今春夏はレディースのパンツでシルエットに変化が出ている。
ここ数年、タイトシルエットのスキニーパンツ一辺倒だったのが、ワイドシルエットのガウチョパンツに注目が集まっている。

これまで何度か「ワイドパンツが来る」と言われていたが、実現しなかった。
その理由について、フルレングスのワイドパンツはスキニーなどのタイトシルエットパンツに比べてスタイルが悪く見えやすいという点にあると考えている。

ワイドパンツが似合うためには

身長が高いこと
足が長いこと(お尻の位置が高めについていること)
華奢な体格であること

が条件に挙げられると思う。

この3つのうち、上の2つを満たす日本人女性はどちらかというと少数派である。
少数派は言い過ぎかもしれないが、決して多数派ではない。

男性にも同じことがいえる。

だからフルレングスのワイドパンツはマスアイテムにはならなかったのではないか。
筆者のような足の短くてゴツいオッサンがフルレングスのワイドパンツを穿くと武道か何かの術着の袴を穿いているように見えてしまう。
これは女性にもいえることである。

ところがガウチョパンツはワイドシルエットながらも丈が短めである。
ひざ下とかふくらはぎ半ばくらいであるから、ワイドパンツよりもすっきりと見える。
武道の袴に見えることもない。

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(オムニゴッドの今秋冬向けガウチョパンツ)

ただ、男性はガウチョパンツが穿きづらい。
将来的にはそんな着こなしも現れるかもしれないが、現状ではちょっと異様である。

そんなわけで、男性は引き続きスキニーやタイトシルエットパンツが主流となるだろう。
代わりとなるパンツが見当たらない。

さて、先日、久しぶりに綿100%のチノパンを穿いた。
一昨年ぐらいからストレッチ混の細身のパンツばかり買っている。
とくに昨年購入したパンツはすべてストレッチ混である。

そんな状況だから綿100%のチノパンを久しぶりに穿くと、ちょっと動きにくいと感じた。
不快と言えば言い過ぎだが、決して快適ではなかった。

これがガウチョパンツのようなワイドシルエットならノンストレッチでもさほど気にならなかっただろうが、スリムやレギュラーストレートくらいの細さならノンストレッチはやはりストレスになる。
これはジーンズでも同じである。

ジーンズのトレンドがリラックスストレートやワイドシルエットに戻らない限り、ノンストレッチのデニム生地の細身のパンツは穿く側に相当のストレスを与える。

もちろん、綿100%デニムの愛好家もおられるからその市場は一定の需要を維持すると考えられるが、マスマーケットは今後もストレッチ混は標準装備になるのではないか。
45歳のオッサン(先日、誕生日を迎えた)になると、素材のこだわりなんかはっきり言ってどうでも良くなり、快適であることが最重点課題になる。

ストレッチ性がある、吸水速乾性がある、涼感・接触冷感がある、保温性が高い、軽量である、などなどだ。

いくら「伝統の素材を再現しました」とか「伝統の技法で作られました」とか言われても、機能性が低ければ着用意欲は減退してしまう。
若い人とかファッショニスタとか呼ばれるような人は別だろうが、45歳のしょぼくれたオッサンにとっては「楽」であることが一番重要であり、そう考える年配層は多いのではないか。

先日、WWDに合繊メーカー系のデニム生地の需要が高まっているという記事が掲載されたが、これは納得である。綿100%を得意とする紡績系よりも、機能素材を得意とする合繊メーカー系の方がそういう分野は得意だからだ。
マス市場はやはり快適性を求める人が多いと推察される。

となると、古くからのジーンズ業界がアピールするような綿100%のこだわりデニム生地というのは、今後も需要はなくなりはしないが、大きく需要を回復することはないのではないか。
逆に、セルビッジデニム生地でさえもストレッチ混が標準装備になるのではないだろうか。

いわゆるニッチ市場やコアなファン層を狙うなら、「こだわり」の綿100%デニム素材は大きな武器になるが、マス市場を狙うならストレッチ混も含めた機能素材デニムが必要となるだろう。

「うちはコアなファンさえ支持してくれたら良い」というスタンスのメーカーやブランドは例外として、ある程度のマス市場を狙いたいのなら、機能性デニム生地を使用したアイテムをメインに据えなくてはならない。
「ストレッチ混は邪道だ」なんていう思考のままでは、マス市場に向けた商品は永遠に作れない。
ジーンズ専業メーカーは一部を除いてますます存在価値をなくし、SPAブランドにさらに埋没してしまうだろう。