給与事情が悪いと言われるアパレル・繊維業界だが、アニメーターの待遇よりはマシである。
しかし、皮肉なことに福利厚生が薄いこの2つの業種を国はクールジャパンの代表例として捉えている。

ベテランの女性アニメーターに神村幸子さんという方がおられる。
筆者はテレビアニメ「シティーハンター」のキャラクターデザインを担当された方として記憶している。
週刊少年ジャンプに掲載された「シティーハンター」のアニメ版である。
その後、劇場版アニメとオリジナルビデオアニメ「アルスラーン戦記」のキャラクターデザインも務められた。

「シティーハンター」は原作漫画があるので、それに似せてキャラクターデザインをされたが、「アルスラーン戦記」はファンタジー歴史小説なので絵柄に制約がない。
そのため、おそらく「アルスラーン戦記」の方が彼女自身のオリジナルな絵柄に近かったのではないかと推測している。

その神村さんが自身のブログで、アニメーターの待遇改善を訴えておられる。

新人アニメーターは時給120円  という現実
http://yaneurablog.blogspot.jp/2015/02/blog-post_33.html

新人アニメーターを、せめて契約社員か固定給契約で採用して下さい。

新人アニメーターを、3万円で月250時間働かせるのはあまりにも酷です。いつもおなかを空かせていて、だんだんやせていく新人アニメーターを見ていると、もうなんといっていいかわからないほどつらい。悲しすぎる。

学校出たての新人が、いきなりプロ水準の仕事で食べていけるわけ、ないじゃありませんか。あまりに無茶な設定です。

3ヶ月程度たてば800枚描けて16万円くらい稼げるようになる、なんて書いてあるサイトもありますが、そんなのは20年前の話です。
現実とかけ離れすぎています。

どれほどキャリアのある優秀な動画検査でも、今風の絵柄の作品で、1ヶ月に動画を800枚描くことは不可能です。
動画の仕事は、昔と違い、とても繊細で丁寧な仕事に変わってきているんです。品質水準の要求が、年を追うごとに、どんどん高くなってきているんです。

能力の高い人が、睡眠時間を削り、休日なしで最大限働いても、1ヶ月に500枚の動画を描くのがやっとです。

せめて固定給10万円以上で、新人アニメーターを採用してあげてもらえませんか。
彼女ら彼らは9時~5時以上に働くはずです。

不採算なのはわかっています。でも不採算になる原因は、あり得ない予算配分と単価設定のためであり、新人アニメーターの働きが悪いためではありません。

とある。

酷い待遇である。
昔からアニメーター(ベテランも含む)の待遇が劣悪なことは有名であった。
が、その劣悪さはさらに増しているといえる。

待遇が悪いと言われているアパレル・繊維業界でもここまでではないだろう。
販売員も給与が低いといわれているがここまでではない。これほどの悪環境なら求人応募がない。
現在は、労働力不足による売り手市場だから好んでそんな劣悪な環境で働く必要もなくなっている。

20年くらい前からだろうか、アニメ番組のエンディングテロップで表示されるアニメーターにやたらと外国人が増えたのは。
動画や作画に南米系、中国系、韓国系の名前が多く表示されるようになった。
作品によっては動画や作画がほとんど外国人というのも少なくない。

あまりにも人件費が低いので外国人を使用するようになったのであり、そのあたりは縫製や織布、加工場が外国人研修生を使っているアパレル・繊維業界と同じ構造だといえる。

新人アニメーターと同じレベルの待遇はアパレル・繊維業界だとスタイリストのアシスタントくらいしかないだろう。そのほかの職種はもう少し給料が高い。

しかし、スタイリストは人気職種(意味が分からないけど)であるから志望する若者はそれなりに多いし、大規模産業でもないので、少人数が生き残ればそれで何とかなる業種でもあるが、製造業・加工業はそんなわけには行かない。
アニメーターも同じで圧倒的に労働集約的な産業である。
それはコンピューターグラフィックに置き換わっても同じだろうと考えられる。

アパレル製品では「日本製」が注目されているが、織布工場、加工場、縫製工場には多数のアジア人研修生が働いており、日本製の多くはメイドバイアジアンなのである。
理由は工賃が安すぎるからである。
アジア人研修生制度を廃止すれば全国の縫製工場の半数以上が倒産すると言われている。

この根本を解決しない限り、いくら「日本製」の花火を打ち上げたところで、10年後には多くの工場が廃業か倒産しているだろう。
縫製だけでなく織布も加工も。

アニメも同じである。
20年ほど前から動画の多くは外国人が請け負っているわけだから、いずれ外国にアニメの水準が追いつかれてしまう。
もしかしたらあまり知られていないだけで追いつかれているのかもしれない。

あとどれくらい「日本アニメ」がステイタス性を維持できるのだろうか。
そう長くはないような気がする。

クールジャパンの2枚看板がそろって同じような状況に置かれているということには失笑を禁じ得ない。