南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

ユニクロが工場リストを公開~先手を取られっぱなしの既存アパレル~

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 やっぱりこの話題に言及しないわけにはいかないだろう。

ユニクロ商品の8割占める取引先工場の情報開示
http://www.senken.co.jp/news/management/fr-uniqro-sustainability-170228/

ファーストリテイリングがユニクロの生産工場を情報開示したという内容だ。

ファーストリテイリングのサイトにはそのリストがある。

http://www.fastretailing.com/jp/sustainability/business/pdf/UniqloCorePartnerFactoryList.pdf

日本の工場も3社含まれている。

今後はジーユーの工場も開示する方針だとされている。

この情報開示は、世界的な潮流を受けてのことでファーストリテイリングはそれに追随したといえる。
それでもやはり機を見るに敏だという感想しかない。

さらにいうなら、「ランチェスターの法則」に教科書通りに則っているともいえる。

国内でいうと例えばファクトリエなどの小規模・零細企業が、生産工場の開示を始めた。
これは「ランチェスターの法則」でいうところの一点突破による「小集団の勝ち方」である。

ユニクロという「大集団」の採るべき正しい方針は、「圧倒的物量を生かしてそれに追随する」である。

だから教科書通りにユニクロは追随した。

しかもそのタイミングは、早いとは決して言えないが、遅いとも言えない絶妙のタイミングだといえる。
一方、「物作りガー」とか声高に叫んでいる百貨店向け・専門店向けアパレルや大手セレクトショップはいまだに生産工場、生産業者をほとんど開示していない。

「小集団」が先行したのは事実だが、ユニクロという大集団は、既存アパレルよりは先行者になってしまった。

ユニクロと既存のアパレル企業、どちらがフェアに消費者には映るだろうか。
圧倒的にユニクロがフェアに映るのではないか。

既存アパレル企業はイメージ戦略ですらユニクロの後塵を拝することになってしまったということである。

資本力でも価格競争でも、最近では品質でも勝てなくなった既存アパレル企業は、イメージですら勝てないという状況に追い込まれ、今後、ユニクロとの差はますます広がることになるだろう。

彼らが唯一しがみついている「デザイン性」やら「センス」だってそのうちにユニクロに負けるだろう。
なぜなら「デザイン性」も「センス」も金で買えるからだ。
「デザイン力」「センス」のあるデザイナー、企画マンを雇用、契約して、生産チーム・販売チームときちんと連動させれば、それは実現可能だからだ。

既存アパレル各社は、ユニクロに先手を取られっぱなしで、この20年間対応は常に後手だった。
まさしく「先んずれば人を制す」である。
このまま、既存アパレル各社は負け続けることになるだろう。

国内の繊維の製造加工業者が自立化を望みながら、情報発信に及び腰な姿勢は、長年に渡る大手アパレル各社の「生産工場を秘匿する」という慣習が招いた側面がある。

製造加工業者のおっちゃんと話すと、「公表すると取引先の〇〇社から怒られる」という言葉が頻繁に飛び出す。かつて、大手アパレル・有名ブランドはこぞって生産先を隠した。

理由の一つとして、生産業者が公表されると、企画やデザインをパクられると考えたからだ。
しかし、普通に尋ね歩くと、「〇〇さんは××ブランドに納入している」とか「〇〇さんは××ブランド向けの生地を生産している」(〇〇は社名・工場名)という話は簡単に耳に飛び込んでくる。

それだけ、各社・各工場ともうわさが回るのが早いということである。

だから、もし、新規参入者がそういう情報を集めようと思うと比較的簡単に収集できるから、隠す意味というのは本当はあまりないのが実態である。

逆に長年に渡るそういうあまり意味のない慣習が、情報発信・情報開示することに消極的な製造加工業者を多数作りだしてしまった。

これが製造加工業者の自立化が成功しない一つの理由にもつながっている。

これまでにも増して追い込まれてしまった既存アパレル各社は、どのように対応するのだろうか。
奮起して活動を一変させることを期待したいが、正直、今の業界人では目に見えた対応はできないだろうと見ている。
既存アパレル各社は緩やかに座して死を待つのみということになるのではないか。













行き過ぎた前年実績主義でますます衣料品は売れなくなる

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 洋服が売れない理由はさまざまあるが、その一つに「前年実績主義」がある。

これはPOSの発達による部分も大きいとは思うが、前年売れた物を再度投入するというやり方だ。
もちろん、洋服には「定番」と「シーズン物」「トレンド物」があり、「定番」は文字通りの定番品なので何シーズンにも渡って販売されるのは当然といえるが、昨今の不振ブランド、不振店の多くは「シーズン物」「トレンド品」までを前年実績主義で品揃えしてしまう。

これには、各社の「失敗したくない」というチビった姿勢が表れているのだが、結局、上層部を説得する材料が「前年実績」しかないからだろう。

意見を押し通せない現場もだらしないし、単純に前年実績でしか判断できない上層部も情けない。
上も下もそうだからブランド全体、社全体が低迷するのは当然の結果といえる。

定番品とシーズン物、トレンド物の構成比率は当たり前だが工夫する必要がある。
ブランドや店ごとにコンセプトや売り上げ目標に対してその構成比率は変わる。
このあたりの計数管理はマーチャンダイザーの仕事であり、その職務経験のない筆者に教える能力はない。

佐藤正臣さんあたりに習われた方が良いだろう。
http://www.apalog.com/fashion_soroban/

それはさておき。

チビってブルっている各社は過度に前年実績主義にすがるから、何年間も同じ物が売り続けられることになる。
そういう商品が1型とか2型とか程度で展開されるなら何の問題もないが、定番品でもないのに何年間も同じ物が数多く売られ過ぎていることが問題なのである。

先日、アクセサリー・ファッション雑貨向けのある部材メーカーにお邪魔した。

さまざまな百貨店向けアパレルとの付き合いがある会社なのだが、チビってブルっている百貨店向けアパレルは、もう何年間も同じ商品を発注し続けてくるのだという。
デザインを買えるわけでもなく、アレンジのやり方を変更するわけでもなく、形は同じでせいぜい色柄を変えるだけの発注をもう10年間も続けているブランドもある。

メーカー側としては、デザイン変更も提案したし、アレンジ変更も提案したが、ブランド側が「前年実績通りで」という返事しか出さないため、10年間同じ商品を作り続けている。
メーカー側は「10年も同じ商品を投入し続ければ売れなくなるのは当たり前」と吐き捨てるが、まさにその通りである。

また別の衣料品メーカーでは、3年前にそこそこのヒットを出した商品を、ほとんど変えることなく投入し続けているが、やはり売上高が鈍ってきているとのこと。
商品のプランニング担当者は「同じ商品を3年も投入し続けたら飽きられるのは確実。初年度は新規性で売れる。二年目は昨年買えなかった人が買うから売れる。でも3年目は行き渡っているし、飽きられているから売れなくなるのは当然」と指摘するが、上層部が「前年実績」に固執した結果、そういう商品政策となってしまっている。

これで4年目も変わらなければ、この衣料品メーカーの業績はさらに低下するだけだろう。

どんなにバカ売れした商品だって何年間も同じ物を投入し続ければ、売れなくなるのは当たり前で、かつてのユニクロのフリースだって、大ヒットの反動で大ブレーキとなり、売上高が激減した時期がある。
2002年あたりのことだ。

今でもフリースは売られているが、店頭での展開数量は2000年ごろと比べると圧倒的に少ない。
2016年秋冬シーズンなんてフリースの存在感はほとんどない。
根強いファンがいるので、店頭には並んでいるが、数量は全盛期の何分の1という程度である。

考えてみれば当たり前のことで、いくら何百万枚売ろうが、複数年に渡って展開し続ければ多くの人は所有するようになっているし飽きている。
新色・新柄投入といったって根本的には何も変わっていないのだから、買われなくなるのは何の不思議もない。

毎年秋冬にユニクロのフリースを複数枚買い続ける人間なんて存在しない。

需要はゼロにはならない。買い替え需要もあるだろうし、今まで持ってなかった人が買ってみたいという場合もある。しかし、その枚数は全盛期とはケタ違いに少ない。
需要と供給とはそういうもので、服に限らずiPhoneでも自動車でも液晶テレビでも永遠に同じ数量だけ売れ続ける商品なんてものはこの世にはない。

定番品は別として前年継続品があるのはかまわない。
問題の本質は、前年継続品番があまりにも多すぎることである。

これによって店頭は新鮮味がなくなるし、各社から類似品も出回り店頭が一挙に同質化してしまう。
同じようなものなら、値段の安いところで買おうと思う人が増えるのは自然な流れである。

前にもこのブログで書いたが、3年位前まで、秋冬の大型スーパーの肌着売り場には「保温ステテコ」「発熱ステテコ」なる珍妙な商品が数多く並んでいた。

そもそもステテコというのは、春夏向けのズボン下(ズボンの下に穿く肌着。汗でズボンの裏地が肌に貼り付くことを防ぐ)であり、秋冬にはパッチ・股引と呼ばれる保温肌着が古くから存在する。

はっきりといえば、パッチ・股引・タイツがあるから、秋冬向けの保温ステテコなんていう商品は存在意義がない。

じゃあ、どうしてこんな珍妙な商品が数多く並んでいたのかというと、アホみたいな「前年実績主義」の賜物である。

2010年くらいから春夏の部屋着として、色柄を工夫したステテコが注目を集めた。
2011年の電力不足からそのステテコブームが拡大して、各社とも相当な売れ行きとなった。

2012年もその人気はある程度続く。2013年になると人気は陰り始める。
2014年には終わった。

しかし、前年実績主義でやると肌着売り場には「ステテコ」という商品の前年実績がある。
この「ステテコの前年実績」を守るためには春夏で落ち込んだ分を、秋冬で稼がないといけない。
かくして秋冬向けの「保温ステテコ」なんていう意味の分からない商品が作られて並べられた。

2016年秋冬の売り場では見たことがないので、各社とも大爆死で終わったのだろう。

当たり前だ。こんなに存在意義のない商品が売れるほど世の中は甘くない。

「ステテコの前年実績をキープせよ」と命じた大型スーパーの経営陣が一番のアホで、それに従った現場、メーカーも結果的にはアホだった。

これが「過度な前年実績主義」であり、百貨店も大型スーパーもその病に根元まで冒されている。
そして「保温ステテコ」みたいな意味の分からない商品を作っている。
そりゃ、衣料品・ファッション雑貨が売れなくなるわけである。














理想を実現できなかった我が国のSPAアパレル

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 ちょっと様々なご意見をいただきたいのだが、現在の国内アパレル業界におけるSPA(製造小売り)というのは、その昔に提唱された理想形態とはずいぶんと異なっているのではないかと思う。

米国でのGAPの成功を受けて、国内でもSPAという業態に強い関心が集まったのは90年代からである。

とくにバブル崩壊後は新しい売り方としてさらに期待が集まった。
97年から2003年まで出席していたワールドの決算会見では、当時の寺井秀蔵社長が、毎回嬉々として誇らしげに「今期は卸売り業態の構成比率を〇〇%縮小しました」と報告していたことを記憶している。

ワールドに限らず、オンワード樫山、ファイブフォックス、三陽商会、TSI(当時はサンエーインターと東京スタイル)、イトキンなどの大手アパレル各社は卸売りから急速に直営店を軸としたSPA化にシフトして、今に至っている。

その結果が今の大苦戦である。

また2000年以降はこれら大手以外の中規模・小規模アパレルもSPA化に舵を切って、SPAブランドなんて特に大資本でなくても実現できるようになって現在に至っている。

その昔、SPAが提唱されたころは、企画製造業者が直営販売を行うことで、中間業者を排除でき、その中間業者に支払うマージンがカットできることから、良い品を割安で販売することができると説かれていた。
また、中間業者を排除することで、企画製造業者は高い利益を手にすることができると説かれていた。

しかるに現在の業界の情勢はどうだろうか。
高い利益を手に出来ているSPA業者などほんの一握りだろう。

誇らしげに卸売り業態を圧縮し続けてきたワールドだってあの体たらくであり、旧大手各社も同様であり、SPA化による高い利益率というのはどうやら幻想に終わったといえるのではないだろうか。

たしかに店頭の商品価格は平均的に90年代よりは下がっていると感じられるが、その一方で、髙い利益率は実現できていない。

これはなぜだろうか。

業界に詳しい方々はよくご存知だろうが、業界に詳しくない方々は収益が高くないこと自体をご存知ないのではないかと思う。

SPA化が進んでから急速にOEM(製造のみ請負)・ODM(デザイン作業から製造までの請負)業者が増えた。

SPA化が進んだから業者が増えたのか、業者が増えたからSPA化が高まったのかそのあたりの前後関係は判然としない。

最近では、ブランドの設計・商品デザイン・製造までを請け負うOBMなんていう業者も出現し、アパレルの丸投げはここに極まったともいえる。

例えば、SPAで知られているブランドがあるとする。
このブランドは、OEM・ODM業者に商品づくりを丸投げしている。
デザインから丸投げなんていうブランドはまったく珍しくない。

で、業者の方は、このSPAブランドに対して「卸している」という表現を使う。
SPAブランドは「業者から仕入れている」という。
この言葉の使い方は業界では日常茶飯事である。

ということは、多くのSPAブランドは単なる小売業者であり、旧卸売り型アパレルの機能は、OEM・ODM業者が引き継いでいるということになる。

昔のアパレルが、小売店に対して卸売りをしていた構図と何も変わらないのである。
昔のアパレルは、中間に「問屋」と呼ばれる業者を挟んで、小売店へ卸すことが多かった。
当然、問屋のマージンが乗せられて、小売店へ卸される。
この問屋が何重にも重なっている場合もあり、一次問屋・二次問屋なんていう形もあった。

当然、それぞれの段階で少しずつマージンが上乗せされるから、小売店の店頭価格は高くなった。

だから、SPA化が説かれたときには、問屋不要論が過剰に注目され、中間マージンの排除によって店頭価格が安くなり、業者は高利益を得ることができるとされた。

ところが現実は何も変わっていない。
安売り競争の蔓延によって、店頭価格が抑制されている分だけ、製造業者の得る利益は減少した。

これが今のアパレル業界である。

その理由の一つに、OEM・ODM業者の介在が挙げられるが、企画製造機能を放棄したアパレルや、もとより企画製造機能そのものがない大手セレクトショップが、OEM・ODM業者なしで商品の企画製造はできないのが実態である。

OEM・ODM業者を完全に排除しては最早、多くのブランド、セレクトショップは商品の企画製造ができないのである。

問題は業者の存在ではなく、業者の使い方がおかしい点にある。

ブランドやアパレルがOEM・ODM業者を介在させるのは当然として、かつての何重もの問屋のように、OEM/ODM業者を何重にも介在させることが今では珍しくなくなっている。
当然、そのたびに少しずつマージンは上乗せされるが、店頭価格を大幅に上げることはできないので、結果的に利益を削るということになるし、業者も少ないマージンで使われるという事態に陥っている。

例えば

ブランド⇒ODM業者⇒コーディネイター⇒OEM業者

なんていう多重構造で商品を企画製造していることは珍しくない。

どうしてこんな多重構造になるかというと、上の事例で説明すると、ブランドがいつも使っているODM業者に依頼する。しかし、この業者の不得意なアイテムが含まれている。

そうするとこのODM業者はそのアイテムを得意とする別の業者に依頼するのである。

別の業者に直接心当たりがあれば別だが、なければ、「〇〇の得意な業者を紹介してよ」とコーディネイターやブローカーのような人に依頼する。当然ここにも何らかの報酬が発生する。

この企画製造業者の多重構造こそが、国内SPAブランドが高い収益性を実現できなかった要因の一つといえる。

これを放置したままで、価格競争をしても業界は疲弊してしまい、もうすでにその疲弊度合いはかなり高まっているといえる。

逆にあれほど嫌われていた卸売り業態が、現在のワールドでは再び評価を受けているし、別の某アパレルでも小規模ながら卸売り業態は高収益を確保して評価を受けている。

SPAブランドは製造の多重構造と低価格化によって収益をすり減らしており、評価は低い。

この状況を打破するためには、今の時点では実現が不可能に近いかもしれないが、

1、アパレル各社が企画製造機能を再度強める
2、OEM/ODM業者の多重構造をやめる(完全排除ではない)

の2点の取り組みが必要だと考える。

ただし、実現できる可能性は非常に低い。
生き残りたいアパレル、ブランド、セレクトショップ、製造加工業者はどのようにして新しい構造を作るのかを考える必要がある。









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