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南充浩 オフィシャルブログ

作る側と売る側で「日本製」に対する意識は異なる

2015年4月16日 未分類 0

 最近、注目を集めている「日本製」「メイドインジャパン」だが、経産省や業界のオエライさんの思惑通りには動いていない側面もあるようだ。

「日本製」商品は主に外国人観光客が買うといわれているが、実はそこにはあまりこだわらない外国人観光客も多い。
昨年夏から販売の手伝いをしている天神橋筋商店街の処分屋だが、今年の2月の旧正月のころは中国人客が多かった。
こんなマニアックな市場にもわざわざ買い物に来るのかと感心したが、よく考えてみれば、バブル期の日本人もヨーロッパへ観光に出かけ、地元の人しか使わないようなマニアックな市場で好んで買い物をしていたから、同じような感覚なのだろう。

この店に来る観光客は「日本製」であることは求めていない。
彼らは「安さ」+デザインで購入する。

今月に入ってからは中国人は減ったが反対にタイ人が増えた。
タイの旧正月連休があったようだ。
彼らもまた「日本製」にはこだわらない。価格+デザインが購入動機である。

外国人観光客が常に「日本製衣料」を求めているわけではない。

また業界内からは「日本人は思ったほど日本製衣料を買わない。なぜだ?」という疑問の声もあるが、冷静に考えれば当たり前である。
イタリア人が全員「イタリア製衣料」を、アメリカ人が全員「アメリカ製衣料」を求めているわけではない。

現地価格でもそれなりの高額品になってしまうイタリア製衣料をイタリア人全員が欲しがっているわけではない。むしろ、低所得者なら「欲しくても買えない・買わない」か「最初から欲しいとも思わない」のどちらかだろう。
日本と異なり、低所得者が背伸びをして高額ブランドを買うなんてことがないのが欧米各国であるからなおさらである。

日本人が日本製衣料を思ったほど欲しがらないのは、驚くほどのことではない。

そんな「日本製衣料」を巡る思惑のズレについて繊研プラスに面白いアンケートが掲載されている。

ここでは作る側と売る側の思惑のズレを取り上げている。

メードインジャパン、売る側と作る側
http://www.senken.co.jp/news/company-news/madeinjapan-senken-research/

繊研新聞社のアンケート調査によると「メード・イン・ジャパン」製品の販売量がアパレル・小売の51.6%で増えている。一方、製造業では「増えた」と回答した企業は32.7%で「変わらない」が55.1%だった。

アパレル・小売り側はなんだかんだとそれらしい建前論を述べているが、本音を言えば「増やした理由はブームだから」だろう。小売り側からすれば「売れれば何でも良い」のである。
その象徴がかつてのルミネだろう。散々全館セールを連発しておきながら、「産地保護のために」という建前論を掲げてセールを後倒しした。「産地保護」を今更掲げるくらいなら、なぜそれまでセールを前倒ししてきたのかと不思議でならない。
なぜ突然産地保護を思い立ったのか。随分と急な心変わりもあるものである。

個人的にはルミネは「売れるためにはなんでも利用する」という姿勢なのだと感じる。
そして他の小売業も大なり小なりルミネと同じだと感じている。

また

環境変化を踏まえ「増やしたい」とする企業があるが、セレクトショップを中心に「元々の生産量が多く変わらない」(シップス)との回答もあった。

とのことだが、国産ブランドオンリーの「ステュディオス」はともかくとして、他の大手セレクトショップがそんなに「日本製の生産量が元々多かった」だろうか?直近の「シップス」の状況はどうだか知らないけれど。

一般的に大手セレクトショップは構成比率で6割~8割近くが自社オリジナル品になっているが、そのうちのほとんどが中国製なりアジア製である。
自社オリジナル品は基本的に価格を安めに抑えているが、あの価格帯で日本製品は製造できない。もし製造するとしたら莫大な生産量になるか、製造工賃を極度に叩いているかのどちらかだろう。

ただ、面白いのはアパレル・小売り側は「日本製を増やした(売り易いから)」ことに対して、多くの製造側は変わらないと答えていることである。
製造量を増やすには、生産ラインのキャパを広げる必要がある。それに伴って人員増が必要だし、場合によっては機械設備も増やさねばならない。
国内の製造工場は経営的に脆弱なところが多いので、そう簡単にホイホイと人員を増やしたり機械設備を新設したりすることはできない。
よって、「変わらない」と答える先が多いということになる。

さらに

素材メーカーやOEM(相手先ブランドによる生産)を手掛ける商社は、「国内の生産能力が増えていないので変わらない」の回答が多く、工場を持つアパレルからは「ブームだからといって内外の生産バランスは変えない」と現実的な声もあった。

とのことだが、これが製造側の置かれた現実である。
国内の生産能力は増えていない。もしかしたら減り続けているかもしれない。

個人的には今後、よほどのことがない限り国内の生産能力が増えることはありえず、このまま減り続けていくと考えている。

今回の日本製ブームにはずいぶんと便乗もあるようだ。
先日、フェイスブック友達がちょっとぼやいていた。

「韓国素材使用なんやけどな~」

と。

その商品に付けるタグにはこんなことが書かれてある。

 
         日本製    

 この商品は厳選された素材を使用し、
 国内の企画と管理のもとに、ハイレベルの
 編立・縫製技術を持った商品です。
 
 独特の豊かな風合いと着心地を
 いつまでもご愛用ください。           
                             」

韓国素材品にこんなタグを付けるのはほとんど詐欺行為に近い。
しかもタグに書かれてある日本語が文法的におかしい。

こういう便乗詐欺みたいなアパレルブランドも今後はさらに多く現れるだろう。

まったくヤレヤレである。

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