先日、ワールドが10~15ブランドの廃止と400~500店舗の閉鎖を打ち出した。
現段階でブランド名は公表されていないが、おいおいと公表されることになるだろう。

当然、正社員の解雇が生じる。
どれくらいの解雇が生じるのかだが、大雑把に計算してみる。

どのブランドのどの店舗が閉鎖になるのかわからないから、大型店から小型店まであると考える。
小型店なら社員2人にパートとアルバイト合わせて3人か4人くらいのスタッフで回っているのではないか。
大型店なら社員は5人から10人くらいだろうか。パートとアルバイトも10人強は最低でも在籍しているだろう。

パートとアルバイトに関してはここでは度外視する。

各店舗を平均して3人の正社員が配置されているとすると、400店舗の閉鎖で1200人が、500店舗の閉鎖で1500人が不要となる。
そのうち何人かは他店舗への配属となるだろうが少なくとも最低でも1000人は解雇されるのではないかと考えられる。

また各ブランドには本部スタッフが存在する。
ブランド長とか事業部長とか企画、営業担当者である。
ブランドの大小によってもスタッフ数は違う。
小さいブランドなら数人、大きなブランドなら10人以上は配置されている。
平均すると各ブランドの本部スタッフは5人くらいだろうか。

10ブランドの廃止で50人、15ブランドの廃止で75人が解雇される。
それ以外にも本社スタッフは存在する。経理とか総務とかもっとこまごました部門にもスタッフがいる。
おそらくそのあたりにも早期退職勧告がなされるだろうから、本社スタッフの解雇は最低でも200人は越えるのではないかと推測される。

店頭と本部を合わせても最低でも1200人くらいは解雇となり、もっと多くなる可能性も決して低くはない。

現に、あちこちからワールドで大リストラが開始されたとの声が聞こえてくる。

そんな中、東洋経済オンラインにワールドの分析記事が掲載された。

ワールドが大量閉店、「再生請負人」に高い壁
アパレル名門、栄光の軌跡と失速後の展望
http://toyokeizai.net/articles/-/72479

ワールドは2015年3月期から非上場にもかかわらずIFRS基準に変更した。
財務に疎い筆者にはその意味がわからなかった。
業界紙関連のメディアでこの変更の意味を解説している記事は知る限りではなかった。

この記事によると

2015年3月期(IFRS基準に変更)は、52億円にまで沈んだ(左図)。IFRS移行がなければ、のれん償却の約40億円分が、さらに利益を押し下げていたことになる。

とあるから、筆者にはこれは、のれん償却代を計上しないための移行だったと読める。

そして、この記事では、かつて2005年にMBOで上場を廃止したことにも触れている。

ワールドは2005年、MBO(経営陣による買収)で上場を廃止した際、優先株発行などにより資金を調達。買い入れ消却を進めるも、3月末時点でまだ8120万株が残っている。1株当たり配当金は2019年3月期まで8円だが、2020年3月期以降は18円にハネ上がる。

とある。

この有利子負債が莫大でなかなか減らすことができない。
一時期は1200億円もあったがその後はずっと800億円代後半から900億円代をウロウロしている。
ワールドの経営を苦しめている原因の一つであり、今から考えるとこの上場廃止は失敗だったといえる。
まあ、結果論だが。

そういえば、その上場廃止の理由として会見では「短期での株主利益に左右されずに長期的視野でブランドを開発育成するため」というような意味の発言で説明していたが、この10年間で開発育成された有力・有望ブランドが一体いくつあるだろうか?
筆者が知る限りではゼロに近い。

さて、先の東洋経済オンラインの記事でも指摘されている通り、ワールドの問題は財務面もさることながら、売上高不振にある。
ファッション的に見るなら商品力がなくなったと筆者は個人的に感じている。
売れる商品が作れなくなっている。
もう少し丁寧にいえば「定価で」売れる商品が作れなくなっている。

最終的に投げ売りをすればある程度の数量を売ることができる。
しかし、投げ売りをすることで利益率は悪化する。
現にワールドはあちこちのファッションビルや百貨店で夏冬のバーゲン時以外に値引き販売の催事を開催している。その催事だとだいたい7割引きである。
まあ、催事が年中あるのはワールドに限らず大手アパレルはどこも共通しているのだが。

定価で売れる商品が作れなくなっているのは様々な原因があろう。
原因の一つには、POSとQRへの過信があったのではないかと以前に書いたことがある。

これとほぼ同じ時期にダイヤモンドオンラインに掲載された無印良品の松井忠三名誉顧問のインタビューは対照的だ。

良品計画もかつては赤字に苦しんだが、立て直しに成功した。
その際の社長が松井氏である。

http://diamond.jp/articles/-/72884

僕は社長就任早々、まずはリストラから入らなければならなかった。フランスの店舗を閉めて人員整理もしたし、売価で100億円分くらいの不良在庫を処分しました。燃やして処分したものもあります。かなり荒療治、外科手術的なことをしました。

そこで大変だったのは、リストラはしなければいけなかったが、復活するかどうかは全く見えなかったこと。やることをやっても本当にうまく行くんだろうか、と悩みました。でも、それを信じてやるしかなかったですね。ただ、そんな心境でもわかっていたのは、リストラで企業が復活することはない、ということです。

リストラしなければならないほど赤字になったのは、商品が売れなかったからです。そのときの良品計画は、「無印良品」というブランド誕生から20年経って、ブランドも育った結果、大企業病にかかっていて、モノを作る力が弱くなって売れなくなっていた。衣料品が売れなくなっているのを「衣料品部長のせいだ」という理由にしてしまう体質になっていた。企業体質が悪くなるとモノを作る力が弱くなります。お客さんの一歩先を行くような商品は作れなくなっていたんです。

とある。
当たり前だがいくら仕組みをいじっても売れる商品が作れなくてはアパレル企業は衰退する。
やっかいなことにこの逆でも衰退する。
売れる商品を作っても仕組みができていなければアパレル企業は衰退する。

また、こうも続ける。

社内に経験と勘を重視し、社員たちが上司や先輩の背中だけを見て育つ「経験至上主義」がはびこっていたんです。

僕が営業本部長になったとき、「どうしてこの店の売り上げが悪いんだ?」と聞くと、「本部長、それは仕方ないんです、人災だから」と。人災というのはつまり、店長が悪い、と。「人が悪い」ではそこで思考がストップしてしまう。有能な店長が辞めてしまえば、その店はゼロになってしまう、ということ。これでは企業は成長しません。

これは良品計画に限らずアパレル企業やセレクトショップがよく陥る病気である。
個人の感覚に大きく依存しており、特定のカリスマとか名人と呼ばれる人がいなくなるとたちどころに商品の出来が悪くなる。
いくら上場してようが売上高が1000億円を越えていようが、これでは近所の個人商店の八百屋と変わらない。

あと、こんなこともおっしゃっている。

反対勢力に対して、何度も説得を繰り返したり、妥協点を探ったり、反論を押さえ込んだりするトップもいると思います。ただ、「反対すると飛ばされてしまう」というような空気を作ると組織はなめらかにならないんですね。

と。

アパレルやセレクトショップは大企業でも一人のカリスマや名人が引っ張る個人商店みたいなところがある。
往々にしてカリスマとか名人は独善的で独裁者である。だからこそ成功するともいえるが、後々に必ず独裁の弊害が表層化する。それで倒産した企業は少なくない。

二つの記事を読み比べると企業経営の参考になるのではないか。

そういえば、業界では定期的にワールドの再上場のうわさが流れる。
まあ、うわさに過ぎないのだろうけど、もし本当に再上場するなら、現在の寺井秀蔵会長はすっぱりと引責辞任すべきである。
なぜなら上場廃止の際の社長であり、株主に対しての責任がある。
責任を取らずして再上場をするのはモラルに反する。

まあ、あくまでもうわさに過ぎないとは思うのだが。(笑)