南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

憤然と席を立つ経営者

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 先日、大阪府ものづくり振興協会の新年互礼会で、坂本光司さんの講演を拝聴した。
坂本さんは企業研究者であり、「日本でいちばん大切にしたい会社」という本の著者でもある。

自分が講演の眼目だと感じた部分を手短にご紹介したい。
まず、企業は「5人」を大切にせよとおっしゃっている。

5人とは
1、社員とその家族
2、社外社員とその家族(=下請け企業の社員と家族)
3、顧客
4、地域住民
5、株主・関係者

であり、大切にする順番は番号順である。
(間違っても株主が1番ではない)

坂本さんは「6500社をヒアリングした」とのことで、
そのうち650社が一度も減収減益に陥ったことのない会社だという。
そして「モチベーションの低い企業が不況に陥る。景気は待つものではなく、作りだすもの」であると主張されている。
また、リストラ(=首切り)をする企業は、社員のモチベーションが低下するからリストラをしてはいけないとのことである。

講演のこの辺りで、なんだか憤然として席を立つ年配経営者が多かったのだが、心あたりのある方々だったのではないかと推測してしまった。(笑)

で、自分もこの辺りから「そうは言ってもJALなどはリストラせざるをえないよなあ」と考えたのだが、坂本さんは明快に「大企業と、自分がヒアリングした従業員数百人規模の中小企業はまったく別物です。中小企業と大企業を一緒に考えるから話がややこしくなる。大企業と中小企業の生きる世界は全然別です」と言い切られており、なるほどと首肯する部分もあった。

坂本さんの挙げた実例から引用すると、

ある数百人規模の企業で、新社長が再建を担うこととなった。
新社長は、全社員を集めて「リストラはしない。当面自分の給料は無給にする。部課長は申し訳ないが年俸を2~3割減らさせていただきたい。その代わりに指示責任のない現場の平社員の給料は手を付けない」と講和をしたところ、上下一体感が生まれて、その会社は1年間でギリギリの黒字転換ができたという。

おそらく「リストラは社員のモチベーション低下につながる。モチベーションの高い企業は不況に陥らない」という坂本さんの主張はこういう事例を基にしておられたのだろう。

アパレル・繊維業界に翻って見ればどうだろうか?
アパレル業界で数百人の従業員がいればいっぱしの大企業であるが、その内情はリストラの嵐である。雇用流動性が高いという側面があり、それはそれなりに評価できると思うのだが、社としてのモチベーションが高くなるはずはない。もちろん数千人規模の大企業は別だが、数十人規模の会社でリストラを繰り返すのは余り得策ではないのではないか。
あまりに社員が入れ替わるアパレル・繊維企業は経営側にも多大な問題がある。


また坂本さんは、下請け企業を大事にしないから、今、下請け企業が反乱をおこしているともおっしゃっている。
その反乱とは①廃業②自立化である。
不況による廃業と言われているが、廃業できる企業は資金的にまだ少しのゆとりがある。「上から無茶言われるなら、ゆとりのあるうちに止めてしまおう」という消極的反乱であるとも捉える事ができる。
また、下請けから脱却して自社ブランド品、自社オリジナル製品を作り始める自立化は積極的反乱だと言えるのではないだろうか。

繊維業界で見てみれば、廃業・自立化ともに相次いでいる。
とくに繊維産地の廃業はかなりのペースで進んでいる。自分を含めた繊維業界人はとかく「不況のせい」と「海外への生産基地の移転」と見なしがちだが、こういう消極的反乱という見方も必要ではないかと思う。
また、産地企業の自立化も珍しいことではなくなった。もっとも、あまり成功した企業はなく、行政からの助成金目当ての「似非自立化」がほとんどだったとも言えるのだが。



坂本さんを繊維・アパレル業界のセミナー講師にお招きすれば、セミナー開始20分後くらいから、かなりの数の経営者が憤然として席を立つことが予想される。かなり面白い光景なので、ぜひどこかの組合で実現してもらいたい。(笑)

ユニクロ失速・大手アパレル復調の記事に反論する

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 今日の午後にはユニクロの1月売上速報が発表され、また「ユニクロ失速」の文字が一般紙に踊るのではないかと思う。

