創業者である森島純嗣氏が退職をして完全新体制となった遊心クリエーションだが、2月24日の繊研プラスに現状と今後の方針に関する記事が掲載された。

遊心クリエイション各事業の基礎固め
http://www.senken.co.jp/news/yushin-creation-kuboki/

卸売り事業を廃止してしまったので、現在のところ、同社の最大の柱はイーブスである。
そのイーブスだが、個人的には伸び悩みが続いていたと見ている。

レディス・メンズのウエアと雑貨のイーブスは、期初に39店あったが不採算の7店を閉め、32店にした。販売面では従来は8割の店で販売代行に任せていたが今は2~3割に減らした。直営化することでモチベーションが上がり、前年比4割以上伸ばす店も出てきた。

とのことである。

イーブスの特徴は低価格でトレンド性の高いことにある。
いわゆる低価格SPAだが、販売に関してはこれまではほとんどが販売代行に任せられてきた。

改善すべき課題として挙げられるのは、まず店舗数が少なすぎることである。
低価格SPAを実現するキモの部分の一つには、圧倒的な生産数量で1枚あたりの製造コストを下げるということがある。
洋服は工業製品であるから、生産数量が多くなればなるほど1枚当たりの製造コストが下がる。
例えば、1枚きりのサンプルを縫製するなら、工賃は安くても数万円になる。
しかし、これが100枚になると1枚当たりの縫製工賃はグンとさがる。

だから低価格商品を実現するためには生産数量を圧倒的に増やすことが近道となる。

しかし、イーブスの30店という規模では生産数量はそれほど多くない。
1店舗あたり1アイテム20枚ずつを配布するとしても600枚にすぎない。
そのために、繊研の記事中にあるように、「これまでは重点アイテムを作りこんで売る〝たて売り〟の手法」を採ったのだろう。
そうしないと生産数量が増えないからだ。

これからも「低価格SPA」を掲げるつもりなら店舗数を急ピッチで増やすことが求められる。
早々に100店舗体制を構築する必要があるだろう。

1店舗出店するのには莫大な費用が必要だから、売上高58億円の会社では急ピッチでの出店は難しかったと思うが、昨年11月に日鉄住金物産の100%子会社化されたのなら、少なくとも資金面での心配はなくなった。
ただし、日鉄住金物産がどこまで本腰を入れる気なのかにもよるが。

同じ課題は、雑貨店「ASOKO」にも共通である。
現在4店舗を展開しているが、オリジナル商品を製造するなら生産数量が少なすぎる。
雑貨類は衣料品よりも生産のミニマムロットが大きいから4店舗くらいではまったく製造コストに合わない。
早急に店舗網を拡大する必要があるが、単に出店すれば良いというわけではなく、物流システムの構築も必須だから一足飛びに増やすことはかなりの力技が求められる。

次に、ブランドコンセプトの刷新が必要ではないか。
イーブスがスタートした当初のコンセプトは「低価格トレンドSPA」だった。
筆者も何度か取材したが、ブランドの冠言葉は「低価格SPAブランド」だったので、そのように書いたら媒体側から「こんな冠言葉で良いんですか?」と再確認された記憶がある。
そこで再度ブランド側に問い合わせると、「そのままの冠言葉で結構です」という返答をもらって一件落着したということがあった。
何しろ、ブランド側からいただいた正式書面にそう書いてあったのだ。

ブランド開始からすくなくとも5年以上が経過している。
スタート当初は、低価格SPAの多くはユニクロに代表されるベーシック商品が多かった。
トレンド対応は外資系のH&M、ZARAくらいだった。
しかし、現在はトレンド対応の低価格SPAブランドも増えた。

そうなると、単なる「トレンド対応の低価格」というだけでは他社に埋没してしまう。
もう一つ何かプラスアルファの打ち出しが必要となる。
それをどう設定するかが課題だろう。

それと、販売代行を減らして直営店比率を増やしたというが、これは士気向上には役立ったが、販管費が大幅に増えたことになる。
このあたりのバランスを現経営陣と日鉄住金物産はどう考えるのか。
コスト面だけを見ると増えることは間違いない。
それを「必要経費なので問題ない」と見るのか、「それでもコストは削減しなければならない」と見るのかは経営陣と親会社次第だろう。

これらの諸問題を放置したままでは成長はありえない。
なんとかうまく処理して成長してもらいたいと思っているのだが。