1四半期は5079億円で前年同期比1.2%の減。14年まで2年間(平均16.7%)の高い成長がストップした。楽天市場の成長神話が崩壊した瞬間だ。

では、楽天トラベルを除いた国内EC総額はいくらになるのか。楽天トラベルは15年に入り20%以上の高い伸びを見せており、第2四半期は同24.8%増の1978億円だった。第3四半期も同程度の取扱高だったと仮定すれば、楽天トラベル分を差し引いた正味の国内EC総額は5000億円程度になる。この2年間、横ばいの状態ということだ。

とある。

この記事を要約すると、これまで高い出店料を取り続けてきた楽天市場が、「出店料無料」を打ち出したYahooに大きく水を開けられ始めたということである。
それをごまかすために上に引用したような、データ集計方法を変更している。
ちょうど、帳簿上だけでも黒字を生み出すためにワールドが決算の会計基準を変更したのと同じ手口といえる。

それはさておき。

記事中で、楽天の出店店舗数は14年12月期で、4万1442店とある。
また15年9月末時点のそれは4万2601店。14年12月末の4万1442店から1159店しか増えていない。
とも書かれてある。

楽天だけでざっと4万1000店の店舗があるということである。

一方、成長著しいYahooは、

15年9月末時点のストア数(出店者数)は34万店。14年9月末の19万店から15万店、80%も増えた。商品数は1.2億点から1.8億点に49%増えた。上半期にカルチュア・コンビニエンス・クラブ、ソニー、大丸松坂屋百貨店が新規出店した。

とある。

34万店で商品数は1・8億点である。

楽天とYahooだけで40万店弱の店が出店していることになる。
その他のアマゾン、ZOZOTAWNをはじめとする総合ショッピングサイト、ブランド直営通販サイトを合わせると膨大な数の店がすでにネット上には存在していることになる。

さて、これほどの数の店がある中で、何の知名度もない立ち上げたばかりのネットショップになぜお客が来ると思えるのだろうか。
そもそもネット検索をしたときに、そんな小資本の新規参入サイトが上位に表示されるわけもない。
だから、立ち上げただけでは集客は限りなくゼロに近いのである。

じゃあ、楽天やYahooに出店するという人もいるが、それこそ楽天で4万店、Yahooで34万店もある中で、新規参入者は確実に埋没してしまう。
Yahooは出店料無料だが、楽天の出店料はバカにならない。小資本の新規事業者の資金繰りを間違いなく圧迫する。

記事によると、楽天の出店料は

出店料は月額1万9000円からとされ、さまざまなオプションなどを付けると年間出店料は実質58万2000円に上るという(15年5月29日付楽天出店サポートマガジン『楽天逆転プロジェクト』メール版『楽天出店で失敗しないために』より)。

とされている。
ちょっと小金を貯めた程度の個人では楽天に出店できない。
出店したところで4万店に埋没してしまい、58万円強の年間出店料を支払ったあとに利益を残すことはできないだろう。
楽天に出店して利益があるのは上位何店舗かの店だけだというのは、広く業界に知れ渡った事実である。

リアル店舗に比べてはるかにコストが安いから、小資本の個店でも、消費者とダイレクトにつながれて損をしない程度に実験的に販売を行えるというような「牧歌的」な状況では、ネット通販は最早なくなっている。

リアル店舗と同等に大資本が牛耳る世界だ。
その中に、小資本の個店や、何のノウハウもない製造加工業者が何の対策もなく飛び込んだところで瞬殺されるのが落ちである。

如何に集客するのか。
そこをまるっきり考えずにウェブショップを立ち上げるのは自殺行為といえる。

楽天市場がなくなる日
宮脇睦
有限会社アズモード
2013-07-05