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南充浩 オフィシャルブログ

製造加工業者のブランド開発が成功しない理由

2015年9月30日 未分類 0

 産地の製造加工企業が自社オリジナルの製品ブランドを立ち上げる事例が増えているが、実際のところ、ある程度軌道に乗ったブランドは少数で、大多数は失敗している。
それはなぜか。様々な要因があるが、ブランドの組み立て方という点において、産地ブランドが失敗する理由を考えてみる。

自社で製造している生地や、自社の染色・加工技術を生かして、それで製品を作るというのが産地ブランドの特色である。

製品ブランドを組み立てる際には2つの考え方がある。

1、自分(もしくは自分たち)が好む物、自分たちが使用したい物を作る
2、自分たちの好みは関係なく、自社の特色と市場規模を照らし合わせてそこに合致した製品を作る。

という2つである。

どちらが良くてどちらが悪いということはない。
どちらも正しく、ブランドの組み立て方が異なるということだけである。

産地企業のブランドが上手く行かない理由の一つに、この2つを経営者や幹部がごっちゃにしてしまうことにある。

どういうことかというと、たとえば、ハンカチ生地を製造していた阿江ハンカチーフが薄地生地を作る技術を応用してゴスロリ向けの日傘ブランド「ルミエーブル」を立ち上げて軌道に乗せた。

ここは、自分たちの持っている技術と、どこに市場性があるかを念入りにリサーチしてブランドを組み立てた。
社長は男性である。おそらくゴスロリの趣味はない。

市場性があると見込んだ分野に向けてそれに合わせた商品を投入している。
だから成功したといえる。

もし、社長が自分の好みを中途半端に導入していたらおそらく失敗していただろう。
ゴスロリ向けの日傘ブランドなのに社長が「ワシはこういう傘が欲しいから、これも1型製造しよう」などと言って、英国トラッド調のデザインの傘を1型だけ挿し込んだとする。
こうなるとブランドのテイスト自体がブレる。何のブランドなのかがわからなくなってしまう。
テイストがブレたようなブランドは消費者から欲しがられない。

実際に筆者も産地企業の製品作りの会議に参加したことがあるが、レディース向けのエレガンスなアウターを製作すると決定しているのに、年配の男性社長が「ワシはこんなデザイン嫌いだから変更したい」みたいなことを平気で言う。
コンセプトとターゲットに応じた製品デザインを考えねばならないのに、おっさんの好みなんてクソの役にも立たない物を持ちこんでどうするのか。
しかも女性向け商品であるから、おっさんの好みなんて関係ない。どうでも良いのである。

こういうことを平気でやってしまう。
まあ、産地企業に限らず、いわゆるメーカーと呼ばれる企業でさえこういうことがまかり通る場合がある。

それならば最初から「自分たちが使用したい物」というコンセプトでブランド開発をすべきだったのである。

この区別ができない経営者や幹部がそろっているなら、その企業の製品ブランド開発はかなり失敗する確率が高いだろう。

短パン社長として有名な奥ノ谷圭祐社長が企画製造する「Keisuke Okunoya」というメンズカジュアルブランドがある。
SNSでしか注文を受け付けないという無店舗販売ブランドである。

このブランドは、短パン社長が完全に自分の好みしか反映していない。
そういうブランドの組み立て方もある。

自分の好きな商品だけを企画製造したいなら、最初からそうすべきだし、市場性を考えてブランドを組み立てたのなら己らの好みなんて極力排除すべきで、仕事と趣味はきっちりと線引きをするのが常識的な態度である。
そのどちらも徹底できないんだったら、製品ブランド開発なんて止めてしまえば良い。
その方が周りも振り回されなくて幸せだ。

この次に多い失敗理由が「日本製しかアピールポイントがない」という点である。

日本製=高付加価値ではない。
日本製ブランドなんてすでに掃いて捨てるほどある。
日本製というだけではすでに消費者から選ばれるポイントではなくなっている。
日本製+プラスアルファの切り口が必要なのである。

先日、某合同展を主宰する人と雑談をした。
合同展以外に、製造加工業者の開発した日本製ブランドを集めて催事販売するという取り組みも行っている。
その催事販売だが、しばらく前に休止したという。

その理由が、全業者を集めて会議をしたところ、日本製というだけの打ち出ししかないということになり、そこに限界を感じて休止することになったそうだ。

その彼によると、日本国内ではもう日本製というだけではブランドは売れていない。そこにプラスアルファの要素があるブランドが売れている。日本製というだけである程度の価値を見てくれるのは、アセアン地区くらいだろう。それもあと何年もは続かないとのことである。

おそらくアセアン諸国でも「日本製」ということを価値だと感じてくれるのは長くても5年くらいだろう。
それ以降は、今の国内と同じでプラスアルファの要素が求められることになる。

今、ブランド開発に取り組んでいる国内の製造加工業者は、上で述べた点についてもう一度よく考えてみてもらいたい。

当てはまっているならぜひ修正して、ブランド開発に成功してもらいたい。




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