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南充浩 オフィシャルブログ

産地のブランド化事業が成功しにくい理由

2015年10月28日 産地 0

 近年、「ブランド化」を目指す国内産地が増えてきた。
もちろん、古くから取り組んできた国内産地もある。

いずれの場合も成功しているのはほんの一握りである。

近年取り組んだところも何らかの成果がでるのは一握りだし、古くから取り組んでいるわりにはちっとも成果の出ない産地も多い。

その原因をいくつか考えてみたい。

まず、最大の原因は、ブランド化する目的がはっきりしていないことである。
消費者に向けてなのか、業界に向けてなのか、その両方なのかがはっきりしない。
どっちつかずの対策を練っている場合が多い。

目的がはっきりしないから有効な手段を採れない。

また旗振り役の人が明らかに間違った目的や手法に固執している場合も多い。
リーダーが選択した目的や手法が間違っているから正しい結果には絶対に結び付かない。

次に「組合」が枷になる場合も多い。
組合自体の存在意義は確実にある。
しかし、「組合」としてブランド化に取り組んだ場合、何かを決める際に組合員全員の総意に近いものが求められる。このため、意思決定が遅れるし、総花的でどっちつかずの毒にも薬にもならない決定がなされることが多い。

人間というのは人数が集まれば集まるだけそれぞれの利害得失と意見が異なる。
2,3人なら意思統一は可能だ。
しかし10人を越えるとかなり難しくなる。
組合員の総意ということになれば10人どころの話ではなくなる。
それだけ多くの人間だれしもがある程度反対しにくい内容にするなら、その内容は必然的に総花的な内容にならざるを得ない。

総花的な内容は、概してインパクトとかパンチに欠けており、内部の人間には満足かもしれないが、それを受け取った外部の人間に対しては何の共感も反発も期待感も与えない。
いわゆる、お役所仕事的な印象しか与えられない。

そして、ある事柄を「ブランドだ」と認識するのは、内部の人間ではなく外部の人間なのである。
外部の人間が「あれはブランドだ」と認識してその事柄は初めてブランドになる。
内部の人間がいくら「俺らはブランドだ」と叫んだところで、外部の人間に「ブランド」として認識されていなかったら、それは単なる自己満足なのである。

知られていないのは存在しないのも同じなのだ。

知られていない産地はブランドでもなんでもない。
「自称ブランド」と言ったところか。

さらに言うなら、産地全体、個々の産地企業の助成金・補助金依存体質もブランド化の成功を阻害している。

超有名デザイナーとか超有名ブランドとのコラボとか超有名タレントの起用とか、そういう非常手段を使わなければ「ブランド化事業」なんて一朝一夕にできるものではない。
非常手段なしでのブランド化は時間がかかると思った方が間違いがない。

行政からの助成金・補助金は大概が3年でひとまず打ち切られることが多い。
永遠に続けることはできないから、どこかで線引きをしなくてはならない。
3年で線引きされても仕方がない。

しかし、3年でブランド化が成功した例はあまりない。

3年では短すぎるのである。
初年度は手探り状態、次年度は昨年を踏まえての修正、3年目で修正した成果が出る。

しかし、3年目の成果といえどもそれほど大きな成果ではない。
さらに4年目、5年目、10年目という取り組みが求められる。

多くの産地企業、産地組合は助成金が打ち切られた後の4年目、5年目を続けない。
金の切れ目が縁の切れ目よとばかりに活動を止めてしまう。
なぜなら4年目以降の活動資金は自腹になるからだ。
結局、活動は助成金頼りに終始してしまう産地企業、産地組合が多いし、過去も多かった。

3年で目を瞠るような成果が得られることは稀であるにもかかわらずだ。

現在、ある程度の成功を収めているオリジナルブランドは、ほとんどの場合、個別の産地企業ががむしゃらに独自に活動したものである。
「組合で全員仲良く」なんて姿勢でブランド化に成功した事例はよほどの幸運に恵まれた数少ない例しかない。

このほか、産地企業各社は過去のガチャマン時代の恩恵を受けて資産持ちである場合が多く、それ故にハングリーさ、必死さが足りず、むしろ資産を保全するためにリスクを冒さないという傾向もある。

個人的な意見としては、産地や産地企業がブランド化するためには、どこか1社か2社がすさまじいパワーで独走、暴走、独断で牽引せねば不可能だと考えている。

しかし、その際にもブランド化する目的をしっかりと設定し、有効に資金投下しないことには単なる暴走で終わってしまう。

1社でも2社でもそういう企業が現れてもらうことを願っている。



地方は消滅しない!
上念 司
宝島社
2015-10-09


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