国内の繊維製造・加工業に人材が集まらないという嘆きをよく耳にする。
最年少の工員が60代だという工場なんて珍しくない。
若い人が入ってこないからだ。

その穴を外国人実習生で埋めているのが現状である。

これに対して業界人がいくら嘆いても無駄であるというのが個人的な考えだ。

2つの理由がある。

1、そういう仕事があり、広く人材を募集しているということがあまり知られていない
2、工員の待遇が他業種に比べて低いから

この2点に尽きるのではないか。

例えば、ファッション専門学校において縫製工場や織布工場、染色加工場への就職を積極的に勧めている学校がいくつ存在するだろうか?
ほとんどないのではないか。

またそうした工場が専門学校へ求人を送ることがあるだろうか?
これもほとんどないのではないか。

乏しい経験上でいうなら、両方ともほとんどない。

知られていないのは存在しないのも同じだから、工場そのものも、工場の求人も存在しないのと同じである。

つぎに、工員の給与が低いことが挙げられる。

劣悪な工場経営者ばかりではない。
しかし、アパレルやブランドからの工賃が削られる一方の現状では給与を上げるどころか下げなくてはならない。
最低賃金ギリギリのような職場に好き好んで就職したがるような若者はそういないだろう。
しかもその業種が衰退業種となればなおさらだ。

だから多くの工場は低い賃金で使える外国人実習生で支えられている。

この現状を指して、オエライ人々が現状を嘆くのはお門違いである。
だったらご自分の縁者の若者を低賃金の工場で働かせれば良いのである。

ご自分の縁者にできないことを他人に求めるのは思い上がりだろう。

そんな状況から「日本人の若者はダメだ」という論調も聞こえてくるが、実は中国でだって繊維製造業の工員は集まりにくくなっている。
給与の低い職場で働きたくないのは日本人も中国人も、その他アジア人も同じである。
みんな少しでも美味しい目に合いたい。これが人間の本質である。

この問題を緩和させるには工場の給与を上げるしかない。
となると、工賃を上げるしかない。

工賃が上がると洋服の店頭販売価格は必然的に上がる。

洋服の値段を全般的に上げることは不可能だろう。
高価格帯の洋服が欲しい人ばかりではない。
低価格品で十分という消費者も多い。

洋服が高価格帯のみになると、おそらく着物のような好事家・趣味の世界になるだろう。

果たしてそれでアパレル産業が成り立つだろうか?
工業としての工場が成り立つだろうか?

おそらく成り立たない。家内制手工業の時代に逆戻りだろう。
そうなれば国内アパレル企業は衰退し、外資系グローバルSPAブランドの独壇場になると予測できる。

それはさておき。

工賃の高い繊維製造工場を目指すというプランはある。
ただし、それを実行して成功できるのはほんの一握りだろう。
全国内工場が実施して等しく成功することは不可能である。

それを実施するのもしないのも経営者の判断次第である。
することが善だとも、しないことが悪だともいえない。
結果的に事業が永続できれば良いのである。(もちろん、ひどい法令違反は論外)

国内の繊維製造・加工場は何らかのプランを採用して自衛するほかはない。