7月8日に発行された「週刊東洋経済臨時増刊 動き出す世界の名古屋2015」で4P記事を執筆させてもらった。

名古屋の百貨店、ファッションビルの現状と今後をまとめている。
土地勘のない名古屋だが、みなさん取材に協力的だったので思ったほどの困難さはなかった。
感謝である。

取材を通して印象的だったのが、各百貨店・ファッションビルとも共通して「同質化が問題だ」と考えていたことである。

改めて指摘するまでもなく、名古屋に限らず、全国の百貨店・ファッションビルの扱うブランドはほぼ同じであり、均一化・同質化している。
運営側もその事態を理解しているということが再確認できた。

余談ながら、もっとも同質化しているのはイオンモール同士だろう。
どのイオンモールもテナントラインナップはほぼ同じである。
これまでなら、イオンモール同士の距離が離れていたから同質化していても問題はなかった。
しかし、これからはイオンモールの近距離に新たにイオンモールができるという事態が発生する。
もうすでに発生している地域もある。
同質化したイオンモールが近距離にできるわけだから、どうなるのか想像しただけで結果が見える。

どちらか、もしくは両方のイオンモールがダメになることは間違いない。

これからはイオンモール同士の潰し合いが始まる。

閑話休題

同質化した商業施設をどのように差別化するのかが全国的な課題になる。

現状の各商業施設を見ている限りにおいて、差別化の手段として通常使われるのが、

「国内初」
「地域初」
「都府県初」

というような「初物」テナントの誘致である。

これには一定の効果はある。
しかし、その効果は長くは続かない。

多くの企業はチェーン展開することを前提にビジネスモデルを組み立てており、
当然、これらの「初物」は遠からず他施設にも出店することになる。

ことによれば「ドミナント戦略です(キリッ)」とか言いながら、平然と、近距離に連続出店を行う。

「初物」テナントはあっという間に陳腐化してしまう。

これはもう何度も繰り返されたことだから多くの皆さんが目にしたことがあるだろう。

筆者は「初物」戦略は短時間の効果はあるが、差別化を解消する根本的な手段ではないと考えている。

この「初物」というのは付加価値ではなく、単なるスペック自慢である。
「国内初」とか「国内最大」とかいう類はそれ自体が価値なのではなく、スペックなのである。
スペックなのだからいつかはそれを上回るスペックが現れる。
初物競争とか最大競争を繰り返していてもそれは消耗するだけだし、いずれ他社に追いつき追い越される。
それが自然の摂理である。

根本的な解決策は2つある。
出店物自体を他社とガラリと変えてしまうか、出店物は同じでもサービス内容を変えてしまうかである。

今回の名古屋取材において、名古屋三越はその出店物自体を他社と変えてしまうという構想を明らかにしてくれた。
もちろん、この東洋経済臨時増刊にも書いた。

名古屋三越はラシックというファッションビルも運営している。
今後、10年後を見据えて、ラシックに出店しているようなセレクトショップやブランドショップ、SPAブランドと三越伊勢丹グループが共同で新規事業を開発するという構想である。

端的に言えば、セレクトショップ〇〇と三越伊勢丹グループが共同開発した新規ブランド〇〇ということである。
当然ながらこの新規ブランドは三越伊勢丹系列に優先的に入店することになる。
となると、他社施設と三越伊勢丹系列の施設は入店テナントや取扱いブランドが大きく異なるということになる。
さらにいえば、「初物」とはいえ、他施設が容易に導入できないからそれが長続きする。

これは他施設との同質化を解消する上で根本的な施策といえるだろう。

ただし、だれでもが取りうる施策ではなく、大企業だからこそできる施策であるともいえる。

実現するためにはいくつもの困難が予想されるが、ぜひとも実現させてもらいたいと願っている。

もう一つは、品揃えでの差別化は難しいのだから、サービスを差別化させるというやり方である。
サービスといっても接客をさらに丁寧にしました、とか、これまでよりもさらに安く値引きしました、とかいう類のことではない。

同じ製品を買うにしても、望めばさらに詳細な説明を聞けるとか、その店に行くことがステイタスになったり、楽しみになったりというような接客や取り組みである。

同じ商品を買うにしても、「あの人から買いたい」とか「いつものあの人に相談したい」ということは今でもあるだろう。
そういう関係性をさらに意識的に強化するやり方である。

単に安いだけのクリーニング店よりも、少し高くても家庭洗濯のやり方をあれこれ教えてくれるクリーニング店の方が良いという人も多くいる。

洋服販売でも同じではないか。

どうせ販売している商品はどの店もそれほど大差ない。
現在、希少価値のある商品だっていずれは他店にも大量に出回るようになる。

今言ったようなことを実現するのはなかなか難しい。
「楽しさ」とか言ったって曖昧模糊としているし、個人によって楽しさの基準は異なる。

それをどのように実現するかは個々の工夫次第であろう。
個々の店のスタッフの個性によってもまた発現するものが変わるだろう。

物自体を変えるにしろ、サービス内容を変えるにしろ、どちらもひどく困難を伴う。

しかし、そのどちらかをやらねば大量生産・大量販売の廉価商品に駆逐されるだけである。
そう、業界人が忌み嫌う廉価商品にである。
やる気がないなら廉価商品に駆逐されるのは仕方がない。淘汰されて当然である。

やられたくないならやるしかないのではないか。
少なくとも三越伊勢丹グループはそれをやろうとしている。
この施策の好き嫌いは別として、やろうとしているということ自体は評価する。

他の百貨店、商業施設はそれほどまでに腹を固めているのだろうか?