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南充浩 オフィシャルブログ

福袋はお得ではない

2015年1月14日 未分類 0

 先日にも書いたように、1月2日にバーゲンに行った。
毎年欠かさず行くのだが、買う枚数は年々減少しており、今年は年始バーゲンではパンツ2本とセーター1枚、ネルシャツ1枚しか買わなかった。

1900円のパンツを買うにあたって試着して裾上げをお願いしたのだが、その際、店員さんが熱心に福袋の購入を勧めてくれた。
たしかに数枚入っていて1万円というのはお得だが、手持ちの服の枚数は結構あるから、不要な物をわざわざ買う気にはなれない。
家族分も含めてもうかれこれ10年くらいは福袋を買っていない。
今後も買うことはないだろう。

さて、福袋だが毎年何かしらの騒動が持ち上がる。
以前は、某有名セレクトショップと某無名メンズブランドが全く同じ内容の福袋を異なる値段で販売した(当然、有名セレクトの方が高い)という事件があったが、今年はマークスタイラーのアングリッドの福袋の内容がひどすぎるとして炎上してしまった。

ちなみに炎上までは行かないが、サマンサタバサの福袋に入っていた、LINEのスタンプ柄の財布もダサすぎるとして話題になった。

悲劇!人気ブランド【Ungrid】アングリッド福袋が返金•返品騒ぎに!2015年最強鬱袋説?
http://matome.naver.jp/odai/2142045388815024001

もうご存知の方も多いだろうが、寄せられたクレームというのはだいたい以下の通りになる。

『セールで80%OFFにされている商品ばかり!』
『店頭では販売されていないムック本の付録が1点としてカウントされてた!』
『穴の空いた服が入ってた』
『何かの匂いが染み付いていて臭くて着れない』
『ペラペラの服な時点でガッカリなのに去年の福袋と同じ服が入ってた!』
『血液らしきシミがついた服が入ってた』
『夏物のタンクトップが入っていた!』
『ニットがノースリーブだった!』
『昨年の福袋と同じ商品が入っていた!』
『直前に店頭でセールで2,000円で売られていたジャケットが入っていた!』
『ムック本の「付録」だった商品が入っていた!』

などなど。

これらの中には、クレームになって当然だと感じられるものもあるが、これにクレームをつけるのはやりすぎではないかと感じられるものもある。

この騒動の原因として、ブランド側と消費者側にそれぞれ問題があるのではないか。

参考までにこの記事も読んでみてもらいたい。

福袋クレーム騒動の理由
http://ameblo.jp/knitkitchen/entry-11976291852.html

まず、ブランド側の問題点は「買い煽り」と価格設定である。
内容物に比べて価格設定が高すぎる。

そして、コピーライティングが上手いがための「買い煽り」である。

「いまスグ着られる♪」

「アウターとニットが必ず♪」

「ひとつひとつに心をこめて」とか

本当に自らハードルを上げすぎている。

コピーライティングの上手さは分かるのだが、ハードルを上げすぎると当然失望したときの反動は大きくなる。

一方、消費者側の問題点は「福袋に期待しすぎ」ということに集約される。

以前も書いたがほんの10年前まで福袋とはブランドが不良在庫品を詰めて売る物だった。
当然、夏物もバンバン入っている。
ブランド側からすれば、廃棄処分にするよりは1枚あたり何百円かにでも現金化できる方が良い。
だから秋冬物だろうが、春夏物だろうが不良在庫品を詰めて販売していた。
サイズもバラバラである。
MサイズとLサイズが混在していることなんて当たり前、同じようなアイテムが重複することなんて当たり前だった。
またセーターばかり、コートばかりが数枚入っているなんていうのも当たり前だった。

その当時のブランドのスタッフからはよく、「12月に入ったら倉庫に行って、不良在庫を福袋に延々と詰める作業が待っている」と聞かされたものだった。

色柄サイズ別に分かれた福袋なんて登場したのはつい最近だ。
アイテムもきちんとコーディネイト一式そろっているなんていうのも最近になってだ。

福袋が元来の「不良在庫品処分」のままなら、色柄サイズ別、コーディネイト一式なんてそろえられるはずがない。
なぜそろえられるかというと、福袋用としてわざわざ製造しているからである。

新規製造品をもって、「定価数万円相当の物が1万円」なんて謳っているのだが、下手をすると景品表示法違反になるのではないかと考えられる。
なぜなら、安い福袋に詰めるために数万円相当の商品を本当に新規製造する間抜けなブランドなんて存在しない。そんなことをすればブランド側は大赤字になる。

新規製造する場合、福袋売価に見合う製造原価で製造している。

例えば、1万円の福袋に5枚入っていたとして、1枚あたりは平均2000円の売価となる。
この売価2000円に見合うように新規製造されているのである。
売価2000円なら製造原価は数百円というところだろう。

これに比べると、今回のアングリッドが福袋に入れていた80%オフになった商品の方が実際にはよほどお得である。元来、福袋とはそういう物を入れるための販促手法である。

この80%オフの商品は定価1万円で、値引き後2000円だったと仮定しよう。
1万円の商品なら製造原価はだいたい3000円内外である。
2000円にまで値引きして売ったということは相当に売れ行きが悪かったと見るべきで、色柄やシルエット、デザインなどの企画に失敗したといえるが、使用している生地や縫製仕様は原価3000円相当だと考えられる。

数百円で製造した福袋用の新規商品に比べると、生地や縫製仕様は格段に上質だといえる。

消費者から寄せられたクレームの中で、

・80%オフに下がった商品が入っていた
・夏物が入っていた

というのは、元来の福袋を知る者としては一体何が問題なのか理解できない。
反対にこれを不満だと思うように消費者を導いてきたアパレル業界全体の失態・失策だろう。

80%オフの商品と言ったって、先ほど見たように1万円内外の定価で実際に販売されていたものだから、それなりに製造原価は高い。
これが5枚入っていたとしたら、真に値打ちのある商品が集められたといえる。
少なくとも、1枚当たりの製造原価が数百円の商品が5枚詰められた福袋よりはずっとお値打ち品である。

また、夏物が入っていたというのも元来の福袋からすれば当たり前である。

今回に限らず毎年持ち上がる福袋騒動を見るにつけても、アパレル業界全体が消費者教育も含めて修正に取り組むべきだと思うのだが。

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