2,3年前に伊勢丹とルミネが主導した「セール後倒し」論争があった。
年々早期化するバーゲンセールを以前の時期に戻そうという主張である。
主張する意味はわかる。
プロパー(定価)販売期間が長い方が利益が確保しやすい。

以前なら夏バーゲンは8月上旬とか7月末、冬バーゲンは1月下旬だった。

今は夏バーゲンは6月スタート、冬バーゲンは1月2日スタートとなっているが、冬は12月からプレセールに入っている。夏はゴールデンウイークが終わると商品の売れ行きは止まるから早ければ5月下旬からプレセールが始まる。

定価で販売できる期間は年間半年弱である。

その後、伊勢丹とルミネは他の百貨店やファッションビルよりも2週間前後遅くにセールを開始することになって論争は落ち着いた。

その伊勢丹だが、昨日、東洋経済オンラインにこんな記事が掲載されている。

伊勢丹は、なぜ5月に夏物セールをやるのか 新宿店が6日間のセールで7億円販売!
http://toyokeizai.net/articles/-/68700

これは紳士ビジネス服についての記事である。

スーツやワイシャツ、ビジネス革靴などのセールを5月、10月に開催しているという。
文中に「例年」とあるから毎年のことなのだろう。

主旨としては、クールビズが本格化する直前の5月に紳士ビジネス衣料類を安売りすることで大きな売上高を稼いでいるという。
文中にはないが10月は冬物に衣替えする時期であるから、やはりその衣替え需要を狙ったものと考えて間違いはないだろう。

消費者的な立場でいえば、衣替えの直前に洋服が値引き販売されていればありがたい。
だから売上高を稼げるし、その時期に安売りして売上高を稼ぐのは理に適っている。

「よりどり2点スーツ」。2着で2万7000円、3万7800円、5万4000円などのラインナップが用意されている。

という。
ワイシャツや靴もそれに類した値段なのだろう。

しかし、大きな違和感がある。

これが他の百貨店やファッションビル、郊外型ショッピングセンターなら「妙手」だと感心するのだが、この紳士服早期セールを毎年やっているのは、セール後倒しを強硬に主張した伊勢丹なのである。
筆者の目にはひどく言動不一致に映る。
みなさんはどうお感じになっただろうか?

散々きれいごとをぶち上げてセール後倒しを主張した百貨店が、他に先駆けて紳士服の安売りセールを恒例行事として開催しているわけである。
もしかして、セール後倒しはレディース服にのみ適応される概念だったのだろうか?

ビジネスは綺麗事ばかりではないことはわかる。
並み居る成功者たちだって後ろ暗いことの1つや2つは過去にやってきただろう。

それにしてもこの言動不一致には個人的には呆れ果ててしまう。

結局、伊勢丹が示したのは、「ニーズの高い商品を他社よりも先駆けて安売りすれば売上高が稼げる」という事例である。

だったら夏冬のセールはさらに早期化させるべきだろう。
それこそがもっとも売上高が稼ぎやすい手法であることは伊勢丹が身をもって証明している。

ルミネのいう「産地保護」という建前論も失笑を禁じ得ないが、伊勢丹の「アパレル業界保護」という建前論も同様に失笑を禁じ得ない。

綺麗事の錦の御旗を振りかざしつつ、真逆の行動で売上高を稼ぐというのは、実にアパレル業界らしいといえばそれまでなのだが。

他の百貨店、ファッションビル、郊外型ショッピングセンターはこれで心置きなくセール早期化ができるのではないか。そしてそれが最も有効な販売方法の一つだということを図らずも伊勢丹が証明してくれたのだから。