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南充浩 オフィシャルブログ

一皮むけた展示を見せたクラボウ秋冬素材展

2015年3月6日 展示会レポート 0

 先日、クラボウのテキスタイルファッション課の2015秋冬展示会にお邪魔した。
カジュアルアイテム向けの素材展である。それにしてもクラボウの素材展を覗くのは久しぶりだ。

何でも今回から展示方法を一新したという。

さっそく会場に入ってみると、たしかに展示方法が通常の素材メーカーの展示会とは異なる。
それが一目でわかった。

製品のサンプルがメインで展示されているし、棚やハンガーなどの什器もオリジナルで製作されており、アパレルショップの店頭をイメージさせるものとなっている。

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(ショップ店頭風にまとめられた展示)

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(ハンガーもオリジナルで製作)

瀧定大阪や瀧定名古屋、サンウェルなどの大手生地問屋の展示会では、数年くらい前から製品サンプルを積極的に展示していたが、素材メーカーでここまで製品サンプル群を構築した展示方法は珍しい。

ターゲットはアパレルブランドやSPAブランドの企画担当者だが、素材メーカーがなぜここまで製品サンプルを作り込むのかというと、それはブランドの企画担当者が素材を見て製品をイメージする力を低下させているからだ。
正確にいうと、ブランドの企画担当者がそれまでは製品をイメージする力があったのに、ある時期から急にその力を低下させたわけではない。
そういう力を持った企画担当者は今も変わっていない。

問題は、ある時期以降で採用された企画担当者が、そういう能力をほとんど育成されないままに今に至っていることである。

大手生地問屋が早くから製品サンプル展示を積極的に進めたのも同じ理由だ。
生地だけを展示していては、それで何を作ったら良いのかわからないというブランドの企画担当者が増えたためである。

そういう企画担当者に向けて、製品展示をすることはビジネス的には理に適っている。
素材メーカーや生地問屋の受注が増える可能性があるからだ。

また、クラボウの場合は、糸、生地製造以外にもアパレル向けOEM製造の機能もある。
糸、生地を販売する以外にも、今回の製品サンプルを欲しがるアパレルブランドにはOEM部門として対応することも可能である。

しかし、素材メーカーにここまで製品対応をされることで、アパレルブランド側の企画担当者の能力はさらに低下してしまうのではないかという危惧も感じた。

全体を5つのコンセプト分けてある。

「世界のコットン」
「ランドリー」
「ハードトリック」
「ポケットテイラー」
「ベビーローブ」

である。

「世界のコットン」は
オーストラリア、中国、インド、ペルー、タンザニア、アメリカの6か国の綿花で繊維長別にそれぞれ異なる打ち出しをしている。

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(国別に展示)

「ハードトリック」は肉厚で凹凸感があるが、ツーウェイストレッチ機能がある素材

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(これでもツーウェイストレッチ素材)

「ランドリー」はポリエステル中空糸とカポックを使った素材群。
軽量と速乾性に特徴がある。
このカポックだが、10年ほど前に新素材として各素材メーカーから提案されたことがある。
特徴は綿のような風合いで圧倒的に軽いところにある。中空率は80%。
しかし、紡績が難しいのかその後あまり広まらずに終わってしまった。
通常のカポック混素材は10~20%程度だが、これをクラボウは独自技術で50%の混率にまで高めることができたという。

「ポケットテイラー」はポケッタブルウェアに適した合繊混の軽量素材。

「ベビーローブ」でも綿50%・カポック50%素材を使用。起毛加工と仕上げ加工で、ソフト感を打ち出した。

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(白で統一したベビーローブ素材群の展示)

今回がリニューアル第1弾であり、
今後は年4回のペースで開催する計画である。

見せ方はしばらくこれを続け、毎回、数種類のコンセプトグループを提案する。

クラボウと取引を行うかどうかは別としてカジュアルアパレルの企画担当者は見ておいて損はないと感じた出来栄えだった。

それにしても素材メーカーにここまで対応されてしまえば、アパレルの企画部門はますます弱体化するのではないかとも感じる。
物事には必ず長所と短所が同時に存在するが、なかなか難しいものである。

それはさておき、次会以降のクラボウの展示会にも期待したいと思う。

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