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南充浩 オフィシャルブログ

スポーツでもなくカジュアルでもないサーフブランドは中途半端な存在

2015年4月24日 未分類 0

 「Beach Sound」「natuRAL vintage」などの直営店舗を運営していたアートヴィレッヂが経営破綻し、民事再生法を申請した。負債総額は39億8000万円である。

http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/4038.html

当社は、1975年(昭和50年)4月の設立。製造から小売まで手がけるSPA事業を主力に、メンズ、レディースのヤングカジュアルウエアの小売および卸を手がけていた。サーフブランドの老舗「BODY GLOVE」「LOST」など、常時10種類程度のブランドを扱っていた。2001年に直営店を出店したのを皮切りに積極的に新規出店を進め、「Beach Sound」「natuRAL vintage」などの店舗名で全国に展開し、2009年2月期の年売上高は約99億1700万円を計上していた。

とある。

しかし、

しかし、レディース事業の失敗により在庫が膨らみ、財務内容が悪化するなか、2011年3月に発生した東日本大震災の影響で一部店舗が被災。計画停電の影響などから売り上げが減少したことで資金繰りが悪化していた。その後は金融機関や取引先に支払い条件の変更を要請し、不採算店舗の閉鎖、人員整理、在庫の圧縮など再建計画に取り組んでいたが奏功せず、2014年2月期の年売上高は約41億5200万円にまで落ち込むなか、ここにきて民事再生法による再建を目指すこととなった。

とのことだ。

ピーク時の2009年に100億円の売上高があったが、その5年後の2014年には41億円強にまで売り上げだが定価しており、実に6割減である。
5年という短期間に6割もの売上高が減少すれば経営破綻しても当然である。

この少し前の今年の2月には「波乗達人」「波王」ブランドを展開していたアパレル、ブレイクスルーが破産した。
こちらの負債は5億7000万円で、売上高はピーク時で8億円程度しかなかった。
ブランドの知名度の割には意外に少ないという印象を受けた。

http://www.excite.co.jp/News/economy_g/20150213/Tsr_tsr20150213_01.html

この2社に共通するのがサーフカジュアルブランドを展開するアパレルだというところである。

個人的な意見だが、サーフカジュアルブランドの人気を長続きさせることは非常に難しいと感じる。

サーフブランドとはいうものの、具体的には何が主力かというとグラフィックプリントTシャツである。
筆者はサーフブランドにまったく魅力を感じていないから見方が厳しいかもしれないが、要するに消費者の評価基準はグラフィックデザインの良し悪ししかないと見ている。

これがナイキやアディダスを筆頭とするスポーツブランドなら機能素材を使ったカジュアルという切り口がある。
しかし、筆者の知る限りにおいてはサーフブランドで積極的に機能素材を使用しているブランドはほとんどない。
綿100%Tシャツがメインで、そこにどんなグラフィックを載せるかということしか差別化要素がない。
筆者にはそう見える。

しかもそのグラフィックが筆者の好みではない。
やたら暑苦しいというかむさくるしいというかそんな印象を受ける。

これならまだ美濃屋のコンバースのTシャツを買った方が良いのではないかと思う。

そしてグラフィックプリントが商品販売の生命線なので、プリントの図柄がどんどんとエスカレートしていく。
暑苦しさむさくるしさ、胡散臭さはシーズンを追うごとに増す。
どんどんと過剰装飾になっていく。これは仕方がない側面もあるのだが、個人的には好きではない。

卸売り先として当初はサーフショップを狙うブランドが多いが、日本におけるサーフショップは小規模な個人経営店しかないため、早々に量販店や大手チェーン店へと切り替える。
しかし、量販店にも大手チェーン店にもサーフブランドは掃いて捨てるほどあふれかえっている。
その中で激しい競争があるわけだが、一般消費者からするとどれも同じに見えている。

それではダメだからというので、グラフィックプリントをどんどんと派手で目立つようにするが、派手で目立たせすぎた結果、それを買うのは柄の悪いヤンキー層のみということになる。
これでスポイルされるサーフブランドは数多くあった。

昨今は、卸売りにも限界を感じてSPA化するサーフブランドアパレルがある。

破綻したアートビレッヂもそうだし、ビラボンジャパンもそうだといえる。

SPA化するためにはトータルアイテムが必要となる。
いっそのこと割り切ってグラニフのようにTシャツ専門SPAになっても良いのではないかと思うが、どうも彼らはトータル化したいようだ。

しかし、トータル化するといっても最大の売りはTシャツである。
それ以外のアイテムを企画製造するのはこのご時世だから金さえ出せばいくらでもできるが、Tシャツ以外のアイテムにそれほどのステイタス性はない。

例えば、クイックシルバーやビラボンのジーンズなんて欲しいと思う人が数多くいるだろうか?
筆者はいないと思う。
ジーンズならジーンズブランド、もしくはセレクトショップかジーンズチェーン店のプライベートブランド、あとはユニクロだろう。

ジーンズが欲しいからサーフブランドのSPA店で探すという人はかなりの少数派だろう。

ダウンジャケットしかり、セーターしかり、カジュアルジャケットしかり、である。

筆者は、サーフブランドは消費者からTシャツとポロシャツ、トレーナー類とカジュアルショートパンツ、あとは小物雑貨、水着しか求められていないと思っている。

サーフブランドアパレルが一定の規模から凋落するのは自然なことだと感じる。
大規模化するとその凋落は必然であるし、ブレイクスルーのように細々と展開していてもいずれはどこかで行き詰る場合が多い。

大規模化して凋落したのが今回のアートビレッヂだし、経営は破綻していないが代表例がクリムゾンだといえる。

「ピコ」「タウン&カントリー」「ラスK」などのサーフブランドしか展開していなかったクリムゾンは卸売りだけでピーク時には180億円以上の売上高があった。
2015年1月期の売上高はわずかに5億9400万円しかない。
ピーク時はおそらく2005年ごろだったと記憶している。
わずか10年間で40分の1近くまで縮小している。
これでよく経営破綻しないものだと驚くほかない。

クリムゾンがピコで犯した失敗は、グラフィックをどんどんと派手にしていったことにもその一因があると見ている。売り場で目立たせるためには仕方がなかったのかもしれないが、派手になりすぎればマス層は嫌う。

筆者にはサーフブランドが非常に中途半端なブランドだと見える。
スポーツでもないしカジュアルでもない。
どっちつかずの存在であることがサーフブランドが今一つメジャーになりきれない理由の一つだと思う。

日本市場でのサーフブランドは、カリスマのある個人経営者が少人数を集めて、数億円くらいを30年間稼いでそして経営者の引退とともにブランドを終わらせる。という構図がもっとも適していると考えている。

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