先日、ダイヤモンドオンラインに
「ファストファッションが失速!大手復調でアパレル市場に転換点」という記事が掲載された。

http://diamond.jp/articles/-/10942

ダイヤモンドには、その2週間ほど前にも似たような記事が掲載されていたのだが、どちらも分析の論点がズレているのが特徴である。


今回の記事を見てよう。

まずこの記事はユニクロとオンワードホールディングスの前年売上高増減比を比較しているところに問題がある。
ユニクロは2010年後半から数カ月連続での前年割れが続いているが、その前の年(2009年)は毎月20~30%増を記録していた。言ってみれば、2008年当時の水準に戻ったと言える。さらにその2008年は2007年よりも売上高を伸ばしている。「不振」と言いながらもそれほど重傷ではない。

一方、ダイヤモンドが推奨するオンワードホールディングスだが、
記事のグラフを見ていただければわかるように、ずっと前年割れであり、2010年後半に6%増になったと言っても、その前年の20~30%減の6%増である。折れ線グラフを見てもらえればわかるのだが、前年割れが止まったという状況に過ぎない。これで「復調」というのはおかしいのではないか。正確に表現するなら「下げ止まり」である。そして「百貨店に客が戻ってきた」という発言があるが、これも甘いと言わざるを得ない。
例えば、新宿伊勢丹や梅田阪急など単独店舗である水準を維持している百貨店はあるが、百貨店全体では82年当時の売り上げまで低下しているのである。
特定店舗に客は戻ってきたかもしれないが、百貨店というチャネルには客は戻っていない。


ユニクロの失敗として「UJ」の失敗が挙げられている。これはその通り。商品ラインが3ライン(1990円、2990円、3990円)あり、消費者が混乱したのも事実だ。実際には3つのラインとも値段差以上の区別はつけにくかったからだ。しかし、これもあるが、実際の「UJ」の失敗は、ジーンズがトレンドアイテムではないのに、拡充したことにある。結果論だが2010年春は「UJ」ではなく「UC(ユニクロチノパン)」を拡充すべきだった。

何よりもダイヤモンドの2つの記事が問題なのは
ユニクロをファストファッションと位置付けていることであり、これは完全に事実誤認である。
ファストファッションとは何か?を記事中に定義してあるので、引用すると
ファストファッション(流行のファッションを低価格で大量に短いサイクルで販売する業態)ブームである。
とある。

ユニクロは流行を意識していたが、短いサイクルでは販売しない。ユニクロの商品サイクルは恐ろしく長い。例えばヒートテックだが、店頭に並んだのは2010年7月半ばである。そして2011年1月末日現在まで販売が続いている。また2011年夏物の半袖ドライポロシャツがすでに2011年1月には店頭に並んでいる。半袖ドライポロシャツが実際に動き始めるのは5月の連休以降であるから、4ヶ月間は店頭で寝ていることになる。
また商品開発はもっと以前から行われており、企画は1年以上前からスタートする。これの一体どこが「短いサイクルで販売する業態」なのだろうか?


そしてさらに事実誤認を言えば、高付加価値を訴求する大手アパレルとあるのだが、大手アパレルの商品はダイヤモンドが期待するほど高品質ではない。ユニクロの方がずっと高品質な商品が少なくない。ユニクロの定番である無地のラムウールセーター(1990円)・ラムウールカーディガン(2990円)の品質を越えるラムウールセーターを製造している大手アパレルとやらが一体何社あるのだろうか。


ただ、ユニクロの急成長が止まったのも事実である。
それでもユニクロ単体で6000億円を越える売上高があり、営業利益が400億円ある。これほどの好成績のアパレルはない。
ユニクロの急成長が止まった要因は、国内市場の飽和点に達したことと、消費者がユニクロに対して「飽きた」ことにあると考えている。

もはや消費者はユニクロの商品をかなり持っており、同じブランドの商品をさらに所有したくない気持ちになっている。だから売り上げ水準が2008年当時に戻ったのだろう。けれども、今後ユニクロの売上高が半減するかというとそれはないだろう。肌着・靴下・無地定番商品(例えば先ほどのラムウールセーター)などへの一定需要は減らない。
むしろ「似たような物・同じような物なら安い方で買う」という消費者心理が働く。
ダイヤモンド推奨の大手アパレルとやらで良く分からない利益を積み上げられた高額な無地ラムウールセーターを買うより、ユニクロの1990円の方が品質が良くて見た目も変わらないなら、世の中の大半の人間がユニクロを買う。


経済誌・一般紙としては「ユニクロ失速」を書けばトピックスになるのだろうが、世界で通用する可能性がある国内企業の芽を摘むことがはたしてマスコミの仕事なのだろうか?と疑問を呈しておきたい

ナイロンの黒ダウンはもう売れない

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 先日、「グレンフェル」の赤いダッフルコートをいただいた。
イギリス製のもので、15年ほど前に買ったが、高かったので捨てるに忍びないということなので、試着してみると、アームホールはタイトな作りで古臭さがないので、そのまま持って帰ってきた次第だ。

太番手ウール100%のヘリンボーンツイードを起毛させてあるという珍しい生地が使用してある。それなりに気に入っているのだが、1つだけ難点がある。かなり重い。
実は、自宅には、心斎橋そごうの第1期閉店のときにセールで買ったヘリンボーンツイードのロングコートがある。これもかなり重い。

こうして見ると、軽くて暖かいダウンジャケットという防寒着はなかなかに貴重な物だと思う。


12月下旬からの寒波が東京を除く全地域で続いている。例年だと東京よりもずっと暖かい関西だが、ここ1カ月は東京よりも寒い。東京だけが例外的に暖かいともいえる。関西では2月も防寒着は手放せなくなりそうだ。12月上旬までは暖冬が続いており、ダウンジャケットの動きが鈍かった。しかし、年末からの寒波とバーゲンによる値下げでダウンジャケット類はこの1カ月でかなりの量を消化しているようだ。


もう冬物も終わりなのだが、この冬のダウンジャケットの傾向をまとめておきたい。

現時点で店頭に残っているダウンジャケットを見ると、黒やこげ茶、紺などベーシックな色のナイロン素材の物が多く残っているように見える。反対に黄色やオレンジ、赤などカラフルなダウンジャケットは予想以上に消化できているように見える。もちろん、カラフルな商品は生産量が少ないのだろうが、例年以上の消化率ではないだろうか。

P9291017

(ユニクロのレディースのカラフルなウルトラライトダウン)


一方、ビームスやユナイテッドアローズを代表とするセレクトショップ全般では、表面が通常のナイロンではなく、ウール生地の物や柄物がアウトドアカジュアルトレンドを牽引したといわれている。

ダウンジャケットブームは過去3年ほど続いており、黒、こげ茶、紺などのベーシックな色のナイロン素材の物は、だれもが1~2枚所有してしまっている。となると、カラフルな色物か柄物、ナイロンではない異素材物が欲しくなるのが消費者心理ではないだろうか。ウール生地のダウンジャケットはこの異素材物に含まれる。

男・ウールダウンベスト
(チャオパニックのメンズウールダウンベスト)

女・ウールダウンジャケット

(チャオパニックのレディースウールダウンジャケット)



では、2011年秋冬のダウンジャケット需要はどうなるのだろうか。
個人的には、先に述べたように、防寒物の中では、ダウンジャケットは圧倒的に軽くて保温力がある。機能性が高いため、一定需要は長期間継続すると思う。ある意味で定番として残る。
しかし、カジュアルアウターとして販売を考えた場合は、なにか違った要素を入れる必要があるのではないか。もう定番のナイロン素材の黒はそれほど売れない。
今期多く見られたようなカラフルな物、チェックなどの柄物、ウール生地の異素材物がその例である。
また「+J」でも投入された途端に完売した、テイラード型ダウンジャケットというのも一つの方向性だろう。
通常のブルゾンタイプではなく、テイラードジャケット型にするというようなデザイン変化物は売れ行きが2011秋冬も期待できるのではないか。発展系としてPコート型ダウンやチェスターコート型ダウン、ステンカラーコート型ダウンなどが出てくると面白いと思う。

どこかのメーカーさん、Pコートダウン、チェスターコートダウン、ステンカラーコートダウンをやってみませんか?







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