老舗の国産ブランド「ブルーウェイ」を企画製造販売していたブルーワークスカンパニーの倒産はやっぱり個人的には衝撃だった。

いささか一面的ではあるが、商品内容的な観点からジーンズ業界の「終わりの始まり」がいつだったのかをちょっと考えてみたい。

以前にもこの20年間のジーンズの大ヒット商品の移り変わりを書いたことがある。

90年代前半:ボブソンの04ジーンズに代表されるレーヨン混のソフトジーンズ
96年ごろから:ビンテージジーンズブーム
2000年前後:股上の浅いローライズジーンズブーム
2005年:欧米からの高額プレミアムインポートジーンズブーム
2008年:超タイトシルエットのスキニージーンズブーム
2009年~現在:ジーンズ不振の時代

という流れである。

80年代までの流れは業界の長老方に回顧していただければ良いのではないかと考えている。

現在のジーンズの流れは素材のテイストでいうと96年から始まったビンテージジーンズを、股上の浅さは2000年からのローライズジーンズを、シルエットは2008年からのスキニージーンズの影響下にある。
スキニーシルエットの全盛によってストレッチ混デニム生地使用がスタンダードにもなったが、それでも見た目の表面感や洗い加工などはビンテージテイストが求められている。

個人的にジーンズのヒット商品の流れが変わったのは2000年のローライズジーンズブームだったのではないかと見ている。

なぜなら、それまでのジーンズのヒット商品はメンズ主導だったのが、このローライズからレディース主導へと変わったからだ。

なるほどレーヨン混のソフトジーンズもレディースに人気だったが、メンズにも人気が高かった。
当時、店頭でボブソン04ジーンズを販売していた身としては、メンズとレディースが毎日半々で売れていたように感じている。

少なくともメンズとレディースは同時発信だった。

ビンテージジーンズも同じだ。むしろレディースがメンズに引きずられていたような印象がある。

ダボっとした武骨なシルエットのビンテージジーンズを女性も着用していた。
このころ、デビューしたパフィーのステージ衣装はダボっとしたビンテージジーンズにピタっとしたタイトなTシャツである。
そういえばチビTブームもこのころではなかったか。

ルーズなボトムスに合わせてタイトなトップスを着るというのは定番的な着こなしである。
上下ともにルーズシルエットを着こなすのは相当にセンスが必要で、センスの悪い人だと単にガラが悪くてだらしない人になってしまう。

そんな感じでメンズ主導、もしくはメンズとレディースの同時発信というトレンドだったが、ローライズからは明らかにレディース主導に切り替わった。

当然ローライズブームは女性から始まった。
一部のメンズブランドはほぼ同時にそのトレンドに追随したが、本当にごく一部で、メンズジーンズで追随したブランドは皆無だった。

メンズジーンズというか、メンズパンツが全般的にローライズになったのは2~3年後のことである。

物持ち良く、2002年か2003年ごろに買ったリーバイスの502をいまだにときどき穿くが、今のズボンと比べて股上はかなり深い。
メンズのズボン全般がローライズ化したのはこの後の年代ということになる。

となると、レディースとの差はゆうに3年以上あったということになる。

次の高額インポートジーンズもレディース主導で人気に火が付いたし、スキニージーンズも同じである。

さらにいうなら、トレンドのネタ元が高額インポートジーンズ以降は欧米になってしまった。

良い悪いは別としてメンズが主導していたころのジーンズはウンチクありきみたいな部分があった。
素材や品質のスペックがある程度重視された。

しかし、女性消費者はそんな物には興味はない。
これはジーンズに限らず衣料品全般においてである。

素材ガーとか縫製ガーとか品質ガーとか言っているのは大概が男性である。

女性が主導するようになるとジーンズ業界特有の「モノ作りガー」は通用しなくなる。
女性の反応するポイントはそこではないからだ。

見た目のデザインと形とシルエット、色柄、あとは価格とのバランス。

このあたりが重視されるようになる。
ジーンズというアイテムの競争相手は他のジーンズブランドではなく、ファッションブランド全般ということになる。

となると、トレンドの速さやブランドイメージの高さで、ジーンズ専業ブランドが一般のファッションブランドに敵うはずがない。
最初は大したことがないダメージも蓄積していけば大事になる。

それが表面化し始めたのが2009年以降ということになるだろう。
リーマンショックによる消費不振も幾分か手伝ったかもしれない。

そんなわけで、商品内容的な観点からすると「ジーンズ業界の終わりの始まり」はローライズジーンズブームだったのではないかと思っている。

ちなみにこの「終わりの始まり」という優れたキャッチコピーが初めて使われたのは、知る限りにおいて塩野七生さんの著書「ローマ人の物語」においてである。
塩野さんの歴史の見方は男性的だと感じるのでそこを評価している。
例えば公共施設のメンテナンスのことも踏み込んで考察しておられる。

唯一、女性的だなと感じるのは、ユリウス・カエサル(英語名ジュリアス・シーザー)についてだけである。
あれは完全に男性アイドルに熱狂する女性の視点である。

閑話休題

経営が悪化したジーンズ専業アパレルはさらに保守的になっている。
先日、某百貨店のレディースジーンズ担当のバイヤーと話す機会があったのだが、この数年、ジーンズ専業アパレルのトレンド対応はさらに遅くなっているという。

ジーンズ専業ではないアパレルが作るジーンズはまだトレンド対応が早いが、老舗ジーンズアパレル各社はトレンド対応がワンテンポ以上遅いというのがこのバイヤーの意見だ。

たしかにローライズを率先して仕掛けていたのはジーンズ専業アパレルだった。
そのころのアグレッシブさは今のジーンズ専業アパレルには見受けられない。

業績が悪化しているから失敗は許されない。だから手堅く勝負しようとするが、そこに面白みが感じられないので商品が売れない。また業績が悪化して、さらに手堅くなる。

という悪循環スパイラルに陥っていると感じる。

レーヨン混のソフトジーンズやローライズジーンズを積極的に仕掛けていた攻めの姿勢をジーンズ専業アパレル各社は、もう一度取り戻す必要があるのではないだろうか。
言うは易し行うは難しということは重々承知しているのだが。