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南充浩 オフィシャルブログ

太めシルエットの復活でさらに多様化が進む

2015年9月16日 未分類 0

 店頭ではこれから秋冬商戦が本格化するが、ブランド展示会は現在、来春夏展が開催されている。
業界新聞記者当時ほどは多くのブランドを訪問していないが、いくつか訪問した中でも来春夏展はメンズ・レディースともにビッグシルエット、太めシルエットがトップス・ボトムスともに提案されており、一部ブランドでは今秋からこれが本格化しているように見える。
とくに今秋のファッション雑誌はメンズもレディースもヤングもアダルトも一様にビッグシルエットを押している。
まあ、ファッション雑誌特有のキャンペーン臭が漂っているのだけども(笑)

筆者はトレンドに疎い上に、ファッショニスタではないので太めに関する解説は畏友の釼英雄さんにお任せする。

太めが復活しそうな予感
http://blog.goo.ne.jp/souhaits225/e/60d955e2f4f2d3d222c66f7424848a2d

美麗な写真がふんだんにあるのでかなり参考になるだろう。

太め、ビッグシルエットといえばバブル全盛期が思い出される。
実際のところこのシルエットは幾分緩和されたものの、最終的には2000年ごろまで継続している。
90年代後半とか2000年ごろのジャケットをお持ちの方は見直してみてもらいたいのだが、かなりアームホールが大きいはずだ。

筆者の所有していたそのころのコート、ジャケット類はアームホールが大きくて袖が太かった。

リメイクして着るという方法も考えたが、新しく格安品を買うよりリメイク費用の方が高くなりそうなので先日捨てた。
使用素材、とくにウール関係の素材は、今の商品とはくらべものにならないくらいに上質だったのでもったいなかったのだが。

個人的に今回考えてみたいポイントは2つある。

1、復活した太めシルエットが大ブームになるのかどうか
2、太めシルエットの洋服を着る際にはどんな注意が必要になるのか

である。

1に関していえば、単なる個人的な展望になる。

個人的展望でいうなら、バブル全盛期ほどにだれもかれもが太目シルエットになることはありえないのではないかと考えている。
たとえば、メンズのスーツは引き続き細めシルエットが主流のままだろう。
バブル期のようなダボダボのソフトスーツが一般サラリーマンに取り入れられることはないと見ている。

以前にも書いたように、ファッショントレンドが生まれても、我が国はすでに全員がそれに従うような市場ではなくなっている。
ガウチョパンツを買った人が、違う日には細めのスキニーパンツやレギンスを穿いている。
ナチュラル系テイストが好きな人は年がら年中ナチュラル系だし、フェミニン系が好きな人は年がら年中フェミニンである。
こういう人々はミリタリールックが流行ったからといって、突然ミリタリールックを着用し始めるようなことはない。

ある程度、需要は分散化しており、それぞれのテイストの愛好者はそこから突然大きくテイストを変更するようなことはあまりない。

これはとりもなおさず、我が国市場が成熟化したということだろう。

2000年ごろまでは、年配層がほぼファッションとは無関係・無関心という人が多かった。
ファッション=若者、ファッション=めまぐるしく変わるトレンドという構図だった。

現在ももちろんそういう構図は生きているが、それだけではなくなっている。

現在の65歳は2000年当時は55歳、90年当時は45歳だった。
まさにバブル期を謳歌した人が今の年配層となっている。
2000年ごろの年配層とはファッションへの関心は格段に異なっている。

これは全年代に言えることであり、今の50代はバブル期に30歳手前だったし、今の40代はバブル期に学生時代を過ごしていた。
それぞれにそれなりにファッションに対して自分のスタイルがある。良くも悪くも。

バブル期のファッション需要は若い人にしかなかったような印象があるが、今では全年代にそれなりのファッション需要はある。当時とは洋服の価格は格段に異なるが。

となると、若者層が飛びつくようなトレンドが市場を席巻することはちょっと考えにくい。
また若者層の中にもそれなりに異なるテイストを支持する人もいるから、バブル期みたいに全員が同じトレンドを向くことは考えられない。

これが大手アパレルが苦戦している原因の一つにもなっているのだと思う。

2についてだが、これは自分自身も含めてのことである。

上下ともにビッグシルエットでそろえるのは多くの人にとって危険だと感じる。
かつてストリートでヒップホップスタイルが流行ったときに上下ともにダボダボの服を着ていたが似合っている人はそんなにいなかった。

上下ともにダボダボだと見るからにだらしない。
だらしないから筆者はかつてのヒップホッパーが嫌いだった。

どちらかを細めにした方がまとまりが良いと思う。

これがモデル級に背が高くてスマートで足が長くて顔が小さくて、顔の中身がイケメンなら話は別だが、そんな人は少数しか存在しない。

多くの人はスタイルが悪くて顔が大きくて、顔の中身も残念である。

筆者は顔がかなりデカい。

パンツが太目ならトップスはこれまで通りにジャストサイズかタイトなものにするとまとまりが良い。
トップスがルーズならボトムスはせいぜい細身ストレートくらいにすべきだろうと思う。

先日、訪問したメンズカジュアルブランドのルック写真を見ていたら、ブランドのデザイナーが、「ちょっとモデルの選択に失敗しました」という。
男性モデルが割合にがっちりとした体型だったのだ。

このモデルがジャストサイズの服を着ているととてもかっこいいのだが、流行のビッグシルエットのトップスを着ているととてもダサい。
それは、ダボダボの半袖シャツを着ているサラリーマンのオッサンみたいに見えるからだ。

また顔の輪郭がガッチリし、肩幅が広くて胸板の厚い彼がビッグシルエットを着ると、その下の引き締まったウエストなどがすべて隠されてしまい、単に「格闘家みたいにゴツいオッサン」か「もしくは肥満したオッサン」にしか見えなくなる。

ブランドのデザイナーが「ちょっと失敗しました」というのはそういうわけである。

というわけで顔がデカくて胸板の厚い筆者はビッグシルエットのトップスは避けるべきだろう。

ビッグシルエットのトップスをダボっと着て様になるのは、顔が小さくて華奢な体型の男性に限られるというのが結論である。

写真99

(今月号で見つけたビッグシルエットのコーディネイト。顔がデカくて胸板の厚い人が真似をすると超危険)

もし、筆者や筆者に類したオッサン連中がビッグシルエットを取り入れたいと思うなら、ボトムスを少し太くする程度にすべきだろう。
一番穿きやすいのは、腰回りと太ももにゆとりがあってつま先が細くなったテイパードシルエットの太目パンツだろうか。

つま先までドカンと太いパンツは背が高くて足が長くないと似合わないしトップスとのバランスもとり辛い。
下手したら学生時代に諸兄が穿いていたボンタンみたいになってしまう。
いっそのことその上は長ランみたいなのを着てみたらどうだろう。高校生時代に戻ったように感じて新鮮なのではないか。(笑)

冗談はさておき。

今回の太めシルエットは、久しぶりの大きなトレンド変化といえる。

しかし、かつてのように細めシルエットが絶滅するとは考えにくい。
細めシルエット、ジャストサイズシルエットはこれからもベーシックとして残るだろう。

ただ、ピチピチ一辺倒からは解放されるのではないかと思う。

太めシルエットの復活で着こなしは一層の多様化が進むのではないか。
太めシルエット、バブル期ファッションが復活したことで、戦後のトレンドはこの20年間ですべて復活したことになる。今後はそれぞれが少しずつミックスしながら、それぞれの愛好家がすみ分けるのではないだろうか。

まあ、そんな雑感である。




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