普段フェイスブックで交流している人たちにはイトキン関係者が多いので彼らのことを考えるとちょっと胸が痛むのだが、それでもやっぱり紹介することにした。

ワールド、TSIの大量リストラが報じられているが、それ以外でもかつての百貨店向け大手総合アパレルは厳しい状況にある。
コムサ・デ・モードなどを展開しているファイブフォックスは同社の公式サイトによると、2013年8月期売上高は887億円にまで低下している。2008年8月期には1559億円の売上高だったからほぼ半減に近い。
さらにいうと、2014年度8月期は発表されていないが、この887億円よりも低下しているのではないかと業界では推測されており、2015年8月期でも回復しているとは考えにくい。

収益の悪化したオンワード樫山も業界からは百人単位のリストラがあるとのうわさが聴こえてくる。

6月末でバーバリーを失った三陽商会だが、撤退した7割の店舗を「マッキントッシュフィロソフィー」に置き換えることに成功した。
この同社のがんばりは賞賛に値するが、「他に置き換えられるブランドがなかった」とか「これまでの三陽との付き合い」とかそういう百貨店側の消極的な理由もあったと報道されており、「マッキントッシュフィロソフィー」が成功するかどうかは次年度以降の推移を見てからでないと評価できない。

バーバリーなき三陽商会が
売り場を7割守れた裏事情
http://diamond.jp/articles/-/75958

そしてこの記事は

同条件での取引を決めた百貨店の関係者も、「損してまでは付き合えない。半年か1年入れてみて駄目だったら場所の変更、売り場面積の縮小、歩率の引き上げといった交渉に入る」という。三陽商会は最悪、条件変更はおろか、マッキントッシュとしての売り場を失う恐れすらある。

(中略)

三陽商会の本当の戦いは、まさしくこれから始まる。

と結ばれている。

そういう中にあってほとんど報道されなかったのがイトキンである。
しかし、業界内からは相当に苦しいという噂が絶えなかった。

「社債償還」に苦しむ4期連続赤字の「イトキン」
http://facta.co.jp/article/201507002.html

ファクタのことだからかなり綿密に裏取りをしていると推測される。
記事内容にほぼ間違いはないだろう。

2015年1月期は2桁減収で56億円もの最終赤字となった。前期も40億円の赤字であり、実に4期連続の赤字である。商品力不足から在庫が膨らみ、セール時期の値引き幅が広がる傾向にある。業界ではかねて辻村章夫社長(59)ら経営陣の手腕を疑問視する声があったが、ここにきて経営不安説が囁かれ始めた。

メーンバンクの三菱東京UFJ銀行はすでに債務者区分を引き下げ、「事業戦略開発室」(通称ジセンカイ)に移管した模様。「ジセンカイ」とは同行の大口問題融資先の再生を手がける専門部署で、今後は銀行主導の再建策が練られる可能性が高い。

(中略)

「もっとも状況が厳しいのがイトキン」というのが業界の見方である。

8月末には3年前にみずほ銀行の保証付きで発行した23億円の社債償還が控える。リファイナンスに向け銀行の協力が不可欠だが「いまの業況では、はいそうですかと応じる銀行はないだろう」(取引行関係者)。

ちなみに同社の創業は1950年。ワンマンで知られた創業者の辻村金五氏は12年に死去。長男浩一氏(68)が会長、次男章夫氏が社長を務めるが、実質的に経営を取り仕切るのは昭和15年生まれの松本煕副社長ら先代の番頭たち。

とある。

正直に言って、今のイトキンにはヒットブランドが見当たらない。
財務などの評価はお詳しい方に任せるとして、展開ブランドを比べてみると、たとえばワールドやTSIは単体ならばそれなりに売れるだろうというネームバリューのあるブランドがいくつかある。
不採算ブランドを廃止して、好調ブランドだけに特化すれば売り上げ規模は小さくなっても企業自体の再生は可能だ。

となると、ヒットブランドを持たないイトキンはかなり厳しい状況にあるといえる。
安定的な顧客を持っているのは「ヒロコ・コシノ」くらいではないだろうか。
ただ、「ヒロコ・コシノ」は全社を救うほどの大ヒットブランドではないし、今後もなりえない。

90年代から2005年まで隆盛を謳歌してきたこれらの大手アパレルだが、今後、企業存続はできても短期間のうちに隆盛を取り戻すことはありえないと考えられる。
すでに絶対王者となったユニクロに対して、後追いをするという「逆ランチェスターの法則」を仕掛けるしか策を持てなくなっている。

もう一度まとめると、ランチェスターの法則によれば、

小規模な企業は、個性的な打ち出しで一点突破を図ることが最良の戦略だとされている。
一方、物量に優れる強者は物量を生かした後追いが最良の戦略だとされている。

しかし、この数年間、大手アパレル各社がやってきたことは、圧倒的物量を誇るユニクロを後追いするという最悪の選択に終始してきた。

「ユニクロが価格を下げたからうちも下げる」とか「ユニクロでバカ売れしたあの商品と同じ素材をくれ」とか。

これでは負け続けても当然である。

そして、今度は絶対王者ユニクロも国内市場では飽和点を迎えて今年6月から変調を来しつつある。
売上高がいきなり半減するようなことはないだろうが、国内の売上高はこれ以上は増やすことは難しい。
あとは海外でどう増やすか?新ブランドを立ち上げてファーストリテイリングとして国内売上高をどう増やすかという課題に取り組まねばならないだろう。

大手アパレル各社が凋落し、ユニクロも変調を来しつつある、そろそろ次の時代の覇者となる企業が登場するのだろうか。

次の時代の覇者となるのは必ず異業種出身の経営者が創設した企業か、異業種から参入した企業になるだろう。業界内の既存の人材、企業は最早そんな力を持っていない。