久しぶりに各社の月次売り上げ報告を見てみる。

体感的に関西では今年の6月は例年になく涼しかったと感じている。
関西の夏は異様に暑くて湿度が高くて不快である。
おそらく夏の不快さは日本一だろう。

梅雨どきには、例年だとサウナのような日が続く。
湿度90%・気温30度強というような日だ。
日中だけならまだしも夜になっても不快さが続く。
本当に6月~9月下旬までの関西の気候は耐え難い。

ところが、今年の6月はそういう日がほとんどなかった。
日中暑いこともあったが、日が暮れると気温と湿度が下がった。
暑さがニガテな筆者からすると大変ありがたい気候だが、夏物衣料の売れ行きはどうかと思っていたら、案の定影響があったようだ。

それは各社の月次売り上げ報告を見てそう感じた。

今回のトピックスはユニクロの既存店売上&客数の大幅減だろう。

ユニクロの6月既存店実績は
売上高が前年比11・7%減
客数が同14・6%減
客単価が同3・4%増

だった。

その他いくつかを見てみる。

ハニーズの6月既存店実績は
売上高が前年比8・9%減
客数が同7・8%減
客単価が同1・2%減

だった。

マックハウスの6月既存店実績は
売上高が前年比12・8%減
客数が同14・1%減
客単価が同2・2%増

だった。

このうち、ハニーズの業績は昨年10月以降とほぼ変わらない水準なのであまり気に掛けるほどのことはないと判断できる。

問題はユニクロの突然の大幅減と、3月~5月まで回復基調にあったマックハウスの大幅減であろう。

両者とも低気温を理由に挙げている。

とくにユニクロの昨年9月からの月次実績は、3月を除いてすべて既存店売上高が前年を上回っている。
唯一落ちた3月ですら前年比3%減にとどまっているのに対して、6月は考えられないほど大幅に落としている。

昨今の消費動向は体感気温にどんどん忠実になってきているといわれている。
暑ければ涼しい商品を、寒ければ暖かい商品を買う。
いわば季節外れであっても体感気温を重視する人の方が増えたような印象がある。

その昔、春先にやけに寒い日があった。
今なら「ダウンジャケットを引っ張り出しました」とか「しまってあったウールのコートをもう一度出しました」なんてコメントがSNS上に並ぶ。
寒ければ季節外れだろうとダウンジャケットなり冬物のコートを着るのが当たり前である。

しかし、当時まだ存命だった母には「いくら寒くてもこの時期にそんな冬物を着るのはおかしい」と指摘され、「このオバハン、何を言うてんねん」と毒づきながらも、結局、春物の重ね着で寒さを乗り切ったことがある。

もう20年ほど前のことだろうか。

どうも母親世代の人の若いころは、季節感先取りで洋服を着るのが普通だったようだ。
春になって再度冬物を着るのはおかしい、秋口にまだ夏服でうろうろするのもおかしい、そういう感覚である。
これは着物の季節感がその根底にあったのではないかと勝手に推測している。

着物は、季節感を先取りして色柄素材を選ぶ。
桜の時期に桜の柄の着物を着るのではなく、その少し前に桜の柄を着る。
そういう着方である。

昔の人は着物の着用感がある程度体に染みついていたのではないだろうか。
きっと祖母世代の人はもっと染みついていただろう。

これらの低価格ブランドは、もちろんファッション的要素もあるが、実用衣料的要素が高い。
それ故に気温の上下に左右される可能性が高いのではないかと推測する。

一方、世間的には低価格ブランドよりはファッション性が高いと言われるユナイテッドアローズの6月度実績を見てみたい。

ユナイテッドアローズの6月実績は
小売既存店売上高が前年比0・2%増
小売既存店客数が同6・5%減
小売既存店客単価が同7・2%増

となっている。
ちょっと客単価を上げすぎのような気もするのだが、それほどの落ち込みではない。

この数字だけを見ると、ファッション性を求める消費者は気温の上下動にそれほど左右されず、実用衣料を求める消費者は気温の上下動に大きく左右されるように見える。

ただし、客数はこの4社とも減らしており、15%近く減らしているユニクロとマックハウスは危機的な落ち込みだが、ハニーズとユナイテッドアローズだって7~8%も落としているので楽観視できる状況ではない。
ユナイテッドアローズは大幅な客単価増で乗り切ったといえるからだ。

ファッション性があると言われている店も実用衣料的な店もそろって客数が大きく減っているのだから、洋服そのものに興味を持つ消費者が減っていると考えた方が良いのではないか。

可処分所得が減っているということもあるだろうが、たとえばユニクロなら今は夏服の投げ売りを始めている。
メンズの半袖Tシャツなら500~990円である。まれに390円なんていう商品もある。
この水準の価格の商品ならいくら可処分所得が減ろうが、1,2枚は変えるはずである。
そのユニクロですら大幅に客数を減らしているから洋服に興味を持つ消費者そのものが減少しているのではないかと思える。

これが、年商規模数千万円とか数億円程度のブランドなら、少数の洋服ファンをがっちりとつかめば乗り切れるが、数百億円以上の規模になるこの5社からすると、そんなやり方では拡大再生産どころか現状維持もおぼつかなくなる。

洋服を販売するビジネスは難しい局面にあり、打開策はそう簡単には見つからないのではないか、そんな風に思えてくる。

ユニクロ対ZARA
齊藤 孝浩
日本経済新聞出版社
2014-11-20


 

ユニクロ帝国の光と影 (文春文庫)
横田 増生
文藝春秋
2013-12-04