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南充浩 オフィシャルブログ

趣味でモノ作りをする人に生半可なデザイナーは駆逐される

2014年12月4日 未分類 0

 先日、某作家イベントに参加した人からこんな感想を聴いた。

「作品にすごく安い値段を付けている人が多くて驚いた。作品の販売によって生活しようとしている人ではあの価格には勝てない」

とのことである。

ここで、かなり前に読んだインタビュー記事の一節を思い出した。

【インタビュー】デザビレ村長 鈴木淳「趣味でモノを作る人にデザイナーが負けてしまう時代が来る」
http://www.fashionsnap.com/inside/jun-suzuki-interview14/index.php

今ファッション業界は過渡期を迎えているではないかと思っています。「Etsy」とか「Creema」といった手作りのモノをCtoCで販売するサイトがありますが、アメリカだとこれがものすごい伸びていて、日本でも注目され始めています。

「Etsy」「Creema」などの登場で何が起きてるかというと、いわゆるデザビレに居るような小規模のクリエイターの領域を手作り作家さんが侵食し始めているということです。

手作り作家さんはパートナーが養ってくれるからこれで稼がなくてもいいという趣味志向の方が多いため、破格な値付けをしていて、商品を購入すると1点1点お手紙を書いてくれて、綺麗なパッケージに包んでくれてというサービスを提供する方もいます。気軽にC to Cで取引ができるということは画期的ではありますが、一方で若手クリエイターの商品を買う必然性はなくなってしまう。

とのことである。

ここで示されているように、日本でもECサイトが気軽に開設できる環境が整いつつあることから、作ることが好きな学生や趣味の活動を行っている専業主婦、定年でリタイアした人などが、自分の作品を直接消費者に販売するケースが増えた。

またその手の人を集めた販売会が百貨店や商業施設、都心ホールなどでも頻繁に開催されるようになっている。

これらの人の作品の特徴はいわゆる「趣味」「お小遣い稼ぎ」が目的であることから破格に安い。
例えば、けっこう手が込んだ造作物が1個500円とか1000円とかという値段であることも珍しくない。
なぜなら彼らはその製造販売で生活をしていないからだ。
それでいてクオリティはそこそこに高い。中にはプロ作家よりもクオリティの高い作品もある。

これでは、それの製造・販売・デザインで生計を立てている作家・クリエイター・デザイナーなどの商品は勝ち目がない。なぜなら価格が高いため、そういう人たちのブースが横に並んでいると多くのお客をそちらに取られてしまう。

趣味の人たちの作品のクオリティが低ければ、これは勝負になる。
安いからクオリティがあまり高くないということが一目瞭然だからだ。

昨日のブログともつながるが、本当に作家・クリエイターとして生計を立てることは10年前・20年前に比べて格段に難しくなっているといえる。
趣味の製作者を責めるつもりは毛頭ないし、彼らの参入を禁止すべきだとも思わない。
そういう人たちが増えるのは自然の流れだ。

趣味の人たちとクオリティではほとんど大差がなくなったら、どうやって売れば良いのか。

作家・クリエイター・デザイナーは真剣に考えるべき時代に突入しているといえる。
売り方、見せ方、営業方法、販促手法にもっと工夫を凝らすべきだろう。

毀誉褒貶はあるが、短パン社長は、SNSの告知だけで300枚のアイテムを完売させる。
それも受注期間は数日でだ。
1枚あたり1万数千円するから、合計販売金額はざっと400万円前後である。

例えば、300枚のアイテムを完売させられる東京コレクション常連ブランドがいくつ世の中に存在しているだろうか。
短パン社長が毎月1アイテムずつを販売し続けたとすると、年間売上高は5000万円近くなる。
そしてその体制は着実に整いつつある。

しかもSNSを使用しているのみなのでそこにかかったコストはゼロである。
ただし、膨大な時間とプライバシーは犠牲にしているが。(笑)
プライバシーを犠牲にしてでも多くの人に伝え、顧客との関係性を強化する覚悟を持っている作家・クリエイター・デザイナーが幾人存在するだろうか。

しかし、趣味の人たちが増えているため、そこまでやらねば生半可な「プロ」は今後到底生き残ることはできない。

デザビレの鈴木村長も記事中で、こう答えている。

だからファストファッションのような大手が作る量産のものか、個人が作る気持ちのこもった1点ものという2極化が進んでいて、中間層の国内デザイナーの市場が減っているのではないでしょうか。

今の若手デザイナーは経費削減をして、生活コストを下げて稼ぎが少なくても食べていけるような個人作家の方にシフトするのか、それとも事業規模を拡大して大手に近づくのかというどちらかを迫られる時期が来るのだと思います。

ちなみに筆者は業界でのクリエイターという言葉の使われ方が嫌いである。
クリエイターとは英語では造物主を意味し、一神教の神を指す言葉である。
デザイナーや作家がなぜ、造物主と呼ばれる必要があるのかまるで理解ができない。
それほどに崇高なものだとは到底思えない。

独立系の作家・クリエイター・デザイナーには今後こういう未来が間違いなく待ち受けている。

淘汰されたくなければ、ビジネスとプロモーションをもっと強化すべきだろう。
今までよりも作ることの比重を減らすべきではないか。作ることのみにこだわりすぎる姿勢は、産地製造業者となんら変わりがない。
デザインやセンスに関してはまるで噛み合わない産地製造業者と作家・デザイナーだが、営業下手・プロモーション下手という部分は似ているのかもしれないとも思った。

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