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南充浩 オフィシャルブログ

高額なだけの商品では富裕層にも海外市場にも売れない

2015年2月17日 未分類 0

 何を書こうかな~と思っていたら、こんな記事の一節を目にした。
これまで何度も国内繊維産地の会合で目にした光景で思わず、デジャヴに襲われた。
デジャヴにひどく心をゆすぶられたので是非とも紹介したいと思ってしまった。

特産品で地方創生ができるという「幻想」

自治体がからむプロジェクトは失敗だらけ
http://toyokeizai.net/articles/-/60862

もうこのタイトルだけで十分に伝わる内容だが、個人的にはここでいう自治体には「国」も含まれていると感じる。
以下に、デジャヴ満載の箇所を引用する。

小売店の売り場をみればわかる通り、特産品だけでなく、さまざまなメーカーの商品が競合になります。そのため、商品を作ったはいいが、「全く売れない」どころか、「そもそも売り場さえ確保できない」ということも、ごく普通に起こります。

そうそう。売り先を確保する前から商品開発が始まる。
何社かの創業も間近で見て来たから売り場を確保するというのは、大変な作業であることは承知している。
簡単に確保できるものではない。
しかし、ターゲットとする売り場設定さえせずに商品作りを行うのは疑問だ。
産地の人が、「漠然と百貨店」「漠然とセレクトショップ」ということは耳にするが、じゃあその百貨店は阪急なのか伊勢丹なのか高島屋なのか大丸なのか。
その何階売り場なのか。

セレクトショップにしても同じである。
ビームスとユナイテッドアローズとトゥモローランドとジャーナルスタンダードとナノユニバースとパーマネントエイジではそれぞれ違う。
どこを想定しているかによって商品づくりは自ずと変わる。

とくに既視感にあふれるのは以下の一節である。

では、どうしてこのような商品が、次から次へと出てくるのでしょうか。背景には、特産品開発が、「地方の生産者」「加工者」「公務員」が中心となった「協議会組織」が中心となっていて、肝心の消費地の販売者や消費者の関与が希薄、という大きな構造問題があります。

つまり、基本が「作ってから売りに行く」という流れのため、初期の段階では販売者・消費者は、あまり声をかけられません。

そのため、価格を決める場合も、原材料費、加工費、流通費等を計算し、生産者や加工者がほしい利益を上乗せして割り出す、「コスト積み上げ型」であることが多く見られます。結果として、平気で「超高価格」になったりします。

もちろん、合理的な理由で高価格になっていれば良いのです。しかし、経費の積み上げだけで高価格になっただけというのは、「作り手」の勝手な都合であって、売ってくれる側や、買う消費者側にとっては受け入れられない話です。販売者も消費者も不在のままです。

そうすると、なんと、商品が高価格になったときの解決方法として「東京や、海外にいる富裕層に販売しよう」という話になったりします。ウソのような本当の話です。商品自体が富裕層に向けたものではない特産品を、単純に高値にするだけで「目の肥えた富裕層」に、売れるはずはありませんよね。

とのことで、昨今の繊維業界が盛んに唱える「富裕層に」「海外市場に」とまったく一致する。
国内販売価格2万円の小規模メーカーの「こだわりジーンズ」とやらを「海外富裕層」に現地価格数万円以上で販売しようという試みもこれと同列である。

何で目の肥えた海外富裕層が無名外国ブランドの数万円のジーンズを買うと思うのか。
同等価格のラグジュアリーブランドのジーンズを買うのが普通ではないのか。

2000年代後半には当時経済成長が著しかった中国市場へ売ろうという試みも多くあった。
じゃあ、中国人の好みはリサーチしているのか?というとそうではない。
製造原価が高すぎて国内では売れないから、経済成長の激しい中国なら売れるだろうという思いこみに過ぎなかった。

なら工程を簡略化して国内市場で売れる価格設定にするべきではないのか?
もしくはその高価格で売れるような商品デザインに仕上げ、プロモーション・販促・広報を展開するべきではないのか?

現在なら欧米、数年前なら中国市場を彼らが狙った理由は一つしかなかった。
「超高額だけど日本製なら売れるだろう」という思いこみだけである。
しかし、残念ながら、商品デザインも陳腐なもので、プロモーション・販促・広報がお粗末であれば、いくら「日本製」と言えども売れない。

反対に日本の消費者に尋ねてみたいが、衣料品、靴、バッグなどでステイタス性が高いのがイタリア製だが、商品デザインが良くなくて、プロモーション・販促・広報がお粗末だけども高品質で超高額な無名イタリアブランドの商品を買うだろうか?
筆者は多くの人が買わないと思う。

これと同じことである。

国内繊維産地のオリジナル製品作りはこれからもまだまだ始まると思うが、始まる前にもう一度先に述べたことを考え直してもらいたい。

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