繊維・衣料品業界には特有の固定概念がある。
だいたいの場合、その固定概念はマイナスにしか作用していないことが多い。
先日、これを「ファッション業界病」と命名された方がおられたが、まさに賛同である。

現在の衣料品業界の現状をひどく乱暴にまとめると、ユニクロも含めた低価格グローバルSPAという大きな勢力がある。
かつての大手総合アパレル各社は苦戦を続けている。
ワールド、TSIホールディングス、三陽商会、オンワード樫山、イトキン、ファイブフォックスなどだ。

大手総合アパレルの苦戦に対して成長したのが、疑似SPAともいうべき大手セレクトショップだが、先日のユナイテッドアローズの減益決算に見るように踊り場に乗り上げたといえるのではないか。

一方、国産品比率はさらに下がっている。
かつて4%と言われていたが、今は3%にまで低下している。

これらへの対抗策として、「高価格国産品の打ち出し」というのが目下の衣料品業界のはじき出した答えであるが、それはあまり大きな売上高にはつながっていないし、個人的には今後もこれが大きな売上高になるとは考えていない。
むしろ、国産品を高価格品とすることで却って生産数量は落ちるのではないかと考えている。
価格設定はやや極端だが、超高価格化にすることで着物の国内生産量はどうなったか。
筆者は着物と同じ流れになるのではないかと見ている。
(着物市場が縮小したことはそれ以外にもさまざまな要因はあるが)

個人的には中価格帯の国産品を強化したほうが、消費が増えて国産比率が高まるのではないかと考えている。
中価格帯といっても人によってその思い描く価格はさまざまだろうが、筆者はジーンズならエドウインの8000~10000円未満までだと考えている。
Tシャツならどうだろうか。3000~6000円くらいか。
いくら最高級のナンタラ綿を使って、カンタラ編みした生地を、ムニャムニャ縫製仕様にしたといっても、1万円を越えるTシャツを平均的な消費者は年に何枚も買わないし、買えない。
低所得者たる筆者は絶対に買わないし、今後金持ちになることがあってもせいぜい年に1枚買う程度だろう。
で、そういう1万円を越えるTシャツを毎年何枚も買うような「富裕層」が日本に一体どれくらい存在すると認識しているのだろうか。

余談だが、某プロデューサーが製造業にヒアリングすると、決まって「富裕層に売りたい」との答えが返ってくるという。
きっとプロデューサーはドS性癖なのだろう。続けてこう質問する。
「その富裕層の人は普段どこにいるんですか?」と。

製造業者は「たぶん、銀座(ボソッ)」。

さらに続けて「彼らは銀座のどの店を愛用しているのですか?」

製造業者「三越・・・?」

プロデューサー「銀座三越の何階で買い物をすることが多いと思いますか?」

製造業者「ぐぬぬ」

というやり取りが毎回繰り返されるそうだ。

閑話休題

ところが、中価格帯プランはファッション業界の人からは否定される。
中価格帯は売れないというのが彼らの意見で、ある人はそれを「ファッション業界病」と指摘した。
そういうファッション業界病患者に対して、筆者が疑問に思うのは、今、疑似SPAたる大手セレクトショップがそろって中価格帯新業態を出店しているということを無視していることだ。
もっとも大手セレクトショップの中価格帯はアジア製と日本製とが混在しているのだが。

例えばビームスはビーミングライフストアを、アバハウスはマイセルフを、ジャーナルスタンダードはレリュームを出店している。いずれもファミリーやカップル向けの中価格帯である。
ユナイテッドアローズのグリーンレーベルリラクシングだってこの市場だろう。
そもそもナノユニバースの価格設定だってここに属するのではないか。
業界病患者が指摘するような成功しない市場へ彼らが出店する目的とはなんだろう?
まさか儲けすぎたから節税対策というわけではあるまい。(笑)

また昨今注目度が高い鎌倉シャツだってこの市場を狙っている。
いくら西脇で作られた国産生地だろうが、縫製技術が高かろうが、あのシャツが1万5000円なら今ほど売れていないし、2万円を越えていたならイタリアからのインポートブランドシャツを買う。
鎌倉シャツが売れたのは4900円という中価格設定だったからである。

筆者には18年ほどの業界経験しかないが、業界病患者の指摘はだいたい当たらないと感じる。
ユニクロだって台頭期には散々に彼らに否定された。
ZOZOTAWNだって彼らには否定された。

最近では業界病患者の指摘なんてまったく意に介す必要はないのかなとも思っている。

話は少しそれるが、別のカテゴリーでもファッション業界病は存在する。

業界病患者が「有名だ」と認識していることの多くは、一般消費者には知られていない。
一般消費者どころか業界内にだって知られていないことも数多くある。

国内生地産地を回ると、各地で「うちの〇〇産地は有名だから」という声をよく聞くが、業界内にも〇〇産地を知らない人は山ほどいる。
逆に身近な範囲だけの統計を取れば、知らない人の方が多いのではないかとも感じる。

先日、中価格帯の話題で、「某大手が藤原ヒロシさんと一緒に打ち出そうとしたがそれでも成功しなかったから市場の芽はない」という意見を耳にした。
その意見は「藤原ヒロシさんでさえ失敗したから」ということなのだろうが、業界人が思っているほど、一般消費者は藤原ヒロシさんを知らないのではないか。
筆者だって何をしている人かは実はよく知らない。23歳くらいでファッション雑誌を読み始めたときから、なんだかよく掲載されている人だったから「たぶん有名な人なんだろうなあ。俺は全然知らないけど」と認識したが、20年経った今でも筆者の認識はその程度である。

先日、元美容師の31歳の若者と面談した。
元美容師の若者というとチャラっとした人を想像しがちだが、彼はその若さで経営者である。
正確に言うと、数年間オーナーとして美容室を経営していたが、それを売却したという。
31歳で数年間というから、25歳か26歳からオーナーとして経営していたことになる。
しかも従業員を雇用していたことがあるというから、その若さで大したものだと感心した。

筆者が26歳の頃と比べると天と地ほどの差がある。

一般的に美容師はファッションにも興味を持っている人が多く、ファッションブランドには詳しい。
その彼でも、「僕は最近、初めて藤原ヒロシさんという人の存在を知りました」と答えているから、一般消費者の認知度の低さは推して知るべしではないか。

そんなわけで、ファッション業界病患者の反対するプランこそ実は成功するのではないかとも感じている。
今後、革新的なビジネスモデルが登場するのは業界内部からではないだろう。

まあ、業界特有の業界病があるのは衣料品業界に限らずどの業界にもあるのだろうけど。

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