少し昔話をする。
バブル崩壊は91年とか92年と言われているが、結局、一般庶民の景況感が大幅に悪化したのはその5年後くらいのことである。
97年あたりからではないか。
バブル崩壊から大幅な景況悪化までは5年前後のタイムラグがあると考えて間違いないのではないか。そうするとバブルが崩壊した中国も景況感が目に見えて悪化するのは5年後くらいになるのかもしれない。

そんな97年か98年のころ。
山一證券やダイエーやそごうが倒産して景況感は最悪だった。

業界新聞に入社していた筆者は、あまり熱心ではなかったが、それでもときどき同業他紙を読んでいた。
もちろんアパレル各社の景況感も最悪だった。

そんな中、ある業界紙が販売員アンケートの結果を掲載していた。
設問は「売り上げ不振が続いていますが、その対策は?」というような内容だった。
何店舗かにこの設問でアンケートをして、その集計した結果を掲載していた。

その結果で一番多かった販売員の回答は
「これまで以上に店頭の接客をがんばる」みたいな内容で、正直言って筆者は、「何だこれ?何の対策にもなってないじゃないか」と感じた。
個人的にはそういう「気合い」とか「根性」とか「やる気」みたいな精神論は大嫌いである。

いくら気合いや根性ややる気があっても竹槍でB29を撃墜することはできない。

筆者は20年間、断続的に店頭販売をしている。
低価格店での販売しか経験しておらず、決して優秀な販売員でもないが
第三者的に見た場合、接客で売上高をカバーするのは限界があるということは紛れもない事実だと思う。

販売する商品が良くなければ、いくら熱心に接客をしても売上高は増えない。
良くない商品を無理やり口八丁手八丁で売るのは、それは詐欺にも等しい行為なのではないかと思う。

これまでの経験から言うと、良くない商品はどれほど懇切丁寧に勧めても売れない。
そこを上手く売りつけるのがプロの販売員なのかもしれないが、それを自分がやるのは気が進まない。
自分で店頭に立ってみると接客の限界というのを感じる。
商品力があってこその接客だと強く感じる。

一方、どんなに良い商品であっても店頭での見せ方が良くなければ売れない。
良い商品でも接客がなければそれほどバカ売れはしない。

接客もなしにバカ売れするのは、一目でそのメリットが分かる商品だ。

例えば、破格の値引きがされている商品である。

定価9500円のエドウインのジーンズが1000円に値引きされていて、それがわかりやすく陳列されていれば、黙っていても飛ぶように売れる。

昼間が暑くて、朝晩が肌寒い今の季節なら、着脱しやすいニットの中肉カーディガンなら売れるだろう。
それが割安感のある価格で提示されていればなおさらだ。

ただ、良い商品の中には黙っていてはその良さがまったく伝わらない商品もある。
そういうときには接客の有無が売れ行きを大きく左右する。

結局は商品力と接客は販売の両輪であり、どちらかが欠けても売上高は伸びない。
実際に断続的に売り場に立てば体感できる。

各ブランドの決算発表に出席する機会が年に何度かある。
またメディアで各ブランドの商況記事を目にする。

売り上げ不振のブランドの何割かは「店頭での販売力強化」を次期の方針に掲げるが、もしかしたら、商品力が落ちているのではないかと思うことがある。
販売経験のある外野とすれば、売り上げ不振の多くは販売力と商品力の両方の水準が落ちている場合が多い。

現在、不振で苦しんでいる大手総合アパレル各社の場合、明らかに商品力が全盛期よりも衰えていると感じる。

ピントのズレた商品を店頭投入したままで、いくら店頭販売の強化とか、販促強化とかの施策を打ち出したところであまり効果がないのではないか。

いくらパッケージを豪華にしたところで中身がお粗末ならそんな商品は売れるはずもない。ときどきそれでも売れる商品やブランドがあるがそれは長続きはしない。そんな小手先は短期間でメッキが剥げる。

売り上げ不振に陥ってるブランドは、もう一度、販売力とともに商品力も見直した方が良いのではないか。

ブランド論---無形の差別化を作る20の基本原則
デービッド・アーカー
ダイヤモンド社
2014-09-27



ブランド―価値の創造 (岩波新書)
石井 淳蔵
岩波書店
1999-09-20