今、注目を集めているのが大塚家具の親子の争いであろう。
大塚家具の親子争いに関してはさまざまな分析記事が出ているが、そのレベルはピンキリである。
その中でもっとも秀逸だと感じたのが先日の東洋経済オンラインの記事である。

今回はそれをご紹介したい。
そこには家具業界だけではなく、アパレルやその他の業種にも通じることが書かれてある。

大塚家具、「お家騒動」で見落とされた本質

家具業界への2つの革命と3つの減速要因
http://toyokeizai.net/articles/-/61988

長い記事なので詳細は全文をお読みになっていただきたいが、特に注目したいのは以下の部分である。

2点目は、なんといっても商品のアピール力だ。高級品購買層にはまだ大塚家具は強みを発揮している。問題は、中間層だ。筆者のような「良い家具にこしたことはないけれど、ニトリでじゅうぶん」という正直な感想をもつ購買層は、他社に逃げていった。実際に、イケアやニトリ、そしてカッシーナといった同業他社が好調の中、大塚家具は低迷にあえいだ。

もちろん異論をお持ちの方もいようが、筆者の周りに聞いてみると大塚家具に優位性を感じているひとは少なく、「高そう」「店員さんがくっついてくるのがイヤだった」「いつもすぐ引っ越すから安くていい」「いまいち良い家具かわからなかった」という本音が出てきた。もちろん高尚な議論もできるだろうが、なによりもマスイメージとして競合他社に後塵を拝したのが大きいように思う。

とのことである。

これはアパレル業界にも言えることではないだろうか。
ニトリをユニクロに、大塚家具を百貨店・専門店向けアパレルに入れ替えればそっくりそのままではないか。

我々を中間層と言って良いのかどうかはちょっとためらいがあるが、マスマーケットが「良い服にこしたことはないけれど、ユニクロでじゅうぶん」と考えていることは異論がないだろう。
だから、昨年秋冬から値上げしても買い上げ客数は落ちないのである。
また値上げしたと言っても、百貨店向けブランドや専門店向けブランドと比べるとまだ安い。
十分に庶民が買える値段帯である。

そして、

3つ目は、お家騒動のことだが、勝久会長と久美子社長ではおそらく会社経営の考え方に大きな違いがある。大塚勝久会長は家具が好きで、家具に合わせて家を替えるといい、さらに誰も勝てないほど家具バイヤーとして一流だった。すなわち、その卓越さゆえに、ワンマンにならざるを得ない側面があった。

である。

これもアパレルにありがちである。
独自のセンスを持ったカリスマ経営者である。
しかし、カリスマはそのうちに老いる。
老いなくても長期間君臨している間に、カリスマの感覚と世情がズレる。
これは避けようがない。

カリスマ経営者が時代の変化に対応できずに会社を潰したことはアパレル業界では珍しくない。
カリスマの作り上げたモデルはいつしか時代に適応できなくなる。
それが個人のセンスに支えられたものならなおさらだ。
個人のセンスほど脆い物はない。

個人のセンスが、どの時代にも適応するような普遍のモデルになることはありえない。

アパレル業界には、「服好き」で「卓越したセンス」を持つカリスマが多数存在する。
そういう人たちはユニクロを否定する。もしくはユニクロを買う消費者を否定する。
「ユニクロは邪道だ」とか「消費者の感性が退化した」とか。
しかし、それは少数派の意見であり、この大塚会長がニトリやイケアを否定するのと同じである。
一般消費者の大多数は大塚会長ほど家具が好きでもないし、目利きでもない。
ニトリやイケアでじゅうぶんなのである。
そしてニトリやイケアのデザインセンスは悪くはない。とびきりではないが、落第点でもない。
ほどほどそこそこにおしゃれ感もある。

アパレル業界のカリスマほどには一般消費者は服が好きでもないし、目利きでもない。
彼らの多くにはユニクロでじゅうぶんなのである。
そして、昔はともかくとして今のユニクロは見た目のデザインはほどほどでそこそこに良い。
ユニクロに限らず、無印良品にしろハニーズにしろライトオン、ポイント、ウィゴー、ジーユーみな同様である。

そして最後はこう締めくくられている。

市場環境の変化によって中間消費者層を競合他社に奪われ、創業者個人で引っ張ってきた組織のゆがみが露呈した。こう考えると、まるで大塚家具だけではなく、いくつもの日本企業で共通している内容だ。大塚家具を舞台にしたお家騒動は、日本のあちこちで起きていることを象徴しているように思えてならない。

と。

これもまさしくその通りで、カリスマ創業者が長期君臨したことによるゆがみは、何も家具業界だけではなくどの業界でも生じる。
アパレル業界も百貨店業界もGMS業界も。それで潰れた企業がいくつあっただろうか。
旧そごうしかり、旧ダイエーしかり。

今後、ユニクロやポイントがそうならないとは限らない。なりえる可能性も十分にある。

蛇足だが、大塚家具が赤字転落した理由も述べられている。
それはもともと薄利だったため、販売点数が下がれば利益も下がるということである。
記事中にあるように利益率はほぼ変わっていない。
販売点数が下がればそれに比例して利益も薄くなり、そして赤字転落してしまったということである。
これもアパレルでもありがちな現象ではないか。

かといって、原価率をむやみに引き下げて粗悪品に高額な値段を付けるのもどうかと思う。
某百貨店アパレルのように原価率18%の商品なんてユニクロ商品以下である。

閑話休題

大塚家具の経営者がどちらになるのかはわからないが、もし大塚会長が返り咲くようなことがあったとして、ニトリやイケアで十分という大多数の一般消費者の感覚が理解できなければさらに赤字が続くだろう。
そしてこれと同じことはアパレル業界にも言えることで、カリスマがユニクロやその他低価格SPAで十分という多くの一般消費者の感覚が理解できないのであれば、業界全体の低迷はまだまだ続くことになるだろう。

そういう観点からこの東洋経済の記事は非常に秀逸だったといえる。