先日、繊研新聞にこんなコラムが掲載された。

国内縫製工場とアパレル側との立場が端的に示されている。

客寄せパンダ
http://www.senken.co.jp/column/eye/panda1014/

取材先の国内縫製工場を大手量販店のバイヤーが久しぶりに訪れ、「服を作って欲しい」と言ってきた。しかし、その縫製工場は量販店が要求する大ロットを生産する能力はない。それでも「何とか縫ってくれ」と懇願された。

 理由は「店頭で国産を打ち出したい」から。どうやらオーダーに継続性はなく、いわゆる〝客寄せパンダ〟の発想で国産フェアをやろうというものだった。海外生産に目を向けていたのに、円安になって急に戻ってきて、しかもスポットの仕事。その経営者ははっきりと断った。気持ちは痛いほど分かる。

 ただし、継続的なオーダーがあれば仕事を請けていいのか、疑問が残る。最初は少ない仕事から始まり、徐々にその量販店からのオーダーの比重が増え、最終的に専属になる可能性もある。そうなると次第に工賃抑制の圧力が強まる。コストが合わずに断ると仕事を減らされる。最悪、全て切られる可能性もある。

 国産を守る意識を前提に、適正工賃で継続的に仕事を出す気があるか。そこを見極めないといいように使われるだけになってしまう。

とのことで、短文なので全文を引用した。

ここでいう量販店とは、イオンやイトーヨーカドーなどのGMSなのか、ユニクロや青山のような専門量販店なのかはっきりわからない。
しかし、どちらにしてもあの店頭単価と生産数量を国内縫製工場が受けられるはずがない。
スポットならなおさら断るべきだし、継続的なオーダーでも断るべきだろう。
もし受けるなら「うちの生産キャパはこれだけ。これ以上の枚数は受けられない」と宣言して数量限定で受けるのがベストである。

それにしても安易な国産衣料で客寄せができると考えている量販店も相当におめでたい。(笑)
もしこれがGMSだとするとそんな安直な発想しかできないから業績が悪化するのである。

さて、記者の指摘はもっともであるが、「国産を守る意識」なんて量販店にあるはずがない。
それを期待する方が間違いである。

じゃあ、中価格帯以上のアパレルブランド、百貨店はどうかというとこれも極一部を除いて「国産を守る意識」なんてないだろう。

多くのアパレル、流通業者にとって洋服の縫製地なんてどこでも良くて、品質が良くて工賃が安い国が最適だと考えているのが実情である。

そういえば、いわゆる中価格帯のドメスティックブランドのOEMを手掛けたことのある業者は、商品未引き取りや不当返品、不当値引きなんて普通にされたというし、1500枚のオーダーで1枚当たりの利益が50円しかなかったということもあった。

工場へのこういう仕打ちはつい最近始まったのではなく、20年も30年も前から何も変わっていない。

だから縫製に限らず、国内の製造加工業者は自衛するほかない。
十分な工賃が見込める中価格帯以上のブランドと組むか、自社オリジナル製品を開発してそちらで利益を得るかである。
もちろんどちらの道も一朝一夕にはいかない。

また運良くそういう取り組みが成功をおさめたとしても10年後~20年後には後継者問題が浮上する。
後継者が得られなければその時点で良くて廃業、悪くすれば倒産になる。
まあ、こちらはまた別の問題になるのだが。

さてこのコラムを書いた記者の懸念、指摘はまさしくその通りなのだが、工場側はこんなことを今更新聞社から言われねばならないほど、現状を把握していないのかと疑問を感じてしまう。

最初は少ない仕事から始まり、徐々にその量販店からのオーダーの比重が増え、最終的に専属になる可能性もある。そうなると次第に工賃抑制の圧力が強まる。コストが合わずに断ると仕事を減らされる。最悪、全て切られる可能性もある。

こんな状況は今に始まったことではなく、何十年も前から続いている。

少なくとも業界紙記者になった18年前にも掃いて捨てるほどあった。
80年代、70年代のことは見聞きしていないが、おそらくあっただろう。

仮に18年前から始まったとすると、各工場はこの18年間で何を学んだのだろうか。
同じ目にあって潰れた同業他社も多数見聞きしてきたはずだが、その時に何も感じなかったのだろうか。
なぜ、18年も時間があったのに自衛に乗り出すなり、廃業するなりを選ばなかったのだろうか。
時間も研究事例もたっぷりあったはずである。

またメディア側も工場を被害者的にいつまでも扱い続けるのが良いのだろうか。
20年近く何の対策もしていないのは自己責任ではないのか。

以前、地方で製造加工業に携わっている人から「地方には金も知恵もない」と言われた。
まあ、個人的な感想をおっしゃったのだと思うが、そんなメンタリティが主流であるなら、今後、地方の製造加工業者が生き延びることは不可能だろう。

知恵がないなんて開き直られても「じゃあどうぞ廃業か倒産してください」としか言えない。
ましてや「金もない」んだから、さまざまな業者に対策を練ってもらうことすらできない。
「ご自分で何とか考え付いてください。ぼくらは知りませんよ」と言うほかない。

将来的には、一部の意欲ある製造加工業者だけが残って、他はなくなる。
これがもっとも現実的な未来像だと確信している。



製造業が日本を滅ぼす
野口 悠紀雄
ダイヤモンド社
2012-04-06