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南充浩 オフィシャルブログ

産地企業が思っているほどデザイナーは多機能ではない

2015年5月27日 未分類 0

 国内産地の製造加工業が自社オリジナル製品を開発する事例が増えている。
賃加工の下請け仕事だけに依存しているのは危険であるから、自社である程度コントロールが可能な自社オリジナル製品を開発することは自衛策としても当然といえる。

しかし、あまり上手く行かないことの方が多い。

なぜか。

デザイナーの使用方法が間違っている場合が多いからだ。
というよりも「ブランド事業」の組み立てが根本から間違っているからだ。

デザイナーに依頼せずに、その企業の社長やその親族、社内の有力者が担当することがある。
その人たちにデザイン業務の経験があれば良いのだが、そうではない場合も数多くある。
そうするとそれはド素人であるということで、そこらへんのオッサンがデザインするのと何ら変わらない。

そんなことは以前にも書いたことがある。

社長が「デザイナーは俺。俺の熱い思いを形にする」
なんて言ってるところはだいたいがダメである。

しかし、中には例外的に試行錯誤を繰り返して成功するド素人もいる。
要はビジネスの結果をどれだけ謙虚に見つめなおして軌道修正できるかである。

次に失敗が多い事例は、何でもかんでもデザイナー頼みという場合であろう。

製品を開発する場合、製品自体のデザイン以外に価格設定、販路開拓、ブランドコンセプトなどが必要となる。
製品自体のデザインができたらお終いではない。

そしてデザイナーの仕事は、あくまでも「製品のデザインをすること」であり、基本的にはそれ以外の業務はできないと考えた方が良い。
それは物理的にも能力的にもだ。

中にはそういうことまでやってくれてそれなりの実績を作っているデザイナーもいるが、それは例外だと考えるべきである。
そして通常ならばその業務に対しては、当然ながら別料金が発生する。

商品をデザインする前に、そのブランドのコンセプト作りが必要である。
そして、その商品を「どれだけ、だれに、どれくらいの価格で、どのような販路で売るのか」という設定も必要になる。

そして商品ができた後は、販路の開拓が必要となるし、今後の追加補充体制、物流の取り決めも必要になる。在庫は誰がどのように抱えるのか、ということも考えなくてはならない。

で、結論から言ってしまうと、これだけのことをすべて実行できるデザイナーはほとんど存在しない。

これを総合的に包括的に決められる能力があるのはプロデューサーと呼ばれる人である。
また、「どれだけ、だれに、どれくらいの価格で、どのような販路で売るのか」を決める人はマーチャンダイザーである。
販路開拓は営業の仕事である。

となると、本来はデザイナー以外に少なくとも2~3人が必要になる。
(どれかを兼務することは可能だし、そういう複数の能力を持った人もいる)

もしデザイナーがこれらの業務を兼ねて推進できるなら、そこには別料金が発生するのが当たり前である。

このあたりの料金をケチっていては成功することは難しい。
無事に出来上がったらそのあとには広報宣伝と販促活動も必要となり、そこにも別の費用が発生する。

多くの場合の製造加工業者は、逆境にあるからこそ自社製品開発に乗り出すわけで、資金的には潤沢ではない。
しかし、潤沢ではないからと言ってそれらをケチっていては絶対に成功しないと筆者は考える。

もちろん、実際の能力以上のことを自己喧伝し、高額な料金をふっかける輩も多数存在するから見極めは重要であるが、よく産地企業が言うような「タダ(もしくはタダ同然の料金)でしてもらえないかな?」というようなことはあり得ないし、その考え方は間違っている。

これらのことを理解した上で、自社製品の開発を進めてもらい、1社でも2社でも成功してもらいたいと願ってやまない。




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