今年もクールビズの季節が始まった。
クールビズという取り組みの元来の主旨は「冷房温度を高めにするためには男性の服装をどうするか?」ということである。少なくとも筆者はそう理解している。

しかし、その男性の服装を巡る議論はこの10年間迷走したままである。

なぜ迷走しているかというとそれぞれの意見の立脚点が異なるからであり、このままあと何十年議論したところで交わることはないと感じる。

クールビズ推進派・賛成派は冷房温度を高めるために軽装化は必要という見地
クールビズ反対派はエレガントさやファッション的、美意識的な見地

である。
立脚点が異なるからこの先議論し続けても時間の無駄である。
どちらかを切り捨てるほかない。
個人的にはクールビズ反対派をばっさり切り捨てたいが。

23年くらい前に就職活動中の夏に愕然としたことがある。
当時の就職活動は、4年に上がる年明けくらいから徐々に始まっていき、3月以降に本格的になるという流れだった。
ちょうど今年改訂された就職活動開始時期とほぼ同じ流れである。

3月、4月はスーツで活動しても何の問題もなかった。
まあ、着慣れない服なので違和感はあったが。
5月になると少し暑いけど、まあ我慢できないほどではなかった。

ところが6月に入ると様子が異なってくる。
気温もそれなりに上昇しているし、何よりも湿度が高まる。
長袖シャツに長袖ジャケットといういでたちはかなり苦痛になり始めた。

7月下旬に梅雨明けすると、気温は一気に上昇する。
この当時、最高気温が35度に達することはまれだったが、それでも連日33度の高気温である。
長袖シャツに長袖ジャケット、襟元をネクタイで密閉するという服装は、暑さが苦手な筆者にとって耐えがたい苦痛だった。

8月も当然同じである。

この時に、サラリーマンというのはすさまじい苦行だなあと感じた。
筆者がスーツ着用の仕事に就きたくなくなったのはこれが一因でもある。

当たり前の話だがこの服装で涼しさを感じたいと思ったら、冷房の設定温度は25度以下になる。
(個人差はあるが)

一方、女性はそこまでの重装備ではない。
そうすると重装備ではない女性にとって25度以下という温度設定は「寒すぎる」ということになる。

2005年当時にクールビズが初めて提唱されたのは、冷房温度設定を高めることによる省エネルギー化のほかに女性からの要望も相当にあったためではないかと想像している。

その後、何だかんだでクールビズは続くが、2011年の東日本大震災の原発事故によって、さらなる省エネルギー化が求められる。
そしてクールビズが一層推進されることになる。

省エネルギー化という見地に立てば男性の真夏の服装をさらに軽量化することは理に適っている。
暑いんだから涼しい服装にしろよということである。

これに対してファッション業界人を中心とする反対派は、欧米では長袖シャツにジャケット着用がマナーだとか、半袖シャツは威厳がないから今年こそ決別しろという主張を展開しているが、冷房設定温度をどうするかという議論はまったく噛み合っていない。

まず、欧米ではという意見に対していえば、欧米と日本の気候は大きく異なる。異なる気候の地域のスタンダードを振りかざされても「知らんがな」である。

これと似たような議論としてワイシャツの下に真夏に肌着を着るかどうかという議論がある。
高温多湿な日本の気候なら筆者のような汗っかきは肌着は着るべきだと考える。
一方、オウベイガーの人はシャツの下に肌着を着るのはマナー違反だという。
まあ、気候がまるで違うのに何言ってるの?としか思えないのだが、汗でシャツが濡れてオッサンの乳首がスケスケになった状態なんてまったく見たくない。

某男性バイヤーは「イタリアではだれも乳首スケスケは気にしませんよ」なんてことをメディアで発言しているがここはイタリアではないから気にする人は多いし、ヒゲもじゃの某バイヤーの乳首なんて金をもらっても見たくもない。

次に半袖シャツには威厳がないという意見だが、威厳をどうするかという問題と冷房温度設定を高めることによる省エネルギー化とはまったく関係がない。

結局、立脚点が異なるからいくら議論しても一致することはない。
ならば、両方が並立すれば良いのではないかと思う。
クールビズ反対派が厚着をするのは勝手。ただし冷房温度は低めないから暑いのは我慢してねということになる。

ただし、お互いがお互いの服装にケチをつけることはやめるべきだろう。

クールビズ反対派はクールビズに関してグダグダ言うべきではなく、ひたすら自分の美意識を自分だけで勝手に守っておけば良いのではないか。
欧米の服装のマナーは知識としては必要なのでそれを知っておくことと、異なる気候下の国でそれを順守することとは別物である。

賛成派も反対派もそれぞれに納得いく服装で共存すれば良い。
ただし、高めの冷房設定温度という環境下において。
ただ、それだけのことではないかと思う。