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南充浩 オフィシャルブログ

セール開始時期を前倒ししようが後倒ししようが売れる枚数は変わらない

2015年12月17日 考察 0

 THE FLAGからの課題について書いてみる。

セールの適正時期は?
http://goo.gl/uMIWcD

sale

この数年、喧しかった開始時期の後倒し騒動も何となくうやむやに終わり、ルミネと三越伊勢丹は他施設よりも1週間から10日間くらい遅く開始するような慣行になって落ち着いている。

はっきり言えば前倒しだろうが後倒しだろうがどっちでも良いのではないかと思う。

一消費者としては、入荷して一定日数が経過した死筋商品は、随時値下げして叩き売れば良いのではないかと思う。生鮮食料品はその方式である。
服は食料品と違って物理的に腐ることはないが、死筋商品をいくら長期間並べていても売れない物は売れない。
さっさと見切った方が得策だと思う。

そういう意味では、ユニクロやH&M、ZARAのようなSPAブランドが行っているこの方式の値下げが最も理にかなっていると感じる。

じゃあ、仕入れ専門店はどうすれば良いのかということになるが、駅ビル、ファッションビル、百貨店に入店しているブランドのほとんどは最早SPAである。だから、随時値下げすれば良いのではないか。
仕入れ専門店となると必然的に小型店、地域密着チェーン店にほぼ限定されてしまうから、これは顧客といかに関係性を深めているかということに尽きるのではないか。

関係性が深ければ、前倒ししようが後倒ししようが顧客は喜んでくれる。
またセールは太い顧客への感謝だと位置づけるととらえ方も変わるだろう。

後倒しといえば、業界を挙げてのわけのわからない騒動が起きたが、はるか以前から大阪のファッションビルHEP FIVEは遅めにセールを開始するのが通例だった。
ぎゃあぎゃあ言わずに、やりたければHEP FIVEのように黙って淡々と後倒しすれば良いのである。

ルミネのように「産地保護」なんてありもしないお題目をでっち上げて後倒しするような企業姿勢は到底賛同できない。

現在、国内の衣料品の97%が海外製造品となっている。
近年は中国のシェアが60%程度に落ち、ベトナムやカンボジアなどのアジア諸国の比率が高まっているが、国内製品が3%くらいだという事実は変わらない。

ルミネは、なるべく長期間、定価で販売することで「国内産地を守りたい」と言っていたが、実際のところ、ルミネに入店しているブランドの9割以上は海外製品しか扱っておらず、どこが国内産地の保護につながるのか理解に苦しむ。

中身のないきれいごとを言わずに、素直に「利益を確保したいから後倒しします」と言えば良いのである。
それにセールを少々後倒ししたところで、工場への工賃が上がることはない。
「セールが後倒しになって工賃が上がりました」なんて工場にはお目にかかったことがない。

イタリアやフランスは政府がセール開始時期と割引率の上限を決めているからこれを見習えという意見がある。

たしかに一考の余地はあるが、インターネットが発達した近年では、インターネットショップはその規制を受けずに早期セールを開始しているという意見がある。
もし、我が国でそういう規制を設けたとしても、インターネットショップやらなんやらで必ず抜け道を見つけ出す輩が現れるだろう。いたちごっこではないか。

ビジネスの視点で考えれば、値引きは一番強力な販促ツールといえる。
BtoCに限らず、BtoBでも同じだ。

最も早い時期に、最大限に値引きした企業は取引(売上)を増やしやすい、というのは好き嫌いにかかわらず厳然たる事実といえる。

そう考えると、前倒ししてセールを開始した方が売上高が見込みやすい。
ただし、前倒しすると効果が終息するのも早い。
12月にプレセールを開始して、1月2日から本セールを開始したら、終息するのは1月10日をはさむ三連休である。
それ以降は買い渋りが続く。

しかし良く考えてみれば、どの時期にセールを開始してもいつかは終息する。
筆者も含めて消費者はたくさん服を持ってるから、セールがどれだけ長期間続いても、買う枚数は変わらない。
まさかダウンジャケットを一人で3枚も買う人はいない。
セーターを5枚も買う人はいない。

なら、終息した後でも売れるような商品企画、商品構成を綿密に考えるべきだろう。

前倒しが良いか後倒しが良いかなどくだらない議論をしているのは労力の無駄ではないか。

この問題になると、イタリアでは、フランスでは、という声が業界から必ず挙がる。
アメリカを見習えという声は挙がらない。
アメリカは11月の末に大セールが行われる。

我が国は何かと欧米を見習えという人が多いが、一口に「欧米」と言ってもアメリカとイタリア・フランスではまったく異なる商習慣である。こういうときに「アメリカを見習おう」という声が出ないのは、恣意的にそのときどきの事案によって見習う先をセレクトしているからといえる。(笑)

結論としては売れるための商品企画、商品構成、体制作りができていれば、セールの開始時期は前倒しでも後倒しでもどちらでも良いのではないかと思う。
先にも書いたようにSPA方式で入荷してからの日数経過で在庫を値引きしていくのが一番わかりやすいと思う。




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