基本的に安売りは集客しやすい。
これはいくらモノヅクリガーの人たちがわけのわからん屁理屈をこねくり回したり、偽善クサイ物語をでっち上げたところで、変えることができない事実である。

今日もその実例が報道されている。

 
マックハウス、12年ぶりに客数が増えたワケ

「3ケタ商品」と「店舗改革」が奏功
http://toyokeizai.net/articles/-/88689

集客の目玉は、「低価格プロジェクト」と銘打って3ケタ商材(1000円未満)にこだわった、低価格商品の大量投入だ。白土社長は「SPA、ファストファッションの競合店に負けない価格設定の商品を、大量投入できた」と自信を示す。「リアルスタンダード」や「フリーネイチャー」などのPB(プライベート・ブランド)商品を中心に、290円(税別)のキッズTシャツやメンズ、レディスの低価格シャツが売れた。採算度外視の単なる安売りではなく、低価格プロジェクト全体で粗利率50%を確保できているという。

990円(税別)で限定発売したストレッチジーンズは、価格訴求だけでなく価値訴求も徹底。

とある。

まあ、ここでは生産体制に対するあれこれは議論の対象とはしない。
この価格で粗利率50%を確保しているのだからどれほど工賃が安いかは少し想像するだけで容易にわかる。

990円でそこそこに品質の良いストレッチジーンズがあって、それを周知拡散できれば、それなりの集客はできる。当たり前のことだ。
990円とバカにするが、100人に売れれば10万円の売上高になる。
1店舗で平日10万円を売れる洋服店がいまどきどれくらいあるか。
そして上手く集客できれば1日100人に販売することは不可能ではない。

品質が良くて価格の安い商品を集めるというのは、店舗としては有効な手法であることはマックハウスの例を見ても異論の余地はない。

自店をそういう風に割り切って品揃えするのも一つの経営手法である。
そういうやり方が好きか嫌いかは別として。

じゃあ、高く売るためにはどうしたらよいのか。

筆者は個人的に、某有名デザイナーが言うように「安い物は誰かが泣いている」という情緒に訴える手法は嫌いである。そういう某有名デザイナー自身が外資系低価格SPAとコラボをしているのだから、何を言っているのかと思う。
それにその低価格商品を生産することで生計が成り立っている人だって存在する。

じゃあ、国内工場を使っている中価格帯の国内ブランドは人道的な取引をしているかというとそんなことはない。
1枚200円とか150円でカットソーを縫ってくれと依頼するブランドなんて掃いて捨てるほどある。
全1500枚で利益が1枚当たり50円しかないオーダーをしてくるブランドもある。

グローバル低価格SPAブランドのやり方を非難できる資格がどこにあるのだろうか。

それはさておき。

高くても買ってもらえるようなブランド、店にするにはどうすれば良いのかということを業界こぞって考え始めているのが、この15年間ではないだろうか。

90年代後半ならそれはタレントとのタイアップ、ドラマへの衣装提供だった。
あのタレントが着ているから(実際の私服ではないから今から考えるとお笑い草だ)という理由で茶色いレザーダウンジャケットとか水色のリュックが飛ぶように売れた。

2005年以降この手法はあまり効果的ではなくなった。
多くの消費者がタイアップでの着用はプライベートの着用とは異なるということを理解したからではないかと思う。

メイドインジャパンを全面に打ち出すことか?
今、これを多くのブランドがやろうとしている。
産地企業もやろうとしている。

たしかにメイドインジャパンは価値の一つではあるが、メイドインジャパンなら何でも売れるかというとそんなことはない。
デザインが不細工で価格が高くて品質が悪ければいくらメイドインジャパンでも売れない。
わざわざそんな商品を買いたい消費者なんていない。
筆者ならこんなメイドインジャパン商品は絶対に買わない。

逆にデザインが良くて品質も高くて価格が安ければ中国製だろうとアフリカ製だろうと売れる。

トレンドを素早く取り入れることだろうか?
その手法を多用して同質化を招き、パクリ合戦を激化させたのが現在ではないか。
それに外資系グローバルSPAにその勝負で勝てるのか?

機能性だろうか?
たしかにこれはある程度有効かもしれない。
機能性繊維は高機能になればなるほど高価格になるから必然的にこれを使った洋服の価格も高くなる。
しかし、よほどの数量を生産しない限り、高機能繊維とモノポリーを結ぶことはできない。
モノポリーを結べないということは、機能的には同質化が起きやすいということである。
あちこちのブランドからほぼ同じ価格で同じ機能の洋服が発売されるということになる。

これらを越えた取り組みが必要だということは多くの人が気が付いている。
そのやり方を模索している段階だといえるだろう。

もしそのやり方を見つけたブランドやショップが増えたときに、もしかしたら国内のアパレル産業は次の段階へ登れるのかもしれない。まあ、これは甘い夢想かもしれないが。

ただし、見つけられない場合は、国内のアパレル産業はますます沈むだろう。
現在の業界はそんな瀬戸際にあるように感じるのだが、いささか杞憂が過ぎるだろうか。