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南充浩 オフィシャルブログ

「消費者にニーズを教える」ことが必要

2014年12月19日 未分類 0

 肌着には大きくわけて、2つの柱がある。
一つは春夏向けの吸水速乾肌着、もう一つは冬向けの保温肌着である。
12月に入って立て続けに寒波が襲来していることから、保温肌着はまずまずの動きだが、今春夏は概して吸水速乾肌着の動きが悪かった。

ポリエステルなどの合成繊維を組み合わせて、通常の綿肌着よりも吸った汗を早く蒸散させるのが吸水速乾肌着だが、今春夏に苦戦したのは消費増税の影響ではないと感じる。

1、すでに数枚以上持っている
2、ここ数年使い続けることで吸水速乾機能に魅力を感じない人が増えた

この二つが理由ではないかと考えられる。

しかし、すでに数枚以上の吸水速乾肌着を持っているから売れないというのは一見もっともなようだが、同じ条件である保温肌着は今冬もそれなりに売れているから、実は正しい答えではないのかもしれない。

個人的には、2の理由が正解なのではないかと考えている。

ここからはあくまでも個人的な体験と感想である。

吸水速乾肌着は綿100%肌着に比べて、たしかに汗を吸った濡れた状態でも肌に貼り付くことがない。
また乾燥する時間も短い。洗濯をして干してみればわかる。それだけ急速に水分が蒸発しているということになる。逆にその機能が着用者にとっては邪魔になるのではないか。

というのは、吸水速乾肌着を外着として着用している分には快適である。
汗をどんどん吸って水分をどんどん蒸発させてくれる。
しかし、肌着1枚で外出する人はそう多くない。ビジネス・カジュアルを問わずに必ず上にもう1枚衣服を着用する。

半袖シャツやポロシャツを着用したり、もう1枚Tシャツを重ねたりする。

そうするとどうなるかというと、通常の綿100%肌着を着用したときと比べて、上に重ねた衣服への汗染みが激しくなる。
筆者は真夏に吸水速乾肌着の上に、紺色の半袖シャツを着たことがある。
筆者は汗かきなので真夏は大量の汗をかく。
吸水速乾肌着がどんどん水分を蒸発させてくれたのは良いが、上に着た綿100%の紺色のシャツがその水分をどんどんと吸収して、ずぶ濡れみたいになってしまった。

綿100%肌着だとここまでの汗染みにはならない。

吸水速乾肌着を着用する場合は、上に重ねる衣服にも吸水速乾機能が必要なのではないかと考えるようになった。

この部分で吸水速乾肌着が着辛いと考えた消費者も増えたのではないか。

また、保温肌着を着用すれば冬の寒さは軽減できるが、吸水速乾肌着を着用しても夏の暑さは軽減できない。
だから吸水速乾機能は必須機能だとは感じられないという消費者も多いのではないだろうか。

その部分を考慮すると、真夏に必要なのは「汗を吸収すれば温度が下がる肌着」ではないだろうか。
肌着そのものが2,3度冷えるみたいな機能があればこれは真夏の必須アイテムになるのではないか。
吸水速乾機能は綿100%と同等程度で良いだろう。
そんな機能繊維の開発が可能なのかどうかはわからないが。

さて、先日某肌着メーカーのトップから話を聞く機会があった。

なかなか意欲的な方なのだが、その中でこんな一節があった。
「消費者ニーズに合わせた商品提案を」というもので、まあ、肌着に限らずアパレル企業各社は口をそろえたようにそう言う。

ここからは言葉遊びのような部分もあるが、部外者の戯言として適当に参考にしてもらいたい。

今まで、バブル崩壊くらいまでは、消費者ニーズに合わせた商品提案を行えばそれなりに商品は売れた。
しかし、今は消費者ニーズに合わせた商品提案ではあまり売れなくなっている。

今、求められているのは、「消費者にニーズを教える」「消費者にニーズを知らしめる」という姿勢の商品提案、商品開発であろう。

これを行ったのがかつてのSonyであり、ジョブスが君臨したころのappleだといわれている。

平たくいうと、「あなた方が欲しいのはこういう商品、機能ではないですか?」という姿勢である。
消費者ニーズに合わせるという姿勢は、すでに出回っている商品の後追いということになり、ひいては価格競争に陥りやすい。
なぜならば、似たような商品がすでにあるわけだから、それよりも価格を下げなくては売れにくくなる。

翻って衣料品で考えるなら、肌着のような機能を求められる商品なら「まだ市場に出回っていないけど、こういう機能があれば便利でしょう?」「こういう機能を求めていたのではないですか?」という姿勢が必要になる。

またファッション衣料なら「こういうコーディネイトは新しくて面白くないですか?」「こういうファッションで過ごすと楽しい生活になりますよ」「ファッションにこういう機能性がプラスされたならより快適ですよね?」という提案が必要になる。
決して「パリで流行ってる〇〇」とか「ニューヨークで話題の〇〇」が最大のセールスポイントではない。それなら、どれだけ早くそれを持ち込むかというだけの競争になり、持ち込み競争に負けると後は価格競争になる。

ここ20年間の日本の衣料品業界はその繰り返しではなかったか。

まあ、言うは易く行うは難しなのだが、そういう考えを念頭に置きながら商品開発を行うのとそうでないのとでは、いずれ結果が異なってくるだろう。

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