南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

大衆は洋服のことなんてそんな詳しく知らないし興味もない

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 今日はお気楽に。

断続的にバッタ屋の店頭に立っていると、業界の人が想像する以上に、洋服の根本的なことを理解していない消費者は数多くいることに気付かされる。

そういう意味では、消費者教育が必要なのではないかと思う。

バッタ店頭で出会った仰天する質問をいくつか挙げてみる。

1、「Mサイズってどれくらいのサイズ?」という質問

おおー、最早なんと答えて良いのかわからない。
中間くらい・・・?としか言いようがない。

これと類似の質問で、

「9号サイズって何?」というのもある。

この質問はいずれも推定40~50代女性から発せられるもので、この人たちは少なくとも40年間くらいは何を目安に洋服を買ってきたのだろうと不思議でならないが、こういう人は本当に多い。

2、自分が何サイズの服を着ているのか知らない人

これも多い。
今自分が着用している服のサイズを「知らない」と言い切る大阪のオバハン多数。
え?どうやってその服を買ったの?どうやってその服を選んだの?

3、〇〇%引きの計算ができない人

これは以前にもこのブログで書いたが、本当に業界人が想像するよりはるかに多い。
30%オフとか70%オフとか表示するのは、店側・販売員側からすれば、最大限分かりやすく表示しているつもりだが、実際の店頭では、「これ何円になりますか?」と尋ねる人はかなり多い。
体感だと5割近いのではないかと思う。

最初のころは、「暗算するのがめんどくさいのだな」と思っていたが、どうやら本当に計算のやり方自体が分かっていないようだ。

言うまでもないが、〇〇%という表記は百分率に基づいており、百分率の計算は小学校で習う。
〇〇割引きは割合でこれも小学校で習う。

そのどちらも計算できない、理解していないという人は本当に多い。
この人たちはスーパーなどの食料品の割引表示をどう理解して購入しているのだろうか?

それでも社会生活は可能ということだ。やれやろだぜ。


4、洋服の名称がまるで理解されていない。

業界内で通じる共通の名称がある。
そんな大げさなことではないが、デニムパンツやジーンズといえば、業界内の人なら共通のイメージができる。

しかし、そういう基本的な名称すら知らない人は数多い。
ましてや、業界が「売らんがために」改称した名称なんて「誰も知らんがな」状態である。

盛り袖とかなんとか名称を新しく作るのは結構だが、そんなものは大多数にはほとんど浸透していないということを肝に銘じるべきである。

例えば、長袖・半袖・袖無しがある。
これをカタカナにすればロングスリーブ・ショートスリーブ(ハーフスリーブ)・ノースリーブとなる。

カタカナ語はまず理解していない。
長袖・半袖・袖無しですら、理解していない人も珍しくない。

つい先日、こんな人がいた。(推定50代女性)

「ランニングシャツみたいなワンピース」を連呼していた。
お気付きだろうか、これはノースリーブワンピースのことである。

ノースリーブという名称がわからないのは納得の範囲内だ。
しかし、「袖無し」という言葉すら出てこないのはちょっと衝撃的だった。

「かわいい」雰囲気を醸し出す「ノースリーブワンピース」という名称だが、「ランニングシャツみたいなワンピース」といわれると途端に、裸の大将が着ていたランニングシャツの丈が長くなったような画像が頭に浮かぶ。
かわいいも雰囲気もへったくれもない。
おにぎりでも持たせてやりたい。

5、女性物と男性物の区別ができない男性(推定40代以上)

Tシャツだとかジーンズだとか、そういうユニセックスデザインの商品はあって、それの男女の区別ができないのは理解できる。
それらはXLあたりを選べば男性でも着用できるからだ。

しかし、ワンピースやスカートが所狭しと並べられている店に入ってきて、何十分か物色してようやく、「この店は女性物の店ですか?」と気が付く中高年男性は本当に多い。

え?外から見てもすぐにわかると思うのだが?

男性は業界人が想像している以上に洋服に触れていないし、興味がない人が多い。
だからダメなんだと、某伊藤忠商事の社長のようなことは言わないし、言う気もない。
あの人が他人にダメ出しできるほどオシャレとも全然思わない。

就職した男性の中には結構な割合で、職場の制服(スーツも含む)かパジャマ類(Tシャツセットアップやスエット上下を含む)しか持っていないという人がいる。
平日は朝から制服を着こんで出勤し、それで勤務し、制服で帰宅する。帰宅後は入浴してパジャマ類を着て寝る。
土日は終日、スエット上下で過ごす。もしくは休日用の服が3枚くらいある。

そういう生活を過ごしてそれに不自由を感じていない男性は少なくない。
それを20年くらい繰り返すと、メンズ店とレディース店の区別ができなくなるのだろう。

しかし、そういう生活をする人の気持ちもわかる。
土日の週2回しか着用しない物にそんなにお金をかける必要もないし、毎年買い替える必要もない。
3枚か4枚を着まわせば済むという考え方は合理的で賛成できる。

自分がもし普通の会社に入っていたなら、そういう生活を送っていたと思う。

思いつくままに挙げてみたが、こういう人は本当に多い。
そしてこういう人々こそがサイレントマジョリティーである。

マスに売りたければ、こういうサイレントマジョリティーを如何にして教育し、惹きつけるかが課題になるが、それができているブランドは数少ない。
だから不振ブランドが多いのである。



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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25



先進国で繊維の製造加工業が減るのは当然

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 日本の繊維製造加工業を守れという声があるが、結論からいうと、今ある事業者数すべてが残ることは不可能である。ただ、ゼロにはなることもないと思う。
事業主が「生き残りたい」「今の事業を続けたい」と強く思わない製造加工業は消えることになるだろう。

繊維の製造加工業が大規模に残れるかどうかというのは、日本だけの問題ではなく世界的な問題ではないかと最近思うようになった。

例えば、ジーンズやTシャツで重宝がられていたアメリカ製衣料やアメリカ製生地だが、近年はほとんど見かけなくなった。アメリカの繊維製造加工業はゼロにはなっていないが、かつてほどの規模では残っていない。

中国も経済発展を遂げたため、ほかに実入りの良い仕事が増え、縫製工場や織布工場、染色加工場などには工員が集まりにくくなってきている。

代わって東南アジア諸国やインドに工場が増えている。
これらの国は現在、経済発展段階にあり、経済発展の第1段階として繊維などの軽工業に注力するのは常道である。
その次に重化学工業で発展し、最後はサービス業へと移行する。

イタリアには例外的に繊維の製造加工業が多く残っているといわれているが、以前にもこのブログで紹介したように、工場の経営自体を中国企業に売り渡しているケースが増えているし、そういう工場は工員のほとんどが不法滞在者も合わせた中国人になっている。

となると、ある程度の経済発展を遂げると、その国の国民は就職先として繊維の製造加工業を選ばなくなるということがいえるのではないかと思う。

どうして選ばなくなるかというと、給料が高くない、作業がキツイなどの理由があるのではないか。


「日本製3%」で沈むアパレル工場が生き残る道
3Kの印象変えよ!ルンバ導入の次世代工場も
http://toyokeizai.net/articles/-/173418

ファクトリエのポジショントークが半分くらい入ったいつもの記事だが、これをベースに考えてみたい。

日本製衣料は3%といわれるが、それは数量ベースの比率であり、金額ベースだと26%前後で残っている。

http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/apparel_supply/pdf/001_03_00.pdf#search=%27%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%A3%BD%E8%A1%A3%E6%96%99%E5%93%81%E6%A7%8B%E6%88%90%E6%AF%94%E9%87%91%E9%A1%8D%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B9%27

この経済産業省の報告書の3ページ目に示されている。
2012年時点で27%が日本製比率である。


たしかに環境整備は必要だし、それなりに有効だといえる。
しかし、自分が見学した工場はかなり綺麗に整備されているところが多い。
それにもかかわらず、人が集まらないというのは環境が美化されていることだけでは足りないからではないか。
ルンバなんて買ったって焼け石に水であろう。

人が集まりにくい最大の理由は、給料が安いからである。
工賃が安いから給料が安くなる。そういう構図であり、工員が年金生活者ばかりだから、プラスアルファの格安の給料で何とかやりくりしている工場はめずらしくない。

ここが改善されないことには若い人が集まることはない。

じゃあ、どうすれば改善できるのかというと、これがなかなか難しい。
筆者ごときでは解決できない。

工賃を上げて、上げても売れるような製品やサービスを作るしかない。

これが大前提だが、全業者が一斉に同じことはできないし、やったところで脱落してしまう業者も数多く出現するだろう。
結局、個々の工場が目標に向かって試行錯誤を繰り返しながら地道に取り組むほかない。

救世主みたいな人が現れて一挙に全工場を救ってくれることなどありえない。
神風が吹いて急に工場が儲かるようになることもない。

そんなもんを期待するのはおバカさんだけである。

個人的には

1、凄腕工場になって確実に受注先を増やす
2、自社製品開発を成功させる
3、直営店まで構築してSPA化する
4、強いブランドと密接に取り組む

くらいのことしか考え付かない。

その中でも4になってしまうと危険性も高まる。

ある強力なブランドのみと取り組むと、そのブランドの売れ行きが陰ればもちろん打撃を受けるし、そのブランドが何年か後に取引先を変えてしまえばこれも打撃を受ける。
かつて、ユニクロの仕事のみ注力した(させられた)国内工場が、何年か後に製造先を変えられて多数倒産したことはそれを証明している。

1、2、3ともに言うのはたやすいが実現は困難を極める。

困難を極めるからこそ、事業主が「それでも残りたい」と強く思わなくては実現は絶対不可能である。


ファクトリエや自称クリエイターたちがいうような「美しい物語」では決して国内の繊維製造加工業の置かれている状況は好転しない。

筆者がファクトリエに対して疑問を持っているのは、提示する「美しい物語」もさることながら、現在、ファクトリエが進めているやり方は、各工場をファクトリエというブランドの下請け・専属にしているようにしか見えない点である。
もちろん、それで救われる工場もあるが、結局のところ工場の自立化にはつながらず、従属先をかつてのアパレル企業からファクトリエに変えることになるだけではないだろうか。

自称クリエイターの中には製造加工業を国が保護せよと口走る人もいるが、自由主義経済でそれはありえないし、これまで役に立ったかどうかは別にして何十年間も補助金・助成金が支払われており、これ以上の厚遇は製造加工業を特権化させるだけではないかとも思う。


国が経済発展したのちも、給料その他条件で「魅力的」と思われるような製造加工業のモデルケースを提示しないことには減少は止められないだろう。
しかし、そういうモデルケースは史上実現していない。それを史上初めて実現できたとき、先進国での繊維製造加工業への就職者数が増えることになる。


あまりに困難な課題すぎて、筆者程度の人間には到底、実現する方法も完成形も思い描くことができない。



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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25



しまむらの転換路線に黄信号?

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 このニュースを読んだときに、「ああ、やっぱりな」と感じた。

しまむらの株価が急落 既存店売上高が4カ月連続減
https://www.wwdjapan.com/419687

一昨年、昨年と各メディアに「勝ち組」と持ち上げられたしまむらの失速である。
しまむらの好調は、以前にこのブログでも紹介したように、冬用の保温ズボンを百万枚単位で売り上げたことによるものである。

定価は3900円で、通常のカジュアルパンツと同じくらいスマートでスリムなシルエットなのに防風性が高いというズボンで、各社とも冬用商品では人気が高い。
ユニクロもライトオンも同様の商品を販売している。

しまむらは、この「裏地あったかパンツ」の大ヒットにより久しぶりの増収増益に転じた。

それによって各メディアはしまむらを「勝ち組」と持ち上げたのだが、業界内部からはその時点で、疑問の声が上がった。

というのは、しまむらの基本的なやり方は、メーカー各社の在庫を安く仕入れてそれを安く販売する。
ただし、在庫だから売り切れ御免で、同じ物は二度と入荷されない。
というものである。

一方、裏地あったかパンツは100万枚を売り上げたわけだから、従来のやり方と異なる方法で商品調達がなされたと見るべきである。
いくら在庫がダブついている衣料品業界とはいえ、同じ商品ばかり100万枚も積み残しているメーカーなんてそうそうにあるわけがない。

100万枚の商品を調達し、販売したというやり方はユニクロ方式に近いものがあったのではないかと考えられるし、販売の思想はユニクロと同じだといえる。

少量(とは言っても、1万枚や2万枚程度は調達している)の売り切り御免方式から、100万枚単位でのユニクロ方式への転換。業界から疑問の声が上がったのはこの部分に対してである。

売り上げ規模の小さい企業なら方向転換は容易だが、5000億円を超えるような大企業になった場合、根底からやり方を変えることはなかなか難しく、莫大な労力と資金が必要になる。

そこまでのものを費やしてユニクロ方式に転換することが果たして、しまむらにとって良いことなのか?というのが業界からの疑問の声だった。

そして、今回のしまむらの失速傾向は、方法の転換にやはり無理があり、歪みが生じているのではないかと考えられる。

しかし、失速傾向とはいえ、まだ5月であり春夏物が不調だっただけで秋冬シーズンは好調に転じるかもしれない。
今後の推移を見守らないことには、失速だと決めつけることは難しい。

それにしても、やはりというべきか、衣料品という商品において、春夏物はヒット商品を作ることが難しいということが図らずもまた証明されたのではないかとも思う。

ユニクロの秋冬偏重は以前から指摘されてきたが、秋冬偏重はユニクロに限ったことではなく、衣料品ブランドは一部を除いてほとんどが秋冬偏重である。

なぜなら、秋冬商品は春夏商品に比べて、コートやジャケット類は単価が高く、売上高を増やしやすい。
さらに、気温的にも重ね着ができることから消費者の購買枚数も春夏に比べて増えやすい。

春夏、特に夏場は高気温であるため、重ね着がしにくい。
男性ならTシャツ1枚、ポロシャツ1枚に軽量ズボンというような服装が主流で極めて着用枚数が少なくなる。
女性でも似たような傾向である。

となると、まとめ買いやコーディネイト購買は少なくなり、売上高は稼ぎにくくなる。

また秋冬、とくに冬物は機能性が実感されやすいが、春夏物はどんなに機能性を高めても、暑さは軽減できない。筆者などは「どっちにしろ暑くて汗は止まらないから、夏物は機能性商品を着る必要はない」とまで思い始めている。

そうなると、吸水速乾だろうが、防臭だろうが、大々的にヒットを飛ばすことは難しい。

以前にジーユーがガウチョパンツを100万枚売ったように、春夏商品こそ、トレンド性がなければヒットしにくいともいえる。
ジーユーでガウチョが売れた理由は機能性ではなく、トレンド性と低価格である。


しまむらの「大量調達・大量販売」というユニクロ方式へのビジネスモデルの転換が正解だったかどうかがわかるのはこれからといえる。



インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/



ユニクロ vs しまむら(日経ビジネス人文庫)
月泉 博
日本経済新聞出版社
2009-11-03












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