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南充浩 オフィシャルブログ

衣料品の国内生産をめぐってあれこれ考えてみた

2015年9月18日 未分類 0

 とりとめもないが、衣料品の国内生産を巡る現状についてまとまりなく考えてみたい。

製造側、ブランド側によっても見方が違うし、それぞれの側でもまた各企業によって見方が異なる。
その中のいくつかを紹介することで、全体を考える何かの手掛かりになるのではないかと勝手に思っている。

先日、小規模なカジュアルブランドの展示会にお邪魔した。

そのブランドが言うには、「国内縫製工場はどこも満杯な上に、ほんの少しベーシックから外れたデザインで『こんなものは縫えない』と言ってくる。工賃も上がっているし、再度、アジア縫製を見直す必要がある」とのことである。

物事は需給バランスなので需要が増えれば価格が上がる。
工賃上昇は仕方がない側面がある。

それより個人的に深刻だと感じたのは、超ベーシック品しか縫えないと言いだす姿勢にある。
もしこのブランドがもっとたくさんのロットを発注できたら態度が異なるのかもしれないが、現在の国内ブランドで大量発注できるブランドがどれほどあるのだろうか。

彼らの言を借りるなら、「いわゆる前開きのないズボンで、両脇に切り替えが入ったものでも『縫えない』という」らしい。
それこそ、中国工場ならわけもなく縫えるレベルのデザインである。

すべての国内工場がこうではないが、こういう工場はベトナムやミャンマー、アセアンでの生産体制が整い次第、おそらく受注は急減するだろう。

工賃云々ではなく、ブランド側からすれば使いづらい。

工場側からすればまた反論もあるだろう。

外野の立場である筆者から見ると、国内工場には技術的にも商売の姿勢的にも相当にバラつきがある。
これは縫製だけではなくて生地製造、染色加工、整理加工についても同じだと感じる。

いわゆるクールジャパンが喧伝するような高品質な工場は実際にある。
その一方で、クオリティの低い工場も相当数ある。

一概に日本製だからといって必ずしも高品質とは限らないのが実情である。

反対に中国製でも高品質の商品もある。

一方で、縫製工場からすると、受注枚数は増えているが1枚当たりの工賃は下げられる傾向にあり、「やっていられない」という雰囲気もずいぶんと蔓延している。

アパレルもそうだし、小売店もそうで、なぜだか売れれば売れるほど、1枚当たりの単価を安くしたがる。

例えば、1000枚くらい売った小売店があったとすると、その小売店はアパレルに対して必ず「値入率を下げてくれよ」という。これを言わない小売店の方が少ないだろう。
じゃあちょっとサービスしようかということになるが、良く考えてみると「たくさん売れる人気商品をどうして値下げしないといけないのか」ということになる。

この商品がもっと売れたら、さらに値入率の低下を提案される。

アパレルからすれば「やっていられない」ということになり、アパレルは直営店化を考え始める。

これと同じことがアパレルと縫製工場にも起きる。
1000枚発注するから安くしてくれ、1万枚発注するからもっと安くしてくれ、ということになる。

縫製工場側からすると生産数量は増えるがちっとも儲けは増えないということになる。
いわゆる薄利多売状況である。

もちろん中にはそうでない工場もある。

縫製工場がすべて満杯なのかというとそうでもないようだ。

先日、展示会にお邪魔した子供服ブランドによると、ちっとも仕事が増えない縫製工場もけっこうあるという。
なにせ縫製工場をウェブ検索してもほとんど出てこない。
縫製工場を探しているブランドはけっこうあるが、知り合いから紹介してもらう以外に探す手段がないというのが現状である。

また、先日、このブログの読者であるという縫製工場の方からメールをいただいた。

一読してまだ対策やアドバイスを思いつかないでいるのだが、そこも相当に厳しいようだ。
受注も増えていないようだ。

となると、縫製工場は自衛策として高い工賃の受注先を探すか、自社オリジナル製品を立ち上げるかだ。
どちらもそれなりに困難が伴う。
とくにオリジナル製品を売るのはまた違ったノウハウと努力が必要となる。

なんとなくだが、このまま国産回帰が続くとは思えないし、国内縫製工場の多くが潤うようになるとも思えない。

結局のところ、縫製工場自身も自衛しないといけないし、勝ち残る工夫をしなくてはならないということにもなる。

それは各ブランドにとっても同じことであり、それにしてもこの世で生きるのは厳しいことである。
筆者なんてしょっちゅう絶体絶命のピンチである。

筆者もいつまで生き延びられることやら・・・。
まあ、それほどこの世に強い執着はないのだけど。




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