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南充浩 オフィシャルブログ

「ブルーウェイ」ブランドの破産で従来型の「ジーンズ業界」は完全に消滅

2015年6月2日 未分類 0

 国産の老舗ジーンズブランド「ブルーウェイ」を企画製造販売していたブルーワークスカンパニーが自己破産を申請した。
負債総額は9億4800万円。

筆者が見た97年から現在までのブルーウェイというジーンズメーカーの推移をまとめてみたい。

もともとはブルーウェイというメーカーがあり、その関連企業でインポートを担当する会社としてブルーワークスカンパニーは設立された。

帝国データバンクによるとブルーワークスカンパニーの設立は93年である。
筆者が業界紙に入社した97年にはすでにブルーワークスカンパニーは存在していた。

そしてブルーウェイは当時、ナショナルブランドに次ぐ規模の準ナショナルブランドというのがジーンズ業界での位置づけだった。

東京商工リサーチによると、そのブルーウェイはピーク時の平成6年(1994年)2月期には売上高が81億9657万円もあったという。約82億円である。
筆者が入社した97年当時はピークよりは売上高が減少していたものの、70億円台だったと記憶している。
筆者は2003年まで定期的にブルーウェイを取材しており、その間の売上高は50億円~60億円台を推移していた。
ピーク時よりも減少していたとはいえ、それほど悪い数字ではない。

しかし、そのあたりから売上高が急速に減少することになる。
原因の一つには全国展開していた大手ジーンズ専門店が何社も倒産したことである。
三信衣料、フロムUSA、ロードランナーなどである。
また地域チェーン店のアイビー商事も倒産したし、アメリカ村の老舗店舗「サンビレッジ」も閉店してしまった。

倒産はしていないが、かつて一世を風靡したジョイントも規模を大幅に縮小したし、レオはマックハウスに吸収されてしまった。

またライトオンとの取引も中止した。
これには、商品買い取りを巡る双方の思惑が異なったためだと当時のブルーウェイ側から聞いている。

さらにいえば、仕入れ型ジーンズチェーン店だったポイントはSPAチェーン店へと業態転換している。
三信グループのジグ三信は、セレクトショップ「アーバンリサーチ」へと業態転換し、今ではSPAも展開する複合企業へと成長している。

こう列挙してみるとジーンズ専門店はまさに死屍累々で、ポイントのSPAへの完全転換と、アーバンリサーチのセレクトショップ化は見事なものだったといえる。

そういう業界情勢の中で、ブルーウェイは売上高を低下させており、筆者の目には縮小均衡を狙っていたように見えた。

しかし、それもどうやら思惑通りには行かなかったようで、平成24年(2012年)9月にブルーウェイの国産ジーンズ企画製造販売業務をブルーワークスカンパニーが吸収し、ブルーウェイという企業は2014年5月にジェイ・プランニングに商号変更し、今年解散している。

ブルーウェイブランドを引き継ぎ、インポート事業と二本立てになったブルーワークスカンパニーだが、

25年6月期は売上高約11億1800万円、26年6月期は売上高9億9898万円を計上したが収益は低調に推移していた。資金運営でも、事業とともにグループ会社から引き継いだ借入金が負担となっていたうえ、海外ブランド品の契約継続が困難となったことで先行きの見通しが立たなくなり、今回の措置となった。
とある。

国産ジーンズとインポートブランドの両方を合わせての売上高だから、その一方ずつがどれほどだったかは推して知るべしだろう。

ところで、帝国データバンク、東京商工リサーチともあげている「海外ブランド品との契約継続が困難になった」というのは「スコッチ&ソーダ」というブランドのことであろう。

ブルーワークスカンパニーの最晩年の主力ブランドは「スコッチ&ソーダ」だった。
売上高は大きくなかったがセレクトショップでは注目されていた。
しかし、その「スコッチ&ソーダ」は今秋冬から伊藤忠商事が独占輸入することになり、それをコロネットが販売することになってしまった。

http://www.fashionsnap.com/news/2015-02-10/scotch-soda-itochu/

今年2月の発表である。

当然、ブルーワークスカンパニーはどうなるのかという心配が沸き起こったが、昨年11月末以来、筆者とは没交渉になっていたため確認するすべもなかったが、結果だけを見ると代わりのブランドは見つけられなかったようである。

かつて、エドウイン(リー含む)、ラングラー、ボブソン、ビッグジョン、リーバイスという大手ナショナルブランドがあり、準ナショナルブランドとしてブルーウェイと「スウィートキャメル」のタカヤ商事があった。

大手ナショナルブランドはいずれもピーク時売上高は100億円を越えており、準大手も80億円~90億円という売上高があった。
そして、今回のブルーワークスカンパニーの破産によって、経営破綻していないのは、リーバイ・ストラウス・ジャパンとタカヤ商事だけになってしまった。

とはいっても、リーバイ・ストラウス・ジャパンもリストラに次ぐリストラを繰り返しているし、タカヤ商事も事業部の再編統合を繰り返しているから決して無傷ではないし、ともにピーク時に比べると大きく売上高を低下させている。

エドウインが伊藤忠商事の子会社化されたことは記憶に新しいが、ラングラージャパンはVFジャパンに名称変更後すぐさま解散している。ボブソンは一度完全に倒産してから親族が再起している。ビッグジョンも実質経営破綻し、現在は官民ファンドの管理下にある。

結局、97年当時にあったジーンズメーカーで現在まで無傷で残っているのは、大手ナショナルブランドや準大手よりもはるかに売り上げ規模が小さかったベティスミス、ジョンブル、ドミンゴくらいである。
いずれも売上高が20億~30億円内外を推移しており、50億円を越えたことはない。

このうち、ベティスミスは自社国内工場と中国工場を上手く併用し、SPAブランドから中価格帯のOEM生産を請け負ったり、自社デニムバッグの新幹線車内販売や、JR西日本とタイアップしたオーダージーンズ付のツアーなど個性的な取り組みで脚光を浴びている。

ジョンブルは、トータルブランド化と直営店化でそれなりの存在感を業界に示している。
ドミンゴも順風満帆ではないが、パンツ専門ブランドとしてはセレクトショップや専門店からはそれなりの評価を得ている。

そして、この3社の共通点は早い段階で大手ジーンズチェーン店との取引をやめており、セレクトショップや専門店との取引に移行していた点にある。
そのために大きく売上高を伸ばすことはなかったが、それなりの評価を業界内で得たといえる。
反対に大手や準大手は大手ジーンズチェーン店との取引が多かったため、その販路が衰退すると売上高を大きく減らすことになり、それが経営破綻の一因にもなっている。

いやはや、何が災いとなるかは本当にわからないものである。

これで完全に従来の「ジーンズ業界」という業界はなくなってしまったといえるだろう。
今も専業メーカーはあるが、いずれも小規模だし、大規模な売上高を目指すならSPA企業や大手セレクトショップとの結びつきが不可欠になってしまっている。
これまでのようにジーンズ専門店チェーンと百貨店・量販店の平場ジーンズ売り場だけを相手にしていられる状況ではない。

それにしてもブルーウェイとブルーワークスカンパニーは目の付け所が良い企業だった。

例えばGスターやストーンアイランドを最初に輸入し、独占販売していたのはブルーワークスカンパニーである。
また、ブルーウェイは他のジーンズ専業メーカーに先駆けてすでに90年代前半に自社直営のセレクトショップ「no seasons」を最大で全国で10店舗前後を展開していた。
取扱いブランドは「ブルーウェイ」に加えて、ブルーワークスカンパニーが当時輸入窓口を務めていたGスターやストーンアイランドである。

天王寺MIOにも店舗があった。
MIO店は長年見てきたが、店作りやディスプレイはそれほど悪くはなく、上手くまとめている印象があった。
ブルーウェイの直営店舗だと知らない人も多かった。
というか、当時の風潮として、卸先の大手チェーン店に気兼ねして大々的に公表しないというものもあった。

結局、どちらも今はないから、目の付け所と発想力は良かったが、運にも恵まれず育てるのが上手くなかったということになる。

おそらく、他のメディアでブルーウェイの変遷をまとめる記事はそうないだろうから、業界の参考のために、筆者が97年から見聞きしたことを断片的ではあるがまとめさせていただいた。

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