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南充浩 オフィシャルブログ

全会一致・全員平等では産地も地方も活性化しない

2015年5月13日 未分類 0

 このところ、毎回楽しみに読んでいる連載がある。

東洋経済オンラインの「地方創生のリアル」である。

いわゆる全業種をひっくるめた地方創生の数ある失敗例を紹介している。
筆者はいくつかの繊維産地以外の地方の製造加工業はあまり知らないが、ここに書かれてある例は繊維産地でもよく見かけた光景ばかりで、思わず「あるあるww」とつぶやいてしまう。

私見だが、地方創生に成功した例は数少ないと見ている。
繊維でも数少ないし、それ以外の業種も同様だ。

今回のは、

なぜ地方創生はみんなで決めるとダメなのか
何かを変えねばならない時、合意形成は必要?
http://toyokeizai.net/articles/-/69353

である。

タイトルだけでどんな内容が書かれているのか想像できる。

筆者が経験したいくつかの産地組合での会議、また産地ではないが、業界の組合団体の会議はすべからく、これであった。

全員一致での合意形成である。

参加者が増えれば増えるほど当たり前のことだが合意形成はしにくくなる。
人間の考えは一人一人異なるし、考えが異なるだけならまだしも、利害関係とかよくわからないメンツだとかそういう複合的な要因が加味されて、これを全会一致にするのは相当の労力が必要となる。

画期的なアイデアも全会一致の根回しをしている間に、陳腐なアイデアに成り下がってしまい、それを実行した結果はあまり芳しくなかったということもよくある。

この記事では3つの「ワナ」が書かれてあり、その三つ目のワナのなかにもさらに3つに分類されている。
その分類された3つとも産地組合や業界団体の会議でよく見かけた事例である。

(a)集団の力と道徳性の過大評価

自分たちは有能で優れた意思決定を行っているという幻想が共有され、過大なリスクテイクに傾き、自分たちの集団的な結論が道徳的にもよいものであると、無批判に受け入れる傾向があります。「ウチのまちは歴史的に特別である」「自分たちは国や自治体から選ばれた優れたチームであって、自分たちがやることこそ地域を再生するのだ」、というような思い込みも問題の一つとなります。

(b)閉鎖的な心理傾向

不都合な情報を割り引いて解釈し,当初からの意思決定を「合理化」してしまう努力のことを差します。とりわけ「敵」を蔑視するあまり,敵の能力を低く見積もる傾向が出現します。敵のリーダーを悪人だとレッテルを張り、無能化したりステレオタイプ化するのもひとつの傾向です。衰退する地域では、敵である「他の都市」や「競合する商品・サービス」のあら探しばかりをして盛り上がり、自分たちのマイナス情報には目を向けないということがこうした心理にあてはまります。

(c)「斉一性(せいいつせい)」への圧力

問題だと思っても、言い出す前に自重してしまうことです。「満場一致の原則」では、誰も真剣な反対意見を述べないので、誰もが他者はそのプランを支持しているのだと思い込みます。しかも,反対意見を言って集中砲火を浴びるよりは,その場の雰囲気を壊さないことを優先してしまいます。最後には「番人」を自認するような人が現われ,都合の悪い情報を排除し,反対意見を言う人に圧力をかける、ということまで起こります。

である。

aはよくある。
「うちの産地は国内では有名だから」と言う人が多いが、残念ながら自分たちが思っているほど有名ではない。
ファッション業界で著名なのは、岡山・広島産地のデニム生地くらいではないか。

bもよくある。
競合相手の情報を摂取しない。
例えば「中国製の生地は品質が悪いから云々」という声を産地会議でよく聞いたことがある。
たしかに品質は悪いかもしれないが、価格競争力はある。
それに対抗するためにはどうするのか?どのようにして中国製生地の3倍以上の価格の生地を売るのか。
品質の良さだけで売れるのか?売れるのだったら今頃とっくに売れているのではないか?

しかもその品質の良さすら広く業界に告知できていないではないか。

そしてcである。

一時期多かった株主総会のシャンシャン総会みたいなものである。

都合の悪い情報を排除するのは何も地方や産地だけではない。
業界団体だってそうだし、特定の業界に強い影響力を持っている企業だってそうだし、アパレル企業でもそうである。

業界紙やブロガーに「(大手新聞に書かれた事実であるにもかかわらず)こんなこと書かれたら困る」などとわけのわからないクレームを入れてくる
それなら真っ先に大手新聞にクレームを入れるべきだろうが、それはしない。
おかしな話である。

発行部数何百万部の大手新聞を放置しておいて、発行部数何万部とか何千部レベルの業界紙や、一日の閲覧者数が数千くらいのブロガーに記事を取り下げさせたところで何の効果もない。
こういう行動はまったく合理的ではないし、意味がない。

いくつかの産地、いくつかの業界団体しか知らない乏しい経験で申し訳ないが、「全会一致」を原則としている限り、地方も産地も創生されることはないだろうと感じる。

また、行政側の「構成員を過剰に平等に扱う」という姿勢も地方創生を大きく阻害しているのではないかと思う。

例えば、あるイベントを考案したとする。
それの参加者、協力者を求めて産地組合やその管理団体に相談をする。
そうすると構成員全員に告知さてしまい、ほとんどやる気のない企業にまで知らされてしまう。
そのやる気のない企業がやる気のないまま不参加なら何の問題もないが、このやる気のない企業がやる気はないくせに、影響力だけ行使しようとすることがある。

こうなると、最早、会議は紛糾するばかりとなる。

そしてなし崩し的にイベントに参加されたらイベントもできの悪いものになる。

地方もそうだが、産地も域内の全企業をすべて活性化させるのは不可能である。
各企業経営者のやる気や危機感はまちまちだ。
中には過去の余剰金がたらふくあって、廃業した方が楽だという企業だってあるだろう。
そういう企業は廃業をすれば良いと思う。
また、やる気のない他力本願な企業は市場から退場してもらうべきだろう。

真に地方や産地を活性化させるためには、やる気のある企業・事業を永続したいと強う願う企業・生き残りたいと真剣に考えている企業のみを掬い上げるほかない。
いわゆる有志連合を組織するのがもっとも効果的だろう。

みんな一緒に平等に手をつないだ状態では地方も産地も永遠に活性化しない。



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