昨今、国内縫製工場とブランドやセレクトショップをダイレクトにつなごうというサービスが増えてきた。
ファクトリエ、シタテル、ヌッテなどであるが、各社ともその狙いと運用形態は少しずつ異なる。
その詳細はここでは触れないが、これらのサービスを報道する際に「OEM屋を中抜きすることで、製造コストが下がる」と説明されることがある。

SPAが盛り上がった当時の「問屋不要論」と似たような印象を感じるのは筆者だけだろうか。

問屋はすべて不要かというとそうではない。
大きな在庫を資金的に抱えにくい小規模店舗は問屋があった方が商品の追加補充がスムーズにできる。
メーカーは卸しっぱなしだし、小規模店舗は在庫を抱えにくい。
その間に立つのが本来の問屋である。
問屋が在庫をある程度備蓄するからメーカーは在庫を抱えずに済むし、小規模店舗は在庫を抱えずに追加補充が可能となる。

もちろん、SPA以前の時代のように問屋が多数乱立して成り立つ業界ではなくなったが、問屋をゼロにするのが正しいのかというとそうではない。

OEM(ODM)屋に対しても同じではないかと思う。

国内縫製工場の多くは、最新鋭設備が整っていて大規模な中国工場やアセアン工場よりも融通が利きにくい。

ジーンズを例にとる。

ジーンズを縫製する際には、生地を裁断して、リベットやファスナー、ボタン、革パッチなどの副資材を集める。
裁断した生地を縫製し副資材を取り付ける。
その際にボタンホールもかがらなくてはならない。

中国工場の場合、裁断と縫製以外の副資材を集める手配、ボタンホールをかがる作業なども一貫でできることが多い。
Aという工場に頼めば、指定した副資材を数量分集めて取り付けてくれ、さらにボタンホールも自社内でかがってくれる。

ところが、国内縫製工場の場合、副資材を集める機能もないし、ボタンホールのかがりも外部の専用工場へ出す。一部を除いて自社内で一貫生産はできないことが多い。

リベットはコレ、ファスナーはYKKのアレ、ネオバはアレ、革パッチはソレとブランド側が指定するとする。
そしてブランドは100本のジーンズの縫製を工場に依頼するとする。
副資材を100本分集めるのもそれらを工場に送付するのもブランド側の作業になるし、下手をするとボタンホール工場への移送指示もブランド側が送らねばならないこともある。

さらにいえば、洗い加工場もまた別に存在するからそこへの移送指示も必要になる。

1シーズンに50型とか100型も作るようなブランドがすべての商品を工場と直接取引したとするなら、ブランドのスタッフは疲弊してしまうだろう。

OEM(ODM)屋に任せた場合、こういう手配はすべてOEM屋が担ってくれる。
ブランド側の労力は軽減される。

国内生産をする場合の方がOEM(ODM)屋を噛ませることがブランド側にとってメリットとなる。

たしかにOEM(ODM)屋とブローカーが二重、三重、四重、五重に挟まって製造コストが割高になっている事例は山ほどある。
中にはODM屋のためのOEMとかOEM屋のためのOEMとかわけのわからないことになっている場合もある。

もう少しシンプルな形にする必要はあるとは思うが、OEM(ODM)屋の存在が悪なのではない。
むしろ、その存在がなくなるとブランド側も生産できなくなる。
そんな面倒なことをできるようなスタッフがどれほど現在のアパレル業界に存在するのだろうか。
おそらく早々に音を上げるだろう。

現在問題視されている根本的な理由は、人件費・経費削減によって企画力が低下したブランド側が安易にOEM(ODM)屋に企画を丸投げして同質化を招いていることにある。

ここを放置したままでOEM(ODM)屋を業界から追放(現実問題としてそんなことは不可能)したところで、製品の国内製造はさらに困難な状況に陥るだろう。

要はその存在が問題なのではなく、ブランド側の使い方に問題があるということである。

物事をシンプル化・ワンイシュー化して示すことは広く理解を得やすい。
しかし、物事は必ず多面的なので、何かをすれば必ず別の副作用が生じる。

工場とブランドとの取り組みはもう少し多面的に考えるべきではないか。
そうでないと「角を矯めて牛を殺す」ことにもなりかねない